産地と生活クラブの活動と課題を共有
生活クラブは大凶作に襲われた1993年の「米パニック」を受け、持続可能な米づくりとリスク分散を視野に入れ、米の産地形成(6産地=JA庄内みどり、JA上伊那、JAなすの、JAいわて南、JAたきかわ、JAちばみどり)を進めてきました。この6産地と組合員を含めた生活クラブ関係者が一堂に会し、米や主要穀物の自給力向上を図る―などの取組み方針の進捗状況や、各産地と生活クラブの活動内容と課題を共有する場が「生活クラブ連合米6産地協議会」です。今年は8月27日から28日にかけて栃木県で開かれました。(2010年10月5日掲載)
今年の作況は100~104に
「こういう取引は信頼関係が大事です。しかし、信用は落ちる時は一瞬ですが、作るには長い年月がかかります。そのためには安全・安心なものをつくり、皆様に喜んでもらうことが大事だと思います。協議会では産地への忌憚のないご意見を聞かせていただければありがたいと思っています」。
JAなすの組合長・川島寛さんの挨拶で始まった協議会の議題は、(1)「2010年産米の生育状況」(2)「生活クラブ連合米産地に期待すること」(3)「持続可能な生産基盤を目指して」(4)「登録という利用結集活動」の四つでした。
2010年産米の生育状況については、各産地とも田植え後の成育は遅れ気味だったものの、以降の高温で成育が進み作況指数も100~104程度になると見込まれています。ただ、産地によってはイモチ病が発生、生活クラブと協議したうえで追加防除を実施した産地(JA庄内みどり、JAたきかわ)がありました。
「生活クラブ連合米産地に期待すること」について報告したのは、生活クラブ連合会の舘勝敏開発部長。現在、生活クラブ連合会では第5次生活クラブ米政策(2011~2015年)検討プロジェクトが進んでいますが、そのなかで検討されている“連合米産地に期待する”内容を紹介し、産地の理解を求めました。
舘部長はまず、「日本の低い自給率や農家の高齢化や後継者不足といった国内の食料問題を説明し、日本の食料自給率を高めることが大きな課題になっていますが、生活クラブはこれまで以上に利用結集活動を推進し、提携産地との連携をより強めることで問題解決を進めていく、これが大原則です。お米の組合員の利用率は37%ですが、プロジェクトではこれを50%にするための論議を進めています」と報告しました。
そのうえで、「連合米産地に期待すること」として、(1)自給率の向上をめざす、(2)持続可能な生産基盤の確立をめざす、(3)環境保全型農業に取組む、(4)「安全・健康・環境」生活クラブ原則を、ともに運動課題として取組む―を挙げました。
このなかで舘部長が強調したのは、自給率の向上と持続可能な生産基盤の確立についてでした。自給率の向上については、主食用米の他、青果物、飼料用米、加工用米、飼料用作物、加工原料作物などの生産を通じて耕地のフル活用や耕畜連携、地域内循環構造の形成をめざすことが期待されています。
「庄内は生活クラブの食料基地として位置づけられ、米だけではなく青果や、大豆、ナタネの栽培などで、また、長野や栃木でも米産地を中心にした産地形成が進んできており、千葉では米生産者による加工用トマトの栽培が今年から始まりました。こうした取組みは自給率の向上だけではなく、食料生産基盤の強化や後継者が生まれる契機にもなると思います」(舘部長)
米の登録活動の報告も
舘部長への質疑応答の後、JA上伊那米穀課課長の小林久人さんが、持続可能な生産構造への取組みとして、地域で進んでいる集落営農の取組みを報告。これに続いて生活クラブから、お米の登録活動について、連合消費委員の木村庸子さん(千葉)と小林テル子さん(長野)、それに一政伸子さん(神奈川)が報告しました。
最初に報告にたった木村さんは、各単協の活動の結果、連合会全体では米の登録率は61.1%(2009年度)だったことを示しつつ、新たに生活クラブのお米を食べる組合員を獲得することと、「登録では新規加入者の登録推進が重要課題」と指摘しました。そのうえで、お米を登録して食べることの意義を―登録により安定的な生産と消費の仕組みができ、組合員と生産者お互いの信頼関係も深まる、国内自給力向上、主食である米の生産の持続性、環境を守る運動を推進する力になる―などと説明し、こう強調しました。
「登録活動を通して生産構造や価格、産地の課題をわかって食べる人をつくっていくことが登録運動です。それを通して生活クラブの共同購入運動全体の理解や共感につなげていくことができる意義ある活動だと思います」
さらに、千葉単協における自給力向上を目指す「食の未来活動」や「食未来集会」などにおける登録活動の内容を具体的に紹介しつつ、「ごはんを食べることは自給力向上に直結し、私たちの持続可能な食の未来にもつながる。最重点課題として登録活動を展開しています」と話しました。
一政さんは、神奈川では登録活動を6~7月にかけて集中的に展開しており、出資金在高確認集会の時に米登録集会も開催し、ここを中心にして組合員への直接的な働きかけを強めていると説明しました。そこでの語り部をおおぜいにするために、組合員リーダー視察交流(遊佐)や遊佐消費地交流会(25会場)、上伊那生産者交流会(8会場)を実施、「在高確認集会の参加が高いところは目標達成、もしくは近い実績をつくっています」とも語りました。
長野の小林さんは、長野単協の強みである「班」を最大限活用し、班員全員分の登録用紙を班長に配布、全員分を班長が回収し、提出班率100%を目指している活動内容などを紹介し、それに添付した生産者の「お米登録活動の成功を願って」と題するメッセージを、こう読み上げました。
〈今年の大きな活動目標に、日本人の主食である「お米を登録して食べる」運動を展開し、食生活環境を見直し、少しでも生産者への支援につながれば…とのお話を聞き、この取り組みは生産者にとって厳しい農業情勢の中で生産活動の意欲をかきたて、大きな希望を与えてくれました。同時に、みなさん方によろこんでいただける安全、安心、良食味の米づくりに責任の重さを痛感しております。みなさん方一人一人の取組みの成果を期待しております。お互いにそれぞれの目標目指して頑張りましょう〉