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明日へ広がれ!お米のエサ!「飼料用米フォーラム」を開催

明日へ広がれ!お米のエサ!「飼料用米フォーラム」を開催

 食料自給率が41%(09年度)の日本。お米の消費量が減り減反が進む一方で、畜産飼料は海外へ依存しているため飼料自給率はわずかに27%しかありません。この状況に「NОN」を突きつけ、自給力向上の具体的なモデルとして注目されているのが2004年に始まった飼料用米への挑戦です。つくる人=庄内の農家、使う人=平田牧場、食べる人=生活クラブの輪があって実現したことですが、この実践を社会に広げることを目的にした「飼料用米フォーラム」が2月6日、横浜のパシフィコ横浜で開かれ、約850人が参加しました。主催は庄内地区飼料用米生産利用拡大推進協議会で生活クラブ神奈川が共催しました。(2010年2月17日掲載) 

実現の背景には「食べる人」の存在が

鈴木正士会長

 フォーラムは、〈生活クラブ飼料用米取組みの5ヵ年の実践と課題〉をテーマにした生活クラブ連合会の加藤好一会長の基調講演とパネルディスカッション、実践団体のパネル展示や飼料用米を使った畜産品をはじめとする試食という2部構成で行われました。
  冒頭、庄内地区飼料用米生産利用拡大推進協議会の鈴木正士会長は、庄内の水田は30%以上が米を作付けしていない現状を説明しつつ、飼料用米の持つ意義をこう強調しました。
  「海外から輸入される穀物は年間2700万~2800万トンになりますが、その半分以上が家畜の飼料です。それを少しでも飼料用米に置き換えれば穀物自給率は上がっていきます。日本はトウモロコシをはじめとする穀物を大量に輸入していますが、世界にはトウモロコシを主食にしている国があり、それらの国は飢餓に苦しんでいる。飼料用米を広めて穀物自給率を上げることは、そうした国々への貢献にもつながります」

加藤会長

  基調講演に立った生活クラブ連合会の加藤好一会長はまず、2004年に遊佐町、共同開発米部会、生活クラブ生協、平田牧場、JA庄内みどり、全農庄内本部、北日本くみあい飼料を構成団体として発足した「飼料用米プロジェクト」体制や生活クラブと庄内地方の提携の歴史などを説明しつつ、飼料用米の取組みが実現した背景として見逃せないことは、食べる人の存在だったとこう指摘しました。
  「生活クラブの米の消費量は全体で約15.5万俵、このうち10万俵は遊佐の米。また、平田牧場は年間17万頭出荷していますが、このうち8万頭強を生活クラブは消費している。この結集力が飼料用米の取組みを支える要因だったと思っています」
  また、飼料用米の作付けが遊佐町から隣の酒田市、さらには宮城県のJA加美よつば、栃木県の栃木県開拓農協、岩手県のJA新いわてと増え、09年には平田牧場一社で約4300tの契約数量になったことを紹介し、「平田牧場は他の追随を許さない日本一。今後は他の畜産物を含めた全体でチャレンジしたい」と意気込みを語りました。
  講演のなかで加藤会長は飼料用米について、国の助成金(10a/収量600kg=8万円)があって生産が続いている現状に触れつつ、「これがいつまでもあると期待してはいけない。関係者の努力でこの取組みが持続できるようにしなければならない」として、次のような課題を挙げました。

  1. 10a当り1tを目標にした超多収の実現―そのために飼料用米専用の品種改良と量産誘導の施策。
  2. 省力・低コスト生産技術の確立・実行―具体的には水田に種を直接播く「直播」技術の開発など。
  3. 長期政策化と財源確保―飯米への不正規流通防止のための流通・保管施設の整備。また、飼料用米を軸とする2年3作(飼料用米→ナタネ→大豆)の構築。
  4. 消費者の理解と確実な消費
  5. 飼料用米の配合率(現在は10%)・配合量の向上と肉質などの品質向上

つくる人、使う人、食べる人から発言が

飼料用米を給与されている牛のパネルに見入る参加者

 加藤会長の基調講演後に行われたパネルディスカッションのテーマは、〈飼料用米をつくる人、使う人、食べる人が一体となって、国内自給力向上ならび国内農業を発展させよう〉。山形大学農学部の小沢亙教授をコーディネーターに、パネラーとして、つくる人からはJA庄内みどり理事の今野進さんとJA加美よつば営農販売部長の後藤利雄さん、使う人からは平田牧場生産本部長の斎藤昇さんと栃木県開拓農協農畜産部の加藤功示さん、それに(株)秋川牧園社長の秋川正さん、食べる人からはさがみ生活クラブ生協常務理事の桜井薫さんと生活クラブ連合会の加藤会長、さらに農林水産省草地整備推進室長の小林博行さんが出席し、飼料用米の現状や課題について意見交換しました。
  JA庄内みどりの今野さんは、「十数名の農家が8町歩から初めた頃は10年、20年先には社会から注目されるだろうと考えていましたが、世界的な食料事情の逼迫という事情もあって、こんなに早い時期に飼料用米が注目を浴びていることに驚いている」と率直に感想を述べました。また、JA加美よつばの後藤さんは、自給力向上への取組みとして加工用トマトなどの作付けとともに飼料用米を位置づけている、と強調しました。
  飼料用米は現在、平田牧場のほかに栃木県開拓農協の「ほうきね牛」と「栃木開拓牛」、秋川牧園と群馬チキンフーズの「はりま」などでも給餌されています。平田牧場の斎藤さんは、「飼料用米プロジェクトが実現できたのは、自分たちのほしいものをみずからが開発していくという生活クラブの存在が大きく、スーパーで買い物をしているだけでは飼料用米プロジェクトの仕組みはつくれなかった」と指摘しました。
  栃木県開拓農協の加藤さんは、「ほうきね牛」と「栃木開拓牛」に実験給餌してきた経過を説明し、さらに2010年度以降は全頭給餌することを明らかにしました。秋川牧園の秋川さんは、平田牧場の実践に刺激を受けて「はりま」への試験給餌を始めたことを打ち明ける一方、西日本では農業が疲弊し、当初は飼料用米の生産者を探すことから始めなければならなかった実態を説明しました。ただ、今年からはその理解が進んできたこともあり、「山口県でも飼料用米をつくってみよう」という機運が高まってきているといいます。
  食べる人を代表したさがみ生活クラブの桜井さんは、「私は飼料用米について、食料自給率を上げることにつながる取組みに参加できることにワクワク感を持ちました。多くの組合員がそれぞれの思いを伝えて世論を高め、新しい仲間をつくることにもつなげていった」と振り返りました。

農林水産省も重要視

鹿川グリーンファームの飼料用米

 飼料用米プロジェクトの実践は国をも動かしました。農林水産省は2009年度から自給率向上を図るために主食用並の所得を確保しうる水準を、飼料用米生産者に助成する「水田利活用自給力向上事業」をスタートさせました。
  農林水産省の小林さんは、「農水省では飼料自給率を2008年の26%から2015年には35%にする目標を立てていますが、3年前にトウモロコシをはじめとする穀物価格が高騰し畜産農家から悲鳴があがりました。この時は国が補助しましたがその金は結局、トウモロコシの大輸出国であるアメリカに行ってしまうわけです。その場しのぎの施策では自給率向上の抜本的解決にはつながりません。その一方で日本農業は耕作放棄地が増え、水田が余っている。そこで地域にお金が落ち農地が維持でき水田に適している作物は、となるわけです。これが飼料用米などに施策を転換した理由です」
  パネルディスカッションでは、飼料用米の課題について「超多収穫品種をつくってほしい」(今野さん)、「トウモロコシに較べてまだコストが高い」(斎藤さん)「飼料用米を一般化するには保管場所の確保など条件整備が急務」(後藤さん)、「どう食べていくかがキーになる」(桜井さん)など、それぞれの立場から発言がありました。

飼料用米を給餌した豚肉の試食

 農林水産省の小林さんは、保管・流通体制の確立や輸入トウモロコシとの価格差の縮小、食用米への不正規流通の防止などの課題を挙げたほか、「ワラにも注目したい」とこう提案しました。「10a当り500㎏の米が取れるとワラも500㎏取れる計算になります、これをムダにせず、牛のエサにつなげていきたい」
  最後に加藤会長は、「飼料用米を広げていくには食べる人の利用結集が重要になってくる」とこう強調しました。
  「飼料用米の配合比率を高められないかと考えていますが、その比率が高まるとトウモロコシとの価格差が顕著になってきます。そのことで利用が下がるとどうなるのか? 確実な消費と取組みのアップが配合率のアップ、ひいては自給率のアップにつながることを確認しておきたい」

●3月5日(金)には、「飼料用米シンポジウム in 東京」が開催されます。
参加のお申込みはコチラ(生活クラブの学校フォーラム)※終了しました
 

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