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農の未来をここから動かす【川俣 義昭さん、菅原 英児さん】

実って当然、ではない

川俣 義昭<span>(かわまた よしあき)</span>さん<br /><span>■提携先 庄円みどり農業協同組合 / 遊佐町共同開発米部会<br />
■提携品目 遊YOU米、ササニシキオリジン ほか<br /></span>

 「正直、今年の稲刈りは半分あきらめていたんです。まさか、ここまで盛り返してくれるとは……。とにかくもう、収穫できるだけでありがたい」
 山形県の北部、米どころで知られる庄内平野の最北端に位置する遊佐町。川俣義昭さん(53歳)は、色づき始めた田んぼを前に、うれしさと悔しさ、そして安どの交じった複雑な表情を見せる。
 川俣さんは現在、旧遊佐町農協(現JA庄内みどり)と生活クラブ生協が1988年に始めた共同事業「共同開発米部会」の会長を務めている。この事業では品種の選択、農法、価格、食べ方などについて両者が協議し、合意を積み重ねてきた。そして生まれたのが、生活クラブを代表する消費材のひとつ、「遊YOU(ゆうゆう)米」である。
 その川俣さんが、今年は大変な苦労を味わった。3つの成分からなる除草剤を1度だけ使う「減農薬栽培遊YOU米(3成分米)」の実験で、イネの生育不全に直面したのだ。
 「春は寒さで気をもみ、6月頃から天候が回復してホッとしたのもつかの間、今度は暑さで田んぼが発酵してしまった。5月中旬の田植えから7月上旬まで、ほとんどイネが生育しない状態でした。いったん水を抜いて田んぼを乾かしたところ、ようやく育ち始めてくれました」
 田んぼが発酵し、ガスがコポコポと噴出する様子から「わき」と呼ばれるこの現象は、さまざまな要素がからみあって起きるため、原因の特定は難しい。しかし、有機質の肥料を使うと発生しやすくなるといわれている。川俣さんは、肥料としてすきこんだ米ぬかが、今回の主原因だとにらんでいる。
 「でも、初めて3成分米に挑戦した3年前も米ぬかを入れていて、その時は大丈夫だったから分かりません。いずれにせよ、秋に米が収穫できるのは、当たり前のことではないんだと痛感しました」


あえて苦労に飛び込む

菅原 英児<span>(すがわら えいじ)</span>さん

  「無農薬や減農薬を続けていると少しずつ虫が増え、気づかないうちに田んぼが変化します。そしてある日突然、目に見える形になって出てくるんですよ」
 こう話すのは、部会メンバーで、遊佐では無農薬や減農薬の米づくりの第一人者といわれる菅原英児さん(52歳)。8年前に始めた「無農薬栽培遊YOU米(無農薬米)」は現在、所有する田んぼの3分の1に当たる約2.9ヘクタールまでになっている。だが、ここに至る道は平たんではなかった。
 初年度は従来の間隔で苗を植えたところイモチ病が発生し、「無農薬米は間をあけて植えなければダメ」と学んだ。害虫にも泣かされた。5年目まではイネミズゾウムシ、今年はツトムシだった。特にツトムシは、米が実るために最も重要な時期の葉を食べてしまう厄介者だと思い知らされた。
 また、無農薬栽培では除草も人力・手作業での闘いになる。鍵は草をできるだけ生えさせない〈抑草〉。菅原さんは米ぬかを肥料というよりも、草を抑える目的で使っている。これを田んぼの表層にまけば、雑草が根づきにくくなると経験から感じているからだ。さらに今年は水田に水を多く入れる〈深水(ふかみず)田んぼ〉での抑草にも挑戦した。
 「そのためにあぜの防水シートをはり直す工事が必要で、田んぼを掘り返したら、驚くほど雑草のコナギが生えちゃって。土中深くに眠っていた種が芽を出したんでしょうね。ツトムシの大発生も、おそらく深水が原因だと思います。一つひとつが、勉強です」 現在、遊佐で3成分米や無農薬米に挑戦しているのは、50代以下の世代。菅原さんは笑って言う。
 「現実を知らないからやっちゃうんだろうね。除草剤も農薬もなくて苦労した父たちの世代からは、『おれたちがやっと解放された苦労に、わざわざ飛び込むなんて』と、あきれられているかな」


