パイオニア社と「NON-GM種子」の継続開発を確認!!
生活クラブは1997年に「GM作物、食品は基本的に扱わない」との態度を決めて以来、飼料をふくめNON-GM(遺伝子組み換えでない)トウモロコシを指定してアメリカから輸入してきました。しかし、今年6月、輸入で提携するJA全農を通じNON-GMトウモロコシの種子を開発するパイオニア社から、「NON-GMの種子の供給を希望するのであれば、相当期間の需要を確認したい」という打診がありました。そして、今後のNON-GM種子の供給について協議するため、生活クラブの組合員や畜産物で提携する生産者は10月にイリノイ州シャンペーンにあるパイオニア社などを訪れました。(2011年1月12日掲載)
背景に長年の視察、交流の積み重ねが
私たちは毎日の食事のなかで牛肉や豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳など多くの畜産物を食べています。これらの食品の基となる家畜は飼料としてトウモロコシを食べており、その飼料に占める割合は5割前後になっています。つまり、私たちは「畜産品を通してトウモロコシを食べている」と言えるでしょう。
この飼料用トウモロコシ、生産はすべてを海外に頼らなくてはならないのが現状で、日本はそのほとんどをアメリカからの輸入で賄っています。ところが近年のアメリカでは、GM(遺伝子組み換え)作物の栽培が急速に進み、トウモロコシは作付面積の86%がGMになっています。
パイオニア社との協議ではアメリカ訪問団の団長で、生活クラブ連合消費委員長の一政伸子さんが、「生活クラブ連合理事会は、NON-GM飼料(トウモロコシ)を今後5年間継続することを判断をしました」と報告するとともに、「NON-GM飼料を使用した畜産物の需要の拡大を進める活動を継続していく」と表明。そして、「NON-GMの種子を継続して開発すること」を要請しました。
このような生活クラブの要望に対し、パイオニア社からは次のような回答がありました。
「5年間継続してNON-GMトウモロコシの需要があることを表明してくれた生活クラブに感謝します。種子の開発には約10年かかるというリスクがあります。それが今回の表明によって、NON-GM種子の需要予測を立てることが可能になりました。パイオニア社には長い歴史があり、高品質のNON-GM種子をつくっているという自負があります。日本の利用者からも品質について要望があれば、遠慮なく言っていただきたいと思います」
NON-GMトウモロコシを取組み続けるためには種子や生産者の確保、GMトウモロコシと分別して輸送する仕組みが必要です。今回、種子会社から今後もNON-GMを継続して開発するとの回答があったことについて、一政さんは「よい返事を日本に持ち帰れることができてうれしく思います。この返答の背景には、生活クラブがGM作物についての基本的態度を表明してからの14年間、組合員が何度もアメリカを視察し交流してきた積み重ねがあったからだと思います。さらに現地で生産者からNON-GMトウモロコシを集荷するCGB社や全農グレイン(株)など、全農グループの実績が評価されたからでしょう」と語ります。
生産者との交流や「IPハンドリング」の点検も
訪問団はパイオニア社と協議した翌日には、イリノイ州ネープルズでNON-GMトウモロコシを生産する2軒の農家と交流しました。いずれもCGB社に出荷している農家で、CGB社は約2000軒の農家からNON-GMトウモロコシを集荷しています。
そのうちのひとりのジェフ・スペンサーさんは、GMトウモロコシの栽培が全米で9割弱に達しようとするなかでNON-GMをつくる理由をこう話します。
「NON-GMを5年続けて栽培しています。以前はGMトウモロコシをつくったこともありますが、単収がほとんど変わりませんでした。それならばGMを開発する種子会社にわざわざ高い種子代を払う必要はないと思ったのです」
また、ダン・ムーアさんは連合消費委員会・副委員長の植田泉さんの「来年もNON-GMトウモロコシをつくり続けてください」との要望に、「はい」と応えました。
植田さんは「ダンさんにとって自分がつくったトウモロコシを飼料として利用する畜産生産者や、その肉を消費する人たちに会う機会はほとんどないと思います。今回、実際に利用する私たちと交流した意味を受け止めて、今後もNON-GM作物をつくり続けてくれることを期待します。今後もたくさんの生産者に組合員が会って交流し、私たちの意見を伝えていくことが重要だと思います」と話します。
訪問団はその後、ルイジアナ州ニューオリンズに移動し、日本へNON-GMトウモロコシを積み出す全農グレインの穀物エレベーターを視察。GM作物と分別する「IPハンドリング」の仕組みを点検しました。
NON-GMトウモロコシを扱う時は1550tもの穀物を保管できる「ビン」の中に人が入って清掃することや、連邦穀物検査局員がエレベーター施設に常駐して検査を行ってから輸出されていることなどを確認しました。
「種子会社や栽培する農家まで遡って会えること、さらにミシシッピ川の上流での集荷からニューオリンズで船積みするまでNON-GMトウモロコシが分別管理される仕組みが構築されていることに、生活クラブが1997年から取組んできた歴史を感じるとともに、誇らしい気持ちになりました。日本でいっしょに活動する組合員に、見聞したことを伝えていきたいと思います」と、連合消費委員の中村みゆきさんは話します。
生活クラブ連合会の福岡良行専務理事は9日間に及んだアメリカNON-GMトウモロコシ・ミッションについて、「パイオニア社から今後もNON-GMトウモロコシの種子を開発し続けるとの回答を得たのは大きな収穫でした。これは何年にもわたって組合員が交流するとともに、日本国内で畜産関連の消費材の利用促進を続けてきた結果で、まさに組合員活動の成果といえるでしょう」と振り返ります。
生活クラブがパイオニア社に表明したように、今後もNON-GM飼料を使用した畜産物の利用の拡大を進めるとともに、NON-GMトウモロコシを利用する国内の需要者や韓国の生協などと全農グループのIPハンドリングの仕組みに結集することが重要です。