2009年度 初の生活用品の「生産者交流会」始まっています
生活用品の分野でも「100円均一ショップ」「使い捨て」に象徴される大量生産、大量消費の社会に一石を投じ、国内自給を基本とした暮らしのあり方、豊かさを問い直そうと、生活クラブ連合会は、調理用具や衣料、寝具など生活用品の取り組みを強めています。その一環として、「生産者交流会」が今年5月から、各地で始まっています。これまで「食」を中心に実施されてきた生産者と組合員の対話を生活用品にも広げようという試みです。(2009年7月22日掲載)
間伐と間伐材活用の重要性を訴える
7月8日には甲府市の「生活クラブ甲府センター」で、まな板や漆器など木・竹製品の生産者「酒井産業」(長野県塩尻市)の営業部長酒井慶太郎さんとの交流会を開催、組合員約20人が参加しました。
酒井産業は環境保全を重視し、国産間伐材を活用して木・竹製品を国内各地の工場とネットワークして製造販売している提携先です。碗(わん)やはしなどの漆器のほか、まな板や押しすし器、積み木、竹製の調理用へらなどの製品を供給しています。
林野庁の資料などによると、日本は森林が国土の約7割を占める、いわゆる先進国の中では有数の森林大国です。日本人は古くから豊富な天然資源である木材を住居や生活用品に取り入れて気候風土に合った暮らしをしてきました。しかし、戦後の復興期に木材需要が追いつかず、輸入に頼るようになり、その結果、国産材の需要が落ち込んでいきました。現在、戦後に植林された森林が収穫期を迎えていますが、輸入材が8割を占めて、国産材の需要が伸びていないため、放置され荒廃している森林も多いとされています。
交流会では、酒井さんがまず「森林面積の広い、世界でも珍しい国なのに、自給率は20%ほどしかなく、しかも輸入材の2、3割は違法伐採だと言われています。このため国産材の需要を高める取り組みを一生懸命やっています」と説明。日本のような人工林を守るためには、山を手入れして、木を間引く間伐が必要で、「間伐された細い木材の使い道を考えていかないと、間伐材が山に放置されたままになり、災害の原因にもなってしまいます」と間伐と間伐材活用の重要性を訴えました。
また、酒井産業の取り組みとして、子どもたちに木や森の大切さを教える「木育」の取り組みを進めていることや、適切に管理された森林で生産された木材で製品を作り消費者に届ける「森林管理協議会(FSC)」の認証を受けていること、森林の活性化でCO2削減を目指す「3・9GREENSTYLE」の運動に参加していることなど、環境を重視した同社の姿勢を強調しました(FSCについては コチラ、3・9GREENSTYLEについてはコチラをご覧ください)。
さらに、工場の実際の作業を紹介した上で、参加した組合員を交えて、漆器の椀の熱の伝わり具合や、「鬼おろし」での大根のすり下ろしなどの実演を披露、木・竹製品の上手な使い方についても熱弁を振るいました。
環境問題から道具の使い方まで幅広い質問が
参加した組合員からは「接着剤は安全か?」「国産材は価格が高いのでは?」「まな板が黒ずんできたらどうするのか?」など、環境問題から身近な道具の使い方まで幅広い質問が出されました。
酒井さんは「接着剤そのものは量を超えれば有害ですが、硬化させていますし、食品衛生法上問題のない範囲内です」「輸入材の価格が上がり、国産材が下がってきていますので、価格差がなくなってきています」「まな板の黒ずみは、カビが原因。紙やすりで削るとけばだって余計に汚れるので逆効果です。黒ずまないように使うことが基本。黒ずみを防ぐには、使用前に表面をぬらして食物の栄養分がまな板に染込まないようにする、使用後の乾燥時には、割り箸などをかませて隙間をあけて、たて掛けるなどの工夫をしましょう」などと一つ一つの質問に丁寧に答えていました。
酒井さんは最後に「日本の林業家を守るためにも、国産の建築材をたくさん使っていかなければならない。そうすれば、端材も多く出てきてさまざまな製品を作れるようになります」と国産材活用の重要性を訴えました。
交流会終了後、酒井さんは「生活クラブに長年、供給してきたが、組合員と直接話をする場はなかった。交流会は製品の改良、開発につながる取り組みにしていきたい」と手応えを語りました。
国内自給を基本とする取り組みの推進へ
生活用品はいわゆる「100円均一ショップ」などの登場で、価格競争が激化、生産拠点が中国や東南アジアに移り、国内の中小企業が打撃を受ける一方で、新興国では環境問題が浮上しています。生活クラブでは、1960年代後半から生活用品の取り組みを続けてきましたが、こうした最近の社会変化に対応し、改めて方向性を示そうと「生活用品プロジェクト」を設置、昨年6月に答申をまとめ、「生活用品政策」を決定しました。
政策では、生活用品は「食」以上に、分業化とグローバル化が進み、「生産」と「消費」が分断、資源の奪い合いや化学物質による健康被害、環境問題、地場産業などの地域経済の破壊を引き起こしていると指摘しています。 その上で「食」と同様に、生活用品でも「生産・流通・消費・廃棄の過程を知り、分断をつなぎ合わせ、再生していくことで社会的な課題に対する問題解決のモデルを示していく必要がある」として、国内自給を基本とする再生産構造の維持に貢献する取り組みを推進していきたいとしています。
さらに(1)「安全・健康・環境」の生活クラブ原則にのっとり、環境への負荷が少なく、持続的に再生産が可能な原料を使用した製品を取り組む(2)国内自給を基本とし、原材料や人材などの地域資源を活用して、国内生産構造を維持、発展させる取り組みを推進する(3)耐久性が高く、長く使い続けられる用品の取り組み強化と長期間修理対応が可能な品目を選定する(4)組合員が生活用品の取り組みに参加できる仕組みを新たに構築する―など8項目からなる基本方針を掲げています。
また「衣」「食」「住む暮らす」「教養・娯楽」「危機管理」「子育て、生活サポート用品、ユニバーサルグッズ」に分けて、それぞれに取り組み視点と課題を設定、重点ジャンルを整理して、今後の取り組みへの方向性を示しています。
「生活用品生産者交流会」もこうした生活用品の取り組み強化の1つで、組合員の利用結集を図るとともに、組合員の意見を取り入れた製品の改善や開発につなげるのが狙い。交流会は「調理器具」「石けん・衣料・寝具」「木・竹製品」の3ジャンルに分け、本年度は来年3月まで順次、各地で開催される予定です。