NON-GMトウモロコシの安定確保を目指して─中国の2産地を視察
生活クラブ連合会では提携生産者とJA全農など17名からなる視察団を中国に派遣、いまや遺伝子組み換え(GM)トウモロコシの作付け率が80%、GM大豆の作付け率が92%となった米国産地からの輸入のリスク分散を図るため、中国でのさらなるNON-GMO産地化の可能性を検証しました。その内容を視察に参加した生活クラブ連合会の福岡良行専務に聞きました。(2009年2月12日掲載)
2007年産までは中国はトウモロコシなどの輸出を停止
08年産から輸出が再開されるとの情報が
――今回の視察の目的は?
[福岡] 生活クラブ連合会は1997年から組合員に供給する加工食品の原料はもとより、畜産物の“源”ともいえる家畜の飼料からも遺伝子組み換え作物(GMO)を追放する試みを続けています。JA全農の力を借り、遺伝子を組み換えられていない(NON-GM)トウモロコシや大豆粕を分別流通しているわけですが、米国では急速にGMOの作付けが拡大し、2008年にはトウモロコシの80%、大豆の92%がGMOになってしまいました。今後もNON-GMOを安定して調達するために、産地の多元化を目指しています。これまで中国からは生活クラブの豚肉の生産者の(株)平田牧場がNON-GMトウモロコシを輸入してきましたが、昨年は中国からのトウモロコシの輸出が完全にストップ。中国にトウモロコシの提携産地を持つ平田牧場では米国産NON-GMOで対応しながら、中国政府に輸出枠を設けてほしいと要請を続けています。こうしたなか、昨年暮れに「中国が輸出を再開するかもしれない」との情報が流れ、この点を確認するのが視察の大きな目的でした。
――輸出枠とはどういうものですか?
[福岡] 中国ではトウモロコシ、小麦、コメの3品目を国家統制品目として位置づけ、その輸出は政府が「輸出ライセンス」を発給した企業だけが担っています。トウモロコシは中糧糧油有限公司(COFCO limited)と吉林糧食集団(JGG)など各省の糧食部が輸出できますが、この間、中国政府は国家備蓄を優先し、ライセンスを発給していません。このような状況のもと、平田牧場ではGMOの作付けがない中国産トウモロコシの日本への輸出を働きかけていました。
08年産のトウモロコシの輸出は50万tの見通し
t当たりの価格は国際相場の7000円高に
――それが実現しそうだと?
[福岡] そうですね。その可能性が見えてきました。NON-GMトウモロコシを入手するために、平田牧場では黒竜江省の鶏東で、JA全農では遼寧省の阜新で、産地との関係性を大切にしながら分別流通の仕組みを築いています。この点を中国側は大きく評価してくれました。今後も「特別なもの」との認識のもと、中国政府に輸出を申請する窓口になってくれるという意向を示してくれたのです。2008年の作柄は豊作で、最終的には「50万t」の輸出ライセンスが発給される見通しです。平田牧場の産地もJA全農の産地も全量を供給し、これからも契約栽培を続けていきたいとの姿勢を明らかにしてくれています。しかし、中国国内のトウモロコシ価格は米国産より1t当たり7000円も高い水準になっています。この価格で産地から全量を引き取るとなると、豚肉の価格が1kg40円もアップするのを覚悟しなければならず、米国産NON-GMOの比率を増やして価格のバランスを図るなどの対応策を協議しなければならなくなりました。
中国は自給のための食糧増産 自力でGM種子を開発
今後は安易な輸入は困難になるが――。
――やはりNON-GMOを手に入れるのは困難になるばかりのようですが、中国でもGM作物の導入に拍車がかかりそうですか?
[福岡] 今回の視察では中国の農水省にあたる中国農業部農業科学院作物科学研究所などを訪問し、情報収集に努めました。どの機関も具体的な内容には言及しませんでしたが、他国による種子の独占=「食」の支配を受けないために、自前のGM技術を開発し、着々と準備を進めていることは認めています。いま、中国の食糧総生産量は5億tですが、人口が16億人となる2020年には6億4000万tが必要になるとされています。それには何よりも食糧増産が求められ、GMOの導入は不可欠と中国政府は考えているようです。もちろん「もはや輸出どころではない」となるのも時間の問題です。私たちは飼料用米の生産拡大を進め、国内自給化を促進しながら「食」のNON-GMO化を追求していかなければなりません。今回の視察で中国の提携産地との継続的な取り組みへの展望も見えてきました。その可能性にかけていきたいと思います。