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消費材の「原料原産地表示」をさらに拡大

消費材の「原料原産地表示」をさらに拡大

 食品の原料原産地表示の偽装事件が頻発する前から、生活クラブは加工食品を含めた原料原産地表示の取組みを積極的に進めてきました。今年8月には、生活クラブ親生会とともに、市民発の政策提案を全政党に対して行ったという意見広告を「朝日新聞」に掲載しました。その提案のひとつが「食品表示制度を抜本的に見直そう!」で、具体的な項目として、「加工食品の原料のトレーサビリティ(履歴)と原料原産地の表示の義務化を。」などを挙げ、食品表示制度の抜本改正を求める「全国署名運動」にも取組んでいます。また10月の連合理事会では、「消費材の原料原産地包材表示指針」をまとめ、JAS法や東京都条例を超えた表示の実体化に取組みます。(2009年11月20日掲載) 

「政策提案運動」を契機に

 加工食品の原産地表示は、消費者からの要望を受けて2005年に加工食品品質表示基準が改正され、06年10月から生鮮食品に近い特定の食品(現在、塩蔵野菜など20食品群とうなぎ加工品など4品目)に原料原産地表示が義務づけられました。具体的には国産品は「国産」である旨を、輸入品は原産国名を記載しなければなりません。また、厚生労働省と農林水産省は03年から、加工食品の原料原産地表示の拡大に向けた表示の方法と品目の考え方について検討する「食品の表示に関する共同会議」をもち、09年8月に報告書をまとめました(9月から消費者庁に移管)。
  他方、東京都は「中国産ギョーザ事件」をきっかけに、08年8月に調理冷凍食品について原料原産地表示(上位3品目かつ重量割合5%以上)の義務付けを施行しました。
  一方、生活クラブは提携生産者向けに05年から発行している「消費材開発マニュアル」で、JAS法で定められた品目を超えて一次産品の原料原産地を表示するとともに、複合原材料で構成する原材料名などについても法令を超えて表示していくことを提携生産者に要請してきました。そこで今回、「消費材の原料原産地包材表示指針」をまとめた目的や具体的な内容について、生活クラブ連合会品質管理部部長の森泰見さんに聞きました。

森泰見品質管理部部長

──指針をまとめたのは、政策提案運動が契機ということでしょうか。
 はい。政策提案では、加工食品すべてについて原料原産地の全面表示を提言しているわけですから、当然、消費材についても整理が必要になってきます。これまで生活クラブはJAS法で決まっている20の食品群と4品目について原料原産地表示をしてきましたし、都条例についてもそれに準拠してきました。指針の対象はさらに踏み込んで、一部の適応不可能な消費材と酒類を除き、すべての一次産品と加工食品になります。

「購買力を選択的に行使できる社会の実現」へ

―─現在、生活クラブにおける原料原産地表示はどのレベルにあるのでしょうか。
 7月から9月にかけて生産者の自己申告に基づく調査を実施しました。09年度取組みの連合企画消費材1431品目を対象にした調査結果は、すでに「適応している、或いは法律を超えている」が78%、「適応可能」が20%というものでした。適応とは、調理冷凍食品に限らず、都条例や従来の原産地表示にかかわるJAS法に適合している品目を指します。また、適応可能は、包材の改版で表示が可能というものです。今回の指針の適応範囲は都条例の「上位3品目かつ重量割合5%以上」の第一次産品原材料を最低限の範囲としていますが、これはあくまでも最低レベルで、たとえば上位3品目以降や重量が5%以下でも表示できるものはしていくという考え方です。
―─具体的には?
 「鶏ごぼうごはん」の原材料のうち、上位3品目かつ重量割合5%以上という都条例では、表示対象は「精白米」「大麦」「ごぼう」です。しかし、今回の指針ではこれに加えて、「とうもろこし」「にんじん」「さやえんどう」「鶏肉」「鶏卵」も国産表示をしていきますし、「鶏ごぼうごはん」ではすでに実施済みです。ただ、原産地が特定できないケースもあります。たとえば「海鮮餃子」のイカです。企画書の原料情報には原産地「ペルー」と記されていますが、備考欄に「季節によってペルー以外の産地となる場合があります」と補足されています。つまり産地固定ができない。これを無理矢理「ペルー」と表示すれば産地偽装になってしまうため、原産地を記載することはできません。
―─調査結果ですでに適応と適応可能を合わせれば98%、残りの2%は表示が不可能ということになりますが、どのようなケースなのでしょうか。
 「胡麻」や「香辛料」の一部のように多数の外国産地があることや、複数産地の原材料が混合されるなど、現行法では対応に無理がある品目や、複数原産国で時々の産地特定が困難な品目などです。この具体的なケースには練り製品があります。すり身の原材料を表記した場合、魚種の原産国が複数にわたり、季節によって確定できない場合があります。ただ、農林水産省と厚生労働省の「食品の表示に関する共同会議」の報告書には、複数の原産国の原材料を使う場合は、「外国産」または「輸入」といった大括り表示について検討されました。まだ結論は出ていませんが、分かりづらいケースはこの表示方法も選択肢の一つかもしれません。
  このほか、表示スペースが小さい、生産者のNB(ナショナルブランド)商品、他生協との包材兼用などの理由で指針が適応できないものもあります。なお、原材料の上位3品目に第1次産品がない品目は対象外になります。
―─生活クラブが「加工食品の原料のトレーサビリティ(履歴)と原料原産地表示の義務化を」と提案した理由は、消費者が自給力向上の取組みに参加できる表示の仕組みを求めたからでしたね。
 今回の指針は食の安全と安心、そしてその基盤となる食料自給力の向上を求める消費者が、知る権利に基づいてその購買力を選択的に行使できる社会の実現を目的に定めたものです。食品表示は法律の改定も関係してきます。その対応を見通しながら進めるとともに対応可能な生産者から着手し、2010年4月から順次、表示の切り替えを行います。

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