品質の差は歴然!「国産い草」で夏を快適に!
古くから、日本人の生活に深く溶け込んできた「い草」製品。芳しい香りが心と身体を優しく癒してくれます。ところが、安価な中国産に押され、国産のい草生産は危機的状況に追い込まれています。もっとも、中国産には「安かろう悪かろう」の声が絶えません。生活クラブは、国内のい草生産を維持・継続するために、い草製品の出荷の中心である福岡県と、もっとも歴史の古いとされる岡山県の2産地の製品に取組んでいます。いずれも、原料い草の品質にこだわり、耐久性に優れています。また、市販品では防虫カビ加工しているものを多く見かけますが、薬品処理は一切していません。(2009年5月18日掲載)
中国産い草製品の安さの理由
花ござなどのい草製品は、日本の夏の高温多湿という気候を快適に過ごすために、古くから愛用されてきた日本固有の用具です。ところが、現在では流通している80%を中国からの輸入品が占めています。事実、スーパーやホームセンターに並んでいる製品の原料産地はほとんどが「中国」。価格は国産い草を使ったものの半値以下が大半ですが、「品質差は歴然としている」とは、生活クラブ連合会生活用品課の土樋範雄課長です。
「中国のい草栽培は1980年代に、日本のい草メーカーが日本い草を持ち込んだことから 始まりました。現在では、江蘇省の蘇州や上海の青浦などで栽培され、輸入量は急激に増加しています。ただ、中国い草の収穫時期は日本より1ヶ月ほど早い6月上旬。完熟前のためにい草の中心部の生成が不十分なために、コシがなく表面がはがれやすいなど品質は国産より劣ります」
また、い草製品メーカーの関係者は「国産い草は水分吸収や堅牢度で中国産に勝る」と話しています。さらに、「国産い草は変色しにくく長持ちする。中国産は表面がボロボロになりそれがハウスダストの原因にもなる」との指摘もあがっています。実際、中国産と国産(生活クラブの取組品)の両方を使った経験のある組合員はこう証言します。
「中国産の価格は確かに安い。花ござの3畳程度の広さのもので4千円以下ですからね。でも、使って2年目には表面がはげてしまい、捨てるしかありませんでした。一方、生活クラブの花ござは1万円を越します。が、表面のささくれもほとんどなく、高品質の国産い草でしっかり作っていることが実感できます。4年目の今年も活躍してくれそうです」
国産の収穫量、生産農家は減少の一途
しかし、高品質を誇る国産い草の現状は明るいものではありません。収穫量、生産農家ともに減少の一途を辿っているからです。い草はかつて岡山、広島、福岡、熊本などで米の裏作として栽培されてきました。ところが、和室の減少という生活様式の変化と、安価な中国産い草の輸入で国内栽培は減少。農林水産統計によれば、作付け面積は76年の約10,000haをピークに08年は1,070haに、収穫量も13,700㎏とピーク時の38%にまで落ち込んでいます。生産農家はわずかに805戸、過去5年間で450戸以上も減ってしまいました。
この状況に歯止めをかけたいところですが、不安要素はまだあります。高齢化とい草栽培を「重労働で過酷」と生産者の誰もが口にすることです。苗の植え付けは真冬の水田。5月には、収穫量の増収を目的に、成長したい草の先端を刈りそろえる「先刈り」をしなければなりません。刈り取りは梅雨明けとともに炎天下での作業になります。これで終わりではありません。「泥染め」という重要な作業があるからです。これはい草特有の色を長持ちさせるために行われるもので、刈り取ったい草を染土を溶かした水に浸します。そして天日干し。い草の価値が下がらないように毎日が天気との闘いだといいます。「若い人に敬遠されてしまう」という話には頷かざるを得ません。
また、い草が華麗な花ござに変身するためには、「染め」や「織り」の職人の力が必要になってきます。しかし、ここでも高齢化が進み、技術の伝承が危ぶまれているのです。
現在、い草の主産地は熊本県で全国の98%を占めています。残りは福岡県で、岡山、広島は皆無に近い状態で、生活クラブが取組む岡山県の製品も、ほとんどを熊本県のい草を原料に使っています。
「湿度調節作用」など、絨毯にはない特性が
い草は、絨毯などにはないいくつかの特性があります。まずは「空気浄化作用」。大気汚染で問題になっている二酸化窒素やシックハウスの原因と言われるホルムアルデヒドなどの有害物質を吸収し、それを浄化する作用があります。二つ目は「湿度調整作用」です。い草は表面の皮質部とスポンジ状の灯心部の二層構造になっています。表面は細かい筋と微妙な凹凸状になっており、この部分が吸収したり吐き出したりすることで室内を快適に保ちます。高温多湿の日本の夏にはピッタリの生活用具と言われる所以です。そして三つ目が「保温・断熱効果」。スポンジ状の灯心部はたくさんの空気を含んでおり、羽布団のように快適な温度を保ちます。
これを十二分に発揮するのが国産い草と言えるでしょう。しかし、前述したように中国産の急追にあっています。 「国内産地が消えても中国産があるから大丈夫と考えがちですが、品質的には国産にかないません。つまり代替にはならないのです。国内産地が危機的状況にあることは確かですが、国産い草の優位性をアピールする製品づくりを進めている生産者が存在しています。これからもそうした生産者との関係を強め、生活用品政策の方針である『国内の地域資源を活用し、国内生産構造を維持・発展させる取組み』をさらに発展させて行きます」(前出・土樋課長)
生活の中で使われてこそ生きる「用の美」を象徴的に表している花ござ。国産品は中国原料の製品に比べて高いことは事実です。が、それは品質の高さの証明なのです。 なお、生活クラブのい草製品は25週企画で取組んでいます。