提携生産者同士の「工場相互点検活動」が広がっています
生活クラブの提携生産者の組織である「生活クラブ親生会」は、消費材事故の減少を目指して、4年前から生産者同士で工場を相互点検する活動を進めています。これまで10の工場で実施されていますが、3月17日には、北海道でもこの活動を進めるために、説明会が開かれました。(2010年4月19日掲載)
「生活クラブ親生会」自主管理部会の活動として
生活クラブでは共同購入する品々を商品ではなく、「消費材」と呼んでいます。この言葉には、組合員が望むものを生産者と一緒になってつくり上げたという意味が込められています。生産者は生活クラブが共同購入を進めるなかで、極めて重要な位置を占めているのです。そして、「消費材」を製造する責任を持つ生産者たちは、自ら「生活クラブ親生会」という組織をつくり、生産者同士で交流や広報など、さまざまな取組みを行っています。この親生会の活動も生活クラブ運動を進める大きな力になっており、とりわけ自主管理部会は特徴のある活動を進めています。
3月17日、親生会自主管理部会は生活クラブ自主管理委員会と連携して、「衛生管理マニュアル作成指針」に基づく相互点検活動の説明会を札幌市内で開きました。この会に参加したのは地域の親生会である「北海道親生会」に加盟する生産者。生活クラブ親生会・自主管理部会の副部会長で、(株)マルモ青木味噌醤油醸造・社長の青木幸彦さんは相互点検活動の主旨を次のように説明します。
「相互点検活動とは、生産に直接携わる者同士が、製造工場を点検し情報交換することで、消費材の事故を少しでも減らそうという取組みです」
万が一、消費材で事故が起こると、その原因の究明や処理、対策などで、生産者にとっては大きな課題や負担がかかります。そればかりか、たとえ1個の事故品でも、その消費材が供給された組合員にとっては生産者への信頼をなくし、すべての消費材への不信感を招くことにつながりかねません。
青木さんは「消費材の購入は組合員が市販品の問題点などに気がつき、意識を変えるきっかけにもなる。その消費材で事故が起きれば、生活クラブ全体に影響を与える恐れがあることを認識してほしい」と、説明会に参加した生産者に呼びかけました。
会社全体の意識向上を図れる
また、生活クラブ自主管理委員会の事務局で、生活クラブ連合会品質管理部の槌田博副部長は、このように相互点検活動の意義を話します。
「衛生管理における第三者認証の仕組みは一般的にもありますが、工場で問題の箇所があっても指摘をされるだけで、改善方法を教えてくれることはほとんどありません。しかし、親生会は信頼関係を深めてきた生産者の集まりです。同じ悩みを抱えるもの同士として相談し、知恵を出し合うことができるのです」
相互点検活動が始まったのは4年前からで、これまでに約10の生産者の工場で実施されました。この取組みでは1回目の点検から1、2年の間隔をあけてもう一度点検を行います。それは指摘された事項を、受け入れた生産者が、どのように改善、工夫したかを確認するためです。
2007年と09年に相互点検活動を自社工場で実施した、桜えびさつま揚げなど魚肉ねり製品などの消費材を供給するこめや食品(株)の川崎光一朗さんはこう話します。
「1回目は、点検後の意見交換会の席上で歯に衣着せぬ指摘をいろいろと受けました。それを2年の間で主に従業員が一丸となって改善してきたので、2回目の点検は恐いながらも楽しみにしていた点検でした。同じ食品業界でも異なる業種の人たちに第三者の目で点検してもらうことで、自分たちでは気づきにくい問題点や情報が手に入り、会社全体の意識向上を図ることができました。非常に有意義な取組みだと思います」
7月に北海道の二箇所で実施へ
一方、説明を聞いたみついし昆布(株)の榎本恵子さんは「“点検”とは生産者にとってあまり耳ざわりの良い言葉ではないですが、従業員には刺激になる活動だと思います。生産者としてさらに向上するきっかけにしたいと思います」と話し、今後、相互点検活動を受け入れる意向を示しました。
そして、説明会に参加した北海道親生会の生産者は業務の日程などを調整し、今年は7月に北海道チクレン農業協同組合連合会と、(株)NSニッセイの2つの工場で相互点検活動を実施することとしました。 「提携する生活クラブから促されて行うのではなく、自発的に実施するのが親生会の『自主管理』の特長です。部会としても活動を支援しますが北海道はどうしても距離的に遠いので、今日の場を"キックオフ"として将来的には北海道親生会に加盟する生産者がお互いに話し合って、点検活動を進めてほしいと思います」と、前出の青木さんは期待を寄せています。