目指すのは自立した農業

最初の生育が遅れたために、茎の数か少ない川俣さんの3成分米。「でも、米は茎の数が少なければ穂を長く伸ばして<br />少しでも多くの実をつけようとする。<br />この力強さに勇気づけられます」

  実は今年、遊佐では、イネを枯らすイモチ病に苦しめられた生産者が多かった。特に風のよどみやすい場所は被害が大きく、病気がほかの田んぼに広がるのを防ぐため、農薬を使わざるを得なかったケースも。川俣さんは振り返る。
 「2回ほど集まって話し合いました。もし私たちが遊YOU米じゃなく、慣行(一般)栽培の農家だったら、それほど迷わずに農薬を使ったと思うんです。でも、このお米を食べると約束してくれた人たちがいて、その人たちに対して約束した栽培方法ですから重みが違う。つらい決断でした」
 遊YOU米の生産者は現在約500人、総栽培面積は1250ヘクタールに上る。うち約1割を占める無農薬米と3成分米に注目が集まりがちだが、川俣さんは「実は、9割の“普通の”遊YOU米が大事」と力をこめる。
 「遊YOU米はすべて、この地域の慣行栽培で基準とされる農薬の半分以下で栽培されています。経験も、田んぼの条件も異なる農家が、この減農薬に一斉に踏み出すには大変な勇気がいりました。でも今、全員で行うことの力の大きさを実感しています」
 そしてこの9割の遊YOU米が、「次なる一歩」を踏み出したら、きっと日本の農業全体に影響を与えるほどの力があると、川俣さんも菅原さんも考えている。
 「生産資材まで含めて海外に依存しない農業を目指すなら、石油がない日本では、循環型農業しか選択肢がないでしょう。もちろん、『農薬の少ないお米がほしい』という声に応えたいという気持ちもあるし、環境への負荷が少ないという点も重要。でも、無農薬や有機栽培は目的ではなく、本当に自立した農業を実現するための、一番現実的な方法だと思うんです。だからこそ私は、無農薬や減農薬にこだわりたい」(菅原さん)
 これにうなずいていた川俣さんが、晴れやかな顔で言う。
 「実験といっても生活がかかっていますから、失敗は痛い、でも、これは私だけの実験じゃない。500人の生産者、そして食べてくれるおおぜいの人たち、みんなの実験です。だからこそ踏ん張ろうと思える。え、来年? もちろん、新たな気持ちで挑戦しますよ」

これで解消! 米栽培に関する素朴な疑問

青紫色の花はかれんだが、農家を苦しめる雑草の代表格「コナギ」

★なんのために農薬を使うの?

農薬の主な使用目的はイネの病気対策、害虫対策、そして除草(抑草)です。
 「消毒」「除草剤」などと目的別の呼び方をする場合もありますが、これらはすべて農薬の仲間です。

★「成分回数」ってなんですか?

 農薬の使用量のことです。一般的に農薬の使用量は、使った分量(ミリリットルなど)ではカウントせず、いくつの成分が入った農薬を、何回使ったかという「成分回数」で表します。例えば、2つの有効成分が入った農薬を1回使うと「2成分回数」、3つの有効成分が入ったものを2回散布したら「6成分回数」となります。 したがって、1年間に散布した回数は5回でも、仮にそのすべてに3つの有効成分が入っている場合は、「15成分回数」とカウントされます。

★農薬の使用基準は誰が決めるの?

基準は全国一律ではありません。地域によって、害虫や病気の発生度合いが異なるためです。基本的には県単位で使用基準(慣行基準)が決められています。

遊佐町がある山形県全体の慣行基準は20成分回数、庄内地域は16成分回数となっています。

★化学肥料と有機肥料の違いは?

化学肥料とは、原則として化学的工程で無機質原料からつくられた肥料を指します。なお、尿素など有機化合物ですが、化学的工程でつくられるために化学肥料に分類されます。化学肥料はそのまま植物が吸収できるため、即効性が高いのが特徴です。
 一方、有機肥料とは、動物・植物性の有機物のうち、窒素・リン・カリウムという肥料成分を含むものを原料としたものを指します。有機肥料は土壌に入れられたあと、いったん微生物によって分解されてから植物に吸収されるため、効果はゆっくりと出ます。

★特別栽培米ってなんですか?

その米が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている、農薬と化学肥料の使用状況)に比べ、農薬も化学肥料も半分以下に減らしたものをいいます。
遊YOU米はすべてこれにあたります。


『生活と自治』2010年11月号の記事を転載しました。

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