GMOフリーゾーン 生活クラブでは、4万5,000haにも拡大!!
3月6~7日、山形県遊佐町で「第5回GMOフリーゾーン全国交流集会in遊佐」(主催:遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)が開かれ、全国でGMOフリーゾーンを進めている生産者、生協、消費者団体などから約200人が参加しました。今回は、生活クラブの「遊YOU米」などの提携産地である遊佐町での開催でもあり、地元の提携生産者や生活クラブGM食品問題協議会メンバーなど、大勢が参加しました。(2010年3月17日掲載)
アメリカでもGMO反対の声が
遺伝子組み換え作物(GMO)が存在しない地域のことを「GMOフリーゾーン」といい、生産者は自らの意思でGMOの栽培はもちろん流通なども拒否します。1999年にイタリアで始まったこの運動は世界で広まり、日本では2005年に滋賀県高島市の「針江げんき米栽培グループ」が最初のGMOフリーゾーン宣言を行いました。そして、この動きをさらに拡大していこうと、GMOフリーゾーン全国交流集会が実施されるようになり、今年で5回目になります。
大会委員長のJA庄内みどり代表理事専務の碇谷肇さんは、「第2回大会に参加以来、いつか遊佐の地で行いたいと思っていましたが、ようやく実現することができました。しかし、この間にもGM作物の栽培面積が世界で拡大していることに危機感を募らせています。GM作物には生物多様性の面でも問題があると思っています。今年の10月に名古屋で開かれる生物多様性条約第10回締結国会議(COP10)に向け、GMOフリーゾーンの拡大とGM食品はいらないという運動の波をつくっていきましょう」と、開会の挨拶をしました。
基調講演では「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(以下、いらないキャンペーン)代表の天笠啓祐さんが、「09年の全世界でのGM作物の面積は1億3,400haと、日本全土の約3.5倍にあたる面積に広がっています」と報告。その一方で、「GM作物は30年以上前から研究されているにもかかわらず、商業化されている主な作物は大豆、トウモロコシ、綿、ナタネの4種類だけで、性質にいたっては殺虫性と除草剤耐性の2種類のみ。推進する側にとっては、開発がうまく進んでいない現実もあります」と指摘しました。
最近の動向としては、米国環境医学会が昨年5月にGM食品が深刻な健康被害をもたらす恐れがあるため、即時モラトリアム(一時停止)を求めるメッセージを出すなど、GM作物の面積が世界の半分を占めるアメリカでも反対の声が上がり出したという報告がありました。
さらに碇谷さんの挨拶を受けて、「COP10に関連し続けて開催されるカルタヘナ議定書第5回締約国会議(MOP5※)では、GM作物を輸出して、その輸入先の環境などに悪影響を及ぼした場合の責任や賠償方法のあり方が大きな争点になるでしょう」との話がありました。
※MOP5…第5回「カルタヘナ議定書締約国会議」の略。カルタヘナ議定書とは、遺伝子組み換え生物の輸出入に伴なう環境(生物多様性、農業、ヒトの健康)への悪影響を防止する目的で、生物多様性条約にもとづいて定められた議定書。その締約国の定期会合がMOPと呼ばれます。第5回は日本を議長国に、2010年10月に愛知県で開催されます。
生産者、消費者からリレーメッセージ
日本でGMOフリーゾーンの登録が始まって5年。09年2月末で5万5,536haに広がっています。このなかには今回の開催地である遊佐町で、JA庄内みどり遊佐地区農政対策推進協議会の全農地にあたる3,080haが含まれるほか、北海道、栃木県、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県などの各地で生活クラブの提携生産者が宣言した農地が登録されています。また、今回の統計には含まれていませんが、生活クラブ静岡が提携する生産者が新たに75.7haの農地で宣言したとの報告がいらないキャンペーン事務局からありました。
続いてGMOフリーゾーン運動を進める生産者、消費者からのリレーメッセージが行われ、各地での取り組みなどを共有しました。
生活クラブ千葉の農産物提携生産者の団体である「元気クラブ」の小川達也さんは、GMなたねの監視調査をしたところ、自分の圃場から7kmの範囲で組み換えされたなたねが自生していることが確認されたと報告。GMOフリーゾーン宣言をしている場所が、輸入されてこぼれ落ちたなたねにより交雑の危険にさらされていると話しました。
一方、NON-GM飼料にこだわり利用している豚肉の生産者として、遊佐町に隣接する酒田市から参加した(株)平田牧場・社長の新田嘉七さんは、「組み換えでないトウモコロコシを輸入するほうが、それを証明するなどのコストがかかって1kg当たり30円ほど高い。このように自然界になかったGM作物のほうが幅をきかせている世の中はおかしい。人為的なものこそ表示すべき」とアピールし、「飼料穀物の自給率を高めることが重要」と語りました。
来年の開催地・徳島県への旗の引継ぎ
また、地元のJA庄内みどり遊佐町共同開発米部会の今野修さんは、世界で拡大が続くGMなたねに対し国産なたねの栽培実験を始めたと次のような報告がありました。
「転作田で国産なたねと大豆、飼料用米の2年3作体系をつくるべく『ゆざ菜の花プロジェクト』と称した実験を始めました。国産なたねの収益は低いのですが、利益だけを考えるのではなく、安全安心な農作物をつくることが遊佐の財産と考えて農協青年部を中心に取り組んでいます。また、NON-GM作物を広める意義について、行政、農協、共同開発米部会などが連携を取って、町ぐるみで啓発活動を行っています」
消費者側の取り組みでは生協連合会きらりや生活クラブやまがたなど7団体が発表。
生協連合会きらりの岡崎澄子さんは「組合員活動では『GMしわけ』と銘打って、どのような市販の食品にGM由来のものがふくまれている可能性があるかを調べました」と話しました。
また、生活クラブ全体の活動をやまがた単協の澤田正子さんが、代表して次のように報告しました。
「提携する生産者を合わせるとGMOフリーゾーンを宣言した面積は約4万5,000haになり、これは琵琶湖の約2/3の面積に相当します。昨年9月には長野県でそばの生産者である(株)おびなたがそば畑約20haを登録しました。組合員活動としては、栃木単協が家庭菜園を行う個人宅でGMOフリーゾーン宣言をすすめ、261枚の看板が設置されています」
集会では最後に「GM作物を用いたグローバルで破壊的な食料支配に向かう流れを変え、安全で安心な地域農業の発展をめざそう」などとする大会宣言を採択。また、東北大学で行われようとしている「GMイネの野外実験」に対し、「抗議と要請」をすることを確認しました。そして、遊佐町共同開発米部会長である川俣義昭さんから、来年の開催地となる徳島県へ新たにつくられた旗の引き継ぎが行われ、全体会は閉会しました。