組合員が話しあい、選んだ本を届けて40周年 ―生活クラブの本のカタログ「本の花束」記念イベントを開催
「本選びの会」メンバーと、講演した枝元なほみさん(中央)、会場の参加者のみなさん
「この本を読んでもらいたい!」の思いが詰まったカタログ
生活クラブが発行するカタログ「本の花束」は、組合員で構成する「本選びの会」が選んだ良質な本を毎月掲載し、共同購入しています。1984年に始まった活動が40周年を迎えたことを記念し、2024年11月4日(月)に東京都新宿区でイベントを開催しました。
「本選びの会」のメンバーがそれぞれの活動を紹介し、料理研究家の枝元なほみさんが講演。会場とオンラインあわせて約260人が集まりました。
「本選びの会」のメンバーがそれぞれの活動を紹介し、料理研究家の枝元なほみさんが講演。会場とオンラインあわせて約260人が集まりました。
心に届く本との出会いをはぐくむ活動
開会にあたり、生活クラブ連合会の村上彰一会長があいさつしました。
生活クラブ連合会 村上 彰一会長
「『本の花束』の特長は、生活クラブの組合員が選書や書評を行なっていることです。このプロセスを経て心に届く本を紹介できるのだと思います。現在、電子出版の伸長で紙の出版物は減少が続いていますが、みなさんと本の素敵な出会いを願い、これからも本の花束を続けていきたいです。」
読書の面白さ、興奮をたくさんの人に伝えたい
「本選びの会」各部会のメンバーが登壇
「本の花束」をつくるのは、組合員から集まった「本選びの会」のメンバーです。30~70代まで幅広い世代が応募し、現在33人が在籍しています。「暮らし」「子ども」「現代社会」「よみもの」の4部会にわかれ、毎月部会を開いて、メンバー自身が気になり取り寄せたものや、出版社から提案があった本の中から評価をしあって選書。最終的に各部会のメンバーが集まる会議で、「本の花束」に掲載する本を決めています。
選書の基本となるのは、
・「食」を中心とした暮らしに役立つ本
・文化・教養を高める本
・知り、考え、活動につなげる本
です。
選んだ本は、それぞれ紹介文を書いて「本の花束」に載せます。
イベントでは各部会のメンバーが登壇し、部会の様子や本をどのように選んでいるかを話しました。
■暮らし部会(10人)
料理、手芸、園芸、住宅、健康、介護、子育て、芸術、暮らしに関するエッセイなどのジャンルを担当。
「本の花束」をつくるのは、組合員から集まった「本選びの会」のメンバーです。30~70代まで幅広い世代が応募し、現在33人が在籍しています。「暮らし」「子ども」「現代社会」「よみもの」の4部会にわかれ、毎月部会を開いて、メンバー自身が気になり取り寄せたものや、出版社から提案があった本の中から評価をしあって選書。最終的に各部会のメンバーが集まる会議で、「本の花束」に掲載する本を決めています。
選書の基本となるのは、
・「食」を中心とした暮らしに役立つ本
・文化・教養を高める本
・知り、考え、活動につなげる本
です。
選んだ本は、それぞれ紹介文を書いて「本の花束」に載せます。
イベントでは各部会のメンバーが登壇し、部会の様子や本をどのように選んでいるかを話しました。
■暮らし部会(10人)
料理、手芸、園芸、住宅、健康、介護、子育て、芸術、暮らしに関するエッセイなどのジャンルを担当。
「カタログの紹介文180文字の中に、みなさんの心に響くようなキャッチーな文章を考えるというのはとても頭をひねる作業です。 1文字ずつ指で数え、ギリギリまで推敲します。組合員のみなさんの豊かな時間づくりのお手伝いができるよう、これからもメンバー全員でていねいな選書を心がけていきます。」
■こども部会(10人)
絵本、児童書、ヤングアダルト文学、学習書、図鑑、子育てなどのジャンルを担当。
■こども部会(10人)
絵本、児童書、ヤングアダルト文学、学習書、図鑑、子育てなどのジャンルを担当。
「メンバーの多くは子どもに関わること、図書館や本に関連する仕事やボランティアをしています。部会は本の評価だけでなく、情報共有をする場にもなっています。」
■現代社会部会(8人)
環境、憲法、戦争・平和、世界情勢、教育、介護などのジャンルを担当。
■現代社会部会(8人)
環境、憲法、戦争・平和、世界情勢、教育、介護などのジャンルを担当。
「長く生きているとどうしても物の見方や考え方が偏り、本も好みのものや同じものを選びがちですが、部会では『こんな本や、こんな読み方もあるのか』と目から鱗が落ち、本を読みあう素晴らしさを実感できます。」
■よみもの部会(7人)
小説、エッセイ、詩歌、評論、芸術、ノンフィクション、グラフィックノベルなどのジャンルを担当。
■よみもの部会(7人)
小説、エッセイ、詩歌、評論、芸術、ノンフィクション、グラフィックノベルなどのジャンルを担当。
「文学の紹介を出発点としたよみもの部会は、社会の変化や読み手のニーズの複雑化に合わせ、多様なジャンルの本を取りあげています。読書の素晴らしさは、何より読んでいる時の面白さや興奮に尽きます。そんな本を届けられるよう、これからも活動していきます。」
活動紹介の終わりに、「本選びの会」の田久保薫子さんがメンバーを代表して思いを伝えました。
「全メンバーで毎月たくさんの本を読み、話しあいながら、一生懸命『本の花束』をつくっています。手づくりの紹介文を読んでもらい注文してもらえたら、それが私たちの活動の原動力になります。これからも組合員1人1人に向け、心を込めた選書をしていきます。」
活動紹介の終わりに、「本選びの会」の田久保薫子さんがメンバーを代表して思いを伝えました。
「全メンバーで毎月たくさんの本を読み、話しあいながら、一生懸命『本の花束』をつくっています。手づくりの紹介文を読んでもらい注文してもらえたら、それが私たちの活動の原動力になります。これからも組合員1人1人に向け、心を込めた選書をしていきます。」
人と人がつながることに力をもらえる
続いて、料理研究家で、NPO法人ビッグイシュー基金の共同代表も務める枝元なほみさんが、「本から学んだ、食べて生きていくこと」をテーマに講演。自身が読んできた本の思い出や、日々考えていることについてユーモアたっぷりに話しました。
本の思い出などを話した枝元なほみさん
●読書はごはんを食べることに似ている
「子どものころからずっと本が好きでした。最初に覚えているのは、親の本棚から見つけた山本周五郎の本。泣きながら読んでいた記憶があります。本を読むのは、ごはんを食べるのと似ている気がするんです。ごはんみたいに『ここがおいしい』『ここはゴリゴリしてる』って感触が感じられるのは、本だからこそ。
私は今、病気で入院したのを機に何度も挫折してきた『カラマーゾフの兄弟』に挑戦しています。やっぱり難しいんですけど、読みながらだんだん『この本好きだな』と思えるようになりました。」
●石牟礼道子さんの本にみる「暮らし」へのまなざし
「ある雑誌の依頼で、石牟礼(いしむれ)道子さんの『苦海浄土』について書かせてもらいました。水俣病になった方たちのことが書かれている本です。
その本にこんな話があります。漁師の夫婦が小舟で沖に出たものの、風がなく舟が動かない。そこで穏やかな海の上で焼酎を出し、奥さんが沖の水で米を研ぎ海水を足して炊く。夫は獲れたばかりの魚の中から1番いいものをその場で刺身にして食べる…という場面が好きなんです。
石牟礼さんは水俣病に憤り声を上げた方ですが、『その土地で暮らしてきた人たちがこの海をどんなに愛しているか』という、暮らしに寄り添った視点がすごくいい。文章の良さにあらためて気づかされます。本の良さは、こうした視点をぎゅっと小さなところに集めていけるところなのかもしれません。」
枝元さんの話に聞き入る参加者たち
●本を通して、人と人はつながることができる
「料理でもそうですけど、うまくできたら人に話したくなるもの。本だってもし意見は違ったとしても『これ、いいのよ』って誰かにおすすめしたり、一緒に読んでみたりしたいですよね。『本の花束』の活動はそんなふうに本を読んで選ぶなかで、人と人がつながっていく。そういう『誰かとつながりたい』という思いが大事だと思うんです。そのつながりに力をもらえるような暮らしをこれからも続けていきたいですね」
●本を通して、人と人はつながることができる
「料理でもそうですけど、うまくできたら人に話したくなるもの。本だってもし意見は違ったとしても『これ、いいのよ』って誰かにおすすめしたり、一緒に読んでみたりしたいですよね。『本の花束』の活動はそんなふうに本を読んで選ぶなかで、人と人がつながっていく。そういう『誰かとつながりたい』という思いが大事だと思うんです。そのつながりに力をもらえるような暮らしをこれからも続けていきたいですね」
時を超え、「本の花束」を引き継いでいきたい
さまざまな人が本への思いを語った記念イベント。生活クラブ連合消費委員会会長の豊崎千津美さんが次のように締めくくりました。
生活クラブ連合消費委員会会長 豊崎 千津美さん
「『本の花束』のお話を伺い、とても誇りに思いました。選書の過程を具体的に知り、あらためて本の魅力を思い出しました。私も娘たちが幼いころ、寝かしつけに『本の花束』で見つけた絵本を読んでいたものです。これからもこの活動を大事に引き継ぎたいです。
それにはやはり、『本の花束』で本を共同購入してもらうことが大切。ここにいるみなさんは本を大事に読んできた方たちだと思います。身近な誰かにぜひ今日のお話を伝えてもらいたいです。」
組合員から組合員へ、読みたくなる本を届けていく
これまでのカタログや選書した本が展示されました
このほか、会場には「本の花束」の前身「月刊DIY(ディー)」から今までのカタログ、「本選びの会」が選んだ本や生活クラブが出版した書籍が展示され、参加者は熱心に見入っていました。
このほか、会場には「本の花束」の前身「月刊DIY(ディー)」から今までのカタログ、「本選びの会」が選んだ本や生活クラブが出版した書籍が展示され、参加者は熱心に見入っていました。
どんな本があるのか、手に取って確かめる参加者たち
「本の花束」前身となる「月刊DIY」。まるで新聞のようなつくりです
また、枝元さんがさまざまな箱を切ってコラージュした手づくりのしおりの配布や、サイン入り本の販売、枝元さんの希望で震災のあった能登半島への支援募金なども行なわれました。
枝元さんがつくったしおり。枝元さんから参加者全員へのプレゼントで、それぞれが気に入ったものを選んで持ち帰りました
枝元さんのサイン本には、「本の花束」にちなんで花束のイラストが
募金の集まった箱を手にする、「本選びの会」のメンバーで当イベントの司会を務めた牧嶋久子さん(左)と枝元なほみさん
イベント終了後も本好き仲間が集まった会場はにぎわい、話に花が咲いていました
生活クラブでは今後も「本の花束」を通じて、組合員から組合員に読んでもらいたい、感想を伝えあいたくなるような本の共同購入を続けていきます。
【2024年12月18日掲載】