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琥珀色の美酒で至福のひと時【エチゴビール・行田宏文さん】

本場の文化に触れた初代

エチゴビール創業者の上原誠一郎さんの絵が、同社を象徴するポスターに

あまりお酒に詳しくない人も、「地ビール」という言葉は聞いたことがあるだろう。

1994年、細川内閣の規制緩和政策の一環として酒税法が改正され、ビールの最低製造数量の基準が大幅に引き下げられた。その結果、地域密着型の小規模醸造所が各地に続々と誕生する。町おこしの目玉にしようと、第三セクター方式で地ビールの醸造に乗り出す自治体も出てきたほどだ。

しかし、と「エチゴビール株式会社」社長の行田宏文さんは言う。

「現在、全国に180あまりある醸造所のうち、6割は日本酒の蔵元です。ご存じのように日本酒は寒い時期に仕込みます,それを担う杜氏(とうじ)や蔵人(くらうど)の多くは、冬季の出稼ぎとして雪の多い地方から各地の蔵元へ出向きました。しかし、今はそういった季節雇用は難しい。春・夏にビールをつくれば通年で雇えますし、何より同じアルコール醸造という点も大きかったのでしょうね」

実はエチゴビールの創業者も、地元新潟の老舗(しにせ)蔵元の長男だった。若い頃に演劇などの勉強でドイツに渡った彼は、本場のビール文化に触れて驚く。村単位に小さな醸造所があり、それぞれが個性豊かなビールをつくっていた。

「これを日本に持ち込みたい!」その思いが全国第1号地ビールの誕生につながる。1995年2月、醸造所とそれを提供する酒場が一体化した「ブルーパブ」を巻町(現・新潟市)にオープンさせ、日本の地ビールの先駆けとなった。

もっと多様な味がある

比重で麦汁の糖度を測る

日本で飲まれているビールのほとんどは、「ピルスナー」と呼ばれるタイプである。これは低温で比較的長い時間をかけるラガー(ドイツ語で貯蔵の意)という醸造方法でつくったビールで、特有の苦味と爽快感のあるのどごしが特徴。

元々はヨーロッパの限られた地域で少量生産されていたものだが、冷蔵技術の普及とともに世界中に広まった。

これに対し、常温で酵母を熟成させ、短時間で仕上げた「エール」タイプのビールは複雑な香りと深いコク、そしてフルーティーな味わいが特徴である。

「エール系はバリエーションが多く、個性も強い。私たちのような地ビールメーカーからすれば、ぜひこちらのタイプも味わってほしいと思うのですが、大手メーカーのピルスナータイプに慣らされた日本人の舌には、受け入れられにくい面がありました。もちろん、理由は嗜(し)好性だけでなく、なかには味や品質がよくなかった例もあると思います」(行田さん) 

ビール醸造は機械化された部分が多く、経験と勘がものをいう日本酒に比べればつくりやすい。とはいえ、高品質の製品を安定して生産するには、やはりきちんとした知識と厳密な管理が必要である。そのため、エチゴビールでは過去に3人の醸造職人を海外から招いて本場の技術を学び、取り入れてきた。

また、少量生産は割高になることから、地ビールは「高い」という評価も出てくる。その結果、ブームで後先考えずに始めたものや、品質が伴わなかったところは廃れていった。 

「第1号」であり、現在、販売量では全国の地ビールメーカーのトップクラスの同社だが、その歩みは順風満帆だったわけではない。スタートから5年、パブ併設型に加えて専門の工場を開設した2000年にはすでにブームが去っており、醸造量は減ってきていた。 

その再興を託されたのが、現社長の行田さんである。

本番はこれから

生活クラブ向けの12缶パックは機械化されておらす、手作業で箱詰めする

「それまでの仕事はビールとは無関係のミネラルウオーターや清涼飲料水の分野。しかし、私の父親は杜氏で、そこに何か不思議な縁を感じたこと。そして、新しいものにチャレンジするのが好きな性格だったため、引き受けようと思いました」 

右も左も分からないが、その分一生懸命努力した。主要な地ビールメーカーはもちろん、いわゆるビール大手にも出向いたり、講師を招いて勉強を重ねた。また、販路の拡大にも、若い社員の先頭に立って積極的に取り組む。  

「飲み慣れたビールとは違う、個性豊かな味を消費者に知ってもらわなければ始まりません。社員たちと一緒に、張り切っていろいろなイベントに出かけてはアピールしました」 

国内にとどまらず、7年ほど前にはアメリカ進出も果たす。日本食ブームの追い風もあり、ロサンゼルス、ニューヨーク、ハワイなどの主要都市で同社の製品が売られるようになり、現在では生産量の1割程度を輸出するまでになった。  

「消費者の声に応えたチャレンジもあります。その一つが国産麦芽100%のビール。普通は製品の種類に合わせて、味や色に特徴のある何種類かのモルト(麦芽)をブレンドします。しかし、国産麦芽の製品は、ウィスキーでいえばシングルモルト。ブレンドによる調整ができず、難しいのです」 

国産大麦は輸人物に比べて4倍も値段が高い上、日本の気候や栽培規模の関係から、その品質は、どちらかといえば不安定だといわれている。こういったハードルを承知しての挑戦であった。 

だからこそ、このビールを飲めば、同社の確かな技術が実感できる。ピルスナータイプのあっさりした味わいでありながら、そこにしっかりとした個性が光る逸品だ。

行田さんはこう締めくくる。 
「ブームは去りましたが、エール系をはじめとする個性豊かなビールを支持する層は確かにいます。少子高齢化が進めば、ビールも大量消費の時代は終わり、じっくり味わうものに変わっていくはず。そんな場面に合うのは、やはり地ビールだと思うのです」 

その思いを込めてつくられた同社の製品は、必ず日本に「新しいビール文化」を広める立役者となることだろう。

「飲むパン」と呼ばれる理由

行田 宏文<span>(こうだ ひろふみ)</span>さん <br /> <span>■提携先エチゴビール株式会社</span> <br /> <span>■提携品目 国産麦芽ビール、エチゴ黒ビール ほか</span>

いわゆるビールの本場といわれる国々では、これを「飲むパン」などと呼ぶことがある。中世ヨーロッパの修道院では、自給自足の食料として盛んにビールがつくられたが、その「始まり」として面白いエピソードが伝わる。

ドイツのバイエルン地方のある修道院。信仰を深めるために行う断食の期間に空腹にさいなまれた修道士たちは「食べるのはいけないというが、飲むのはいいだろう」と考え、試行錯誤の末にビールの醸造を成功させたという。真偽は定かでないが、この地方では今も、ビールはアルコール飲料というより飲むパン=栄養源として認識されているそうだ。


「パンもビールも酵母、英語で言うとイーストの発酵によってできるのですから、飲むパンという表現はまさにぴったりではないでしょうか」

日本有数の地ビールメーカー、エチゴビール社長の行田宏文さんは笑いながらこう言う。ビールの味の特徴は、原料モルトや苦味・風味づけのホップなど、さまざまな要素で決まるが、実は酵母の存在も大きいという。

原生微生物である酵母は世代交代が早く、突然変異もしやすい。運がよければ、風味のよいビールを醸す変異種になるが、当然その反対もある。

「焼いて食べてしまうパンとは違い、ビールの酵母は何度か繰り返して使います。実は、種酵母から立ち上げたばかりより、何回か使って経験を積んだ酵母のほうが発酵がうまくいくのです」(行田さん)  

ただし、世代交代を繰り返しビールの醸造に適さない変異種が増えてきたら替え時。再び種酵母から新しいものを培養している。

ビールの製法を大まかにいうと、麦芽(モルト)を粉砕し、水を加えて麦芽自体が持つ酵素の働きで糖化液にする→味と香りを出すホップを加えて煮沸し麦汁をつくる→発酵に適した温度まで下げたら酵母を加える→酵母が麦汁の糖分をアルコールと炭酸ガスに分解する。早いタイプで5日、長いものは10日程度で発酵完了→適温に管理した状態で貯蔵、熟成させる。

「その後、ろ過して完全に酵母を取り除く場合と、無ろ過のまま瓶や缶に詰める場合があります。後者は輸送の温度管理などが難しいのですが、生きた酵母の力でビールの鮮度とおいしさが保たれています。機会があればぜひ、無ろ過の味を試してください」(行田さん)

ちなみに生活クラブの普段の共同購入で扱うのはろ過タイプ。ギフトでは無ろ過タイプを味わうことができる。

『生活と自治』2010年8月号の記事を転載しました。

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