「庄内産タケノコ」を使用した「春巻」が再登場!!
08年1月に発生した中国産冷凍餃子事件を契機に、国産タケノコの原料確保がむずかしくなり、共同購入が休止になった生活クラブの「春巻」と「おべんとう春巻」。その後、「庄内産のタケノコを利用して作ろう」との生活クラブの呼びかけに応じたJA庄内たがわ、JA庄内みどりの生産者のタケノコ出荷が、5月上旬から6月上旬まで行われました。そして、11月(46週)からは、生産者まで明らかなタケノコを使用した「春巻」が再登場します。(2010年7月12日掲載)
国産原料の確保がむずかしく、休止に
「あれは一昨年のことです。県内の生活クラブ提携生産者の集いである山形親生会の総会で、私ども羽黒のうきょう食品加工(有)はタケノコをボイルする実験事業を始めたことを報告しました。すると来賓で来ていた生活クラブ連合会の福岡良行専務や開発部の担当者が、私のところに飛ぶようにやってきたのです。『生活クラブの加工食品の原料として、国産タケノコを供給できないか』との相談でした。本当に驚きました。なぜなら庄内地方の農家ではタケノコの畑を持っている人が多いのですが、それは自家消費用で販売できるとは誰も考えていなかったものですから」
羽黒のうきょう食品加工・生産販売部長の丸山悟さんは、2年前の出来事をこう振り返ります。
生活クラブで共同購入する食品は、加工食品をふくめ国産を基本としています。ところが、08年1月に発生した中国産冷凍餃子事件を契機に、食品業界では加工用の国産原料の引き合いが強くなりました。タケノコも例外ではなく、原料確保のむずかしさから生活クラブでは「春巻」、「おべんとう春巻」の共同購入を休止せざるを得なくなりました。
前述のように一昨年に羽黒のうきょう食品加工の取組みを知った生活クラブは、同社に対して春巻など加工食品の提携生産者へ原料タケノコを供給することを要望。羽黒のうきょう食品加工はそれに応えるために約1500万円の投資を行ってタケノコをボイルする施設を整備しました。また、同社の株主であるJA庄内たがわも全面的に協力することを決定し、管内の農家からタケノコを集荷する体制を整えました。
生活クラブの要望に対し、すみやかに対応した背景を、前出の丸山さんは次のように話します。
「販路が確かでなければなかなか踏み切れませんが、生活クラブの提携生産者が購入してくれるという当てがあるからこそ体制を整備することができました。いずれにせよ生活クラブとの信頼関係があったからこそといえるでしょう」
JA庄内たがわ、JA庄内みどりが出荷
羽黒のうきょう食品加工にタケノコを出荷するのはJA庄内たがわだけではありません。 生活クラブと約40年の提携の歴史があるJA庄内みどりも、農協の組合員全員にチラシを配布し、タケノコの収穫を呼びかけました。
「2月下旬までに100人近い農家からタケノコを出荷したいとの意思表示がありました。また、春に農協職員が各地に出向いて行う農家との座談会では、今年限りの取組みではなく毎年継続してほしいとの意見が出るなど、農家も積極的な姿勢を見せてくれました」
JA庄内みどり園芸課・課長の佐藤弘毅さんはこのように語り、庄内地方のタケノコ事情を次のように説明します。
「庄内地方ではタケノコと厚揚げ、しいたけが入った酒粕仕立ての『孟宗汁』という郷土料理を春に食べる習慣があります。しかし、山形で収穫できるのは5月頃から。それまで待ち切れない住民が多く、早い時期に獲れる九州産などを求めてしまうのです。また、庄内産が収穫できる頃にはすでにタケノコは全国的に出回っているので、せっかく掘っても生食用としてはあまり市場価値がないというのが実情です。したがって、農家の間ではタケノコが換金作物であるという認識が生まれてこなかったのです」
今回の加工用原料としてのタケノコの収穫は5月上旬から始め、冷蔵車で温度管理をして羽黒のうきょう食品加工に運ばれました。
一方、タケノコを使い春巻を生産する(株)マルハニチロ食品の小曽川正さんは、次のように期待を寄せます。 「国産タケノコでも生産者まで明らかな原料は、たいへん貴重なものだと思います。そのタケノコの食感を生かし、おいしい消費材をつくるのが私たちの役目です。組合員のみなさんには、ぜひ楽しみに待っていてくださいと伝えたいと思います」
素性が明らかな国産タケノコを原料にした春巻の共同購入が再開するのは、11月(46週)からです。