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"やっかいもの"から資源循環の主役へ 「耕畜連携」をめざす「堆肥学習会」を開催

牛・豚・鶏など家畜の排泄物は、畑を耕す農家にとっては大切な堆肥になります。畜産農家と米や野菜、果物の農家が、ともに堆肥の有効利用を考えようと、12月5日、生活クラブ連合会自主管理委員会主催で「第3回堆肥学習会」が開催されました。

耕作に使われなくなった堆肥

生活クラブの主要品目である牛肉、豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳は、家畜が飼料を食べて排泄物を出すという生命の営みのなかで生産されています。古来から、家畜の排泄物は堆肥として食料や飼料の農耕に生かされ、地域の中で資源循環が成り立っていました。ところが高度経済成長以降、畜産経営の大規模化や農家の高齢化、効率を重視した農業などによって、畜産堆肥を利用する農家が激減しました。

以前は堆肥として活用していた家畜の排泄物はゴミとなり、畜産農家はその処理に頭を悩ませることに。地面に穴を掘って埋めたり、野積みにして放置する農家が出てきて、水質の汚染や悪臭など、いわゆる畜産環境問題が発生してしまいました