中国産「NON-GMトウモロコシ」の輸入契約を締結
畜産飼料として欠かすことのできないトウモロコシ。しかし、その最大の輸入先であるアメリカでは、遺伝子遺伝子組み換え(GM)の割合が年々高まっています。 生活クラブ連合会は組み換え作物(GMO)を扱わないという方針を堅持するため、産地の多元化を進めていますが、このほど中国の産地とNON-GM(非遺伝子組み換え)トウモロコシを3年間輸入する契約を締結しました。 7月5日~11日にかけて中国を訪れた生活クラブ連合会の福岡良行専務理事にその成果と意義を聞きました。(2009年8月31日掲載)
アメリカ産とそん色ない品質
――早速ですが、今回の訪問の成果としてどのようなことがありましすか。
[福岡] 遺伝子組み換えではなく、しかも収穫後に農薬をかけない、いわゆるNON-GM&PHFトウモロコシについて、中国側と3年間の輸入契約を結んだことが挙げられます。NON-GM&PHFトウモロコシをエサとして豚肉をつくる提携生産者の(株)平田牧場と消費者である生活クラブの立会いのもとに、中国側の輸出窓口である中粮粮油有限公司(COFCO)と日本側の窓口のJA全農が調印を行いました。
トウモロコシの生産量、輸出量の世界第1位は言わずと知れたアメリカです。しかし、同国では遺伝子組み換えされたトウモロコシの作付割合が昨年度は80%、そして今年度は85%と年々高まっています。このような状況でアメリカだけに遺伝子組み換えでないトウモロコシを頼るのはたいへんリスクがあります。したがって、生活クラブは産地の多元化を目指してきましたが、今回の契約により、大きく前進させることができました。
――中国産というと「安かろう、悪かろう」というイメージがありますが、品質は大丈夫なのでしょうか。
[福岡] 遺伝子組み換えでない作物を収穫から港での積み出しまできちんと分別管理することをIPハンドリングといいますが、私たちがJA全農と作った基準をクリアーしたトウモロコシですので品質は相当高いといえます。すでに今年度分が日本に陸揚げされましたが、アメリカ産とそん色なく、「上玉」だったという報告を受けています。NON-GMトウモロコシを入手したいと考えている畜産関係者やコーンスターチメーカーなどにも自信をもって薦められる品質です。
一方、トウモロコシなど中国産の穀物に関しては、「安かろう」という時代はすでに終わったといえるでしょう。むしろ、国際相場よりも高くなっているのが現状です。それは中国政府が食料安全保障の観点から、穀物の備蓄を進めていることによります。中国はアメリカに次ぐ世界第2位のトウモロコシ生産量を誇りますが、この2年間、自国を優先し輸出を制限していました。昨年末に中国政府は、この政策を解除し、わずか50万トンのみ輸出ライセンスを発行しました。
組合員とともに産地点検も実施
――再び輸出制限になる恐れもあるということでしょうか。
[福岡] その懸念を払拭するための3年契約であるとも言えます。万が一、中国政府が再び輸出を制限したとしても、輸出を担当するCOFCOが長期契約を結んでいることやこれまでの産地との安定した提携関係と取り組み実績をもとに、中国政府に対して輸出制限に左右されない「特別ライセンス」を申請しようと考えています。
輸出制限の前から生活クラブは平田牧場と黒龍江省の鶏東で、JA全農と遼寧省の阜新で、それぞれ産地との関係を大切にしながらNON-GMトウモロコシのIPハンドリングの仕組みを築いてきました。ですから2年間の輸出制限の措置は、鶏東や阜新の生産者にとっても残念な出来事だったのです。今回の契約で輸出窓口をCOFCOに一本化することで、中国の生産者と日本の消費者が文字通り一体となった提携関係を中国政府にアピールする体制が整ったといえます。
――中国訪問では調印以外にどのようなことを行ったのですか。
[福岡] 鶏東と阜新の産地点検を実施しました。今回の訪問団の団長は生活クラブ連合会理事で愛知単協理事長でもある前田裕子さんで、ほかに組合員で連合消費委員の植田泉さん、猪狩裕子さんが訪れました。組合員は日ごろ提携生産者の産地点検をするとももに、生産現場から学び、生産構造を理解して、生産者との信頼関係を深めています。そして、今回訪問した2ヵ所のNON-GMトウモロコシの産地では国や言葉こそ違うものの、国内の生産者となんら変わりない関係が築かれていることを組合員は実感されたのではないかと思います。
また、中国の生産者も、自分たちがつくった飼料で育てられた豚肉を食べている組合員と交流できたのは、意義深いことだと述べられていました。
多国籍企業の種子支配に対抗
――ところで、生活クラブは遺伝子組み換え作物を取り扱わない決定を1997年にしています。しかし、食品のみならず畜産のエサにまでこだわる理由を教えてください。
[福岡] 生活クラブは3つの観点から、遺伝子組み換え作物を原則的に取り扱わないと決めました。それは安全性の問題と環境の問題、それと“命の源”ともいえる種子を多国籍企業に支配される恐れがあると考えるからです。
特に日本はトウモロコシのほぼ100%を輸入に依存し、その多くがアメリカ産です。そして、用途としては約8割が飼料として使われています。したがって、もし「直接食べるものではないので飼料用はこだわらない」としたら、たちまち食用もふくめてアメリカ産のすべてが遺伝子組み換えになる恐れがあると思います。
また、安全な食肉を生産するためには、健康な家畜を育てることが肝要です。そのためにはエサが重要で、エサが食肉の品質を規定すると言っても過言ではないでしょう。その意味においても、エサにこだわることは当然のことだと思います。
安全な畜産物を望む消費者に対し、国内の生協陣営は多くは遺伝子組み換えでないトウモロコシを飼料としていました。しかし、昨今の飼料価格の高騰で、今日、遺伝子組み換え不分別のトウモロコシに切り替えが進んでいるのは非常に残念なことです。
――確かに「疑わしい食品は口にしたくない」と、多くの消費者が考えていると思います。その人たちへメッセージをお願いします。
[福岡] 各種のアンケート調査によれば、消費者の多くが、遺伝子組み換え作物が原材料として使われていることが気になると回答しています。しかし、現実は表示制度が不備のため、消費者は好むと好まざるとにかかわらず、遺伝子組み換え由来の食品を食べさせられているのが実態です。
現在、生活クラブは他の市民団体とともに、遺伝子組み換えやクローン牛などの食品表示制度の抜本的改正を求める署名運動に取り組んでいます。50万人を目標にしていますので、ぜひひとりでも多くの方に署名をお願いしたいと思います。そして、消費者がきちんと選択できる制度を、来年の通常国会に向けて求めていきたいと考えます。
また、先に述べたように遺伝子組み換え作物には、安全性や環境面のほかに多国籍企業の問題があります。食糧はいま、一握りの巨大企業に支配されかねないという「見えない脅威」にさらされているといえます。この問題に対抗するには、種の自主管理活動と消費の結集です。消費する側の食べ方が、生産のあり方に大きな影響を与えるのです。生活クラブは今後も遺伝子組み換え由来の食品を扱わないという姿勢を堅持します。「見えない脅威」に立ち向かうためにも大勢の方々に生活クラブへ加入していただき、遺伝子組み換え対策をした消費材を利用することで意思表示をしていただければと思います。
――ありがとうございました。