生活クラブ組合員が雄武の「植樹」に参加!!
北海道のオホーツク海沿岸のほぼ中央に位置する雄武(おうむ)町。豊富な水産物とともに酪農、畜産でも知られている地域で、生活クラブのホタテやサケ、牛肉の産地でもあります。生活クラブはこの地域と個々の生産者との交流のみならず、地域ぐるみの産地提携を目指していくために昨年4月、「雄武と生活クラブの提携懇談会」を設けました。その活動の一環として5月31日から6月2日にかけて、生活クラブの組合員ら7人が雄武町を訪れ、雄武漁協主催の植樹活動への参加などを通して生産者との交流を深めました。(2010年6月16日掲載)
顔見知りが増えてきました
「雄武と生活クラブの提携懇談会」は2002年から始まった水産交流会が「地域」との交流に広がったもの。昨年の9月に続いて今年2月には東京で「浜のおかあさん料理講習会」と銘打った「消費地交流会」も開かれ、生活クラブ組合員と雄武町生産者の交流会は3回目になります。
今回の交流会は宮崎県で発生した口蹄疫の影響で、生活クラブに供給されている牛肉の一種、「アンガス」を雄武町で肥育している(有)おうむアグリファームの視察はかないませんでした。しかし、提携懇談会には同ファームやおうむ農協、雄武漁協、北海道漁連、北海道チクレン農協連、そして行政も参加し、生活クラブの連合消費委員会副委員長の植田泉さんは懇親会の場で、「第1回の懇談会や今年2月の料理講習会を通して顔見知りが増えてきました。植樹などへの参加を含めてこれからも交流の機会を増やしていけば、次の世代にもつながっていく」と挨拶しました。
これを受けて、おうむ農協組合長の遠藤悦朗さんは、「私たちはいつも消費者のことを思いながら生産に励んでいます。生産と消費者の距離は交流会を経ることで縮まってきたと思います。これを機会にさらに縮まることを期待しています」と応えました。
1996年から「植樹運動」に取組む
今回の懇談会では畜産と漁業の学習会の他、ホタテ漁の見学やその加工体験がスケジュールに組み込まれていましたが、特筆すべきは雄武漁協が1996年から取組んでいる「植樹」への参加でした。雄武漁協では環境整備として植樹運動に取組み、これまでにシラカバやミズナラなどの苗木を、漁協が買い上げた休耕地などに植えてきました。植樹する地域は、オホーツク海に流れ込む幌内川の流域。
「幌内川の流域の環境を整えることで川は豊かになり、それがオホーツクに流れていくことで魚介類に恵みを与えている。われわれはその恩恵にあずかっているわけですが、その環境があるからこそ安全、安心な食物を届けることもできるのです」と、雄武漁協組合長の片川隆一さんはその意義を語ります。
今回、植樹した土地は酪農家が離農したところで、河川からは直線距離で200mほど離れた地域。漁協の婦人部や青年部、地元の小学生、生活クラブの組合員ら約90人が参加してシラカバ、アカエゾマツの苗木を合計1250本、1時間弱で植えました。
雄武漁協専務理事の稲船敏一さんによれば、北海道における植樹運動は、襟裳岬の砂漠化した地域の再生に地元漁協の婦人部が取組んだことから始まったといいます。それが1987年に北海道漁協婦人部の「おさかな殖やす植樹活動」へとつながり、雄武でも漁協婦人部が立ち上げ、漁協はそれを支援するというスタイルを確立して毎年行われています。96年からの14年間で植樹された苗木は約1万1000本。面積は5.9haに及び、参加者は漁協関係者から一般へと広がり、延べで約1100人にのぼっています。
生活クラブ組合員の手による植樹は今回が初めて。集まった参加者を前に、生活クラブ連合会の連合消費委員会委員長の一政伸子さんは、生活クラブと雄武の関係を紹介しながら、「植樹に参加するということは、私たちの雄武への思いがずっとここにあり続けるということ。それを考えてドキドキしています。32万人の組合員の思いがここに根付くことを願って頑張りたい」とメッセージを発しました。
ちなみに、植樹運動を続けている雄武漁協やおうむ農協などを構成員とする「雄武町北の魚つきの森協議会」は2002年、北海道が地域住民による自発的な森林づくりの活動の推進を図るために設けた「北の魚つきの森」第一号に認定されています。
組合員の平均年齢が若い雄武漁協
今回の交流は植樹がメインでしたが、初日と最終日には雄武漁協やおうむ農協、北海道チクレン農協連、(有)おうむアグリファームの順に担当者がそれぞれ現状や課題について報告しました。
雄武漁協の報告で際立ったのは、「北海道全体の漁協組合員の平均年齢は60歳以上が47%を占めているなかで雄武は52.5歳と若い。しかも、後継者は48人います。それはつくり育てる事業、つまり資源管理型漁業を積極的に展開してきた結果」(同漁協参事兼総務部長の三河俊克さん)ということでした。植樹活動もその一環で、その理由を三河さんは、「北海道は豊かな海があり資源に恵まれている」としながらも、「雄武ではサケのふ化事業に取組んでおり、そのためにも清冽で栄養豊富な水が海に供給される必要がある」と説明しました。このほか、生活クラブが取組んでいるホタテ、毛がに、サケなどの漁獲動向や資源管理の方法について詳細な報告がありました。
おうむ農協参事の吉田雄二さんは、生乳の生産量は増えているものの地域の酪農家数は過去30年間で半減したことに触れつつ、「農協の組合員数は右肩下がりで減っていて後継者難と花嫁不足」という課題を抱えている現状を紹介しました。ただ、日本の食料自給率が41%と低いなかで、北海道の都道府県別食料自給率は200%弱であることから、「その使命を達成しなければならないと考えています」と強調しました。
2001年に国内で発生したBSE問題でにわかに注目されるようになったトレーサビリティですが、それ以前からこの仕組みで牛肉を流通させていたのが、北海道チクレン農協連でした。同農協連の業務部畜産販売課課長の竹田伸さんは報告でこの点を強調しつつ、「チクレンが扱う牛肉の36.7%を生活クラブに食べていただいています。肉牛を肥育している生産者も、それを加工する工場の従業員も生活クラブの消費材への思いが強いので、今後の利用につなげていていただければ」と結びました。
(有)おうむアグリファームの取締役副場長の佐藤正明さんは、スライドを使ってアンガスの肥育の様子を説明するとともに、安全、安心、そして健康をモットーに育てていることを説明し、従業員に常日頃伝えている言葉をこう紹介しました。
「私たちは牛にエサを与えているが、単に飼って育てているだけではない。牛の命をいただきそれで給料をもらっていることになる」
3回目となった交流会ですが、今後の展開について生活クラブ連合会開発部の志村保幸水産課長はこう話しています。「交流会を連合消費委員会の定例の活動として位置づけ、顔の見える関係を強めつつ、これまで以上に互いの理解を深めることで、持続性と広がりを併せ持った交流をできないか検討してみたい」