生活クラブの「生産する消費者運動」の報告に多くの共感が
2009年の11月9、10日、フランスのモンブラン山麓のシャモニーで、社会的経済のための国際会議である「第4回モンブラン会議」が開催されました。生活クラブ連合会は、この会議に代表団を派遣し、生活クラブの「生産する消費者運動」について報告、多くの共感が寄せられました。(2010年4月9日掲載)
初めて食料問題がテーマに
「モンブラン会議」とは、世界経済フォーラムが開催する「ダボス会議」に対抗して、「ヨーロッパの社会的経済のリーダーたちが世界に呼びかけて、横のネットワークをつくろうという国際会議で、今回は初めて食料問題がテーマになり、35カ国、約200人が参加しました」(市民セクター政策機構専務理事の米倉克良さん) 社会的経済とは、市場で利益を上げるためではなく、互助的に助け合い、社会的な役割を果たすセクター(協同組合、共済、NPO、NGOなど)が担う経済活動のことをいい、生活クラブもワーカーズ・コレクティブもここに含まれることになります。生活クラブ連合会では、2004年の第1回会議から毎回、生活クラブグループから代表団を派遣してきました。
前述のように、今回の会議では食料問題がテーマに据えられました。そこで生活クラブ連合会は、「生活クラブ『生産する消費者』運動について」と題して、飼料用米の事例報告を通して、消費者と生産者の連帯による食料自給運動を報告すると同時に、日本での社会的経済の動きと世界を結びつけるために市民セクター政策機構(生活クラブグループのシンクタンク)と協力して木村庸子・連合消費委員(生活クラブ千葉・副理事長)と佐藤秀彰・JA庄内みどり遊佐支店統括営農課長を派遣しました。また、市民セクター政策機構からは澤口隆志理事長、米倉克良専務理事が参加しました。
11月9日の午前に行われた全体会では、ヴァンダナ・シヴァ氏をはじめ、著名な農業学者、経済学者、物理学者が、各分野の視点から食料問題について問題提起しました。また、午後はモンブラン会議代表のティエリー・ジャンテ氏が、モンブラン会議を会議から一歩進め、問題解決の実践モデルを支援することを使命とする方向性を打ち出し、注目されました。
インターネットのネットワーク立ち上げも提案
生活クラブの報告は、11月9日の分科会の第3分科会で行われ、木村庸子さんと佐藤秀彰さんが、鳥海山や産地の風景、組合員活動などの写真を取り入れたパワーポイントの映写を交えて、飼料用米の実例を通した消費する側と生産する側の連帯による自給力向上モデルや、都市と農村の連帯モデルを報告しました。
「食料を商業化してはいけない。食料・農業問題は生産者だけでは解決しない。生産者は情報開示し、消費者は生産リスクを合意する。信頼し合い、共に考え実践する産消連帯が解決のカギと、諸外国の人たちに伝わるように強調しました。私たちの報告は参加者に共感され、特にカリブ海諸国やアフリカ、南米から参加した生産者の関心が高かったです」(木村庸子さん)と言います。
また、10日にも行われた第3分科会で生活クラブ代表団は、「地域農業のノウハウ、産消連帯のノウハウを分かち合うインターネットのネットワークを立ち上げ、まず情報交換と経験の分かち合いを行い、そこから具体化できる交流を実現させていく」ことを提案するとともに、情報ネットワークの受け皿として市民セクター政策機構の『Eメールアドレス』を紹介しました。これに対してセネガル、カメルーン、キューバ、中南米諸国からの生産者が賛同し、提案を進めていくことが合意されました。
食料主権、種子の保護などを全会一致で承認
その後の全体会議では、「食料主権、水資源を守る、種子の保護、食料への自由なアクセス、フェア・トレード、地域での生産消費の重要性」などが全会一致で承認され、会議は終了しました。
今回の会議を振り返ってJA庄内みどりの佐藤秀彰さんは、「生産者と消費者が一緒に代表として参加し、問題解決の実践者自身が報告したことの意義と反響は大きいものがありました。このような機会は若手の生産者にとっても、自分たちのやっている生活クラブとの連帯活動の普遍性の高さを実感するうえで有意義でした」と話しています。
また、連合消費委員の木村庸子さんは、「食料問題という世界・人類共通の問題解決に向け、世界中の人々が地域の問題に即して地域に合った解決方法を模索し、実践している姿を目の当りにして、私も頑張らなければと気持ちを新たにする機会になりました」と言います。
モンブラン会議の全体を振り返って、市民セクター政策機構の澤口隆志さんはこう語ります。
「この会議が食料問題の解決のために具体的な参加を呼びかけ、アフリカやインドなどの実践的プログラムの実施に資金援助することを合意し、フェア・トレードやWTO体制の問題、種子の独占の問題を解決すべきテーマに掲げたことを高く評価したいと思います。生活クラブが提案したインターネットのネットワークの立ち上げについては、多くの国から賛同をいただいたので、要請があった場合には、市民セクター政策機構が受け皿として責任をもって対応していきます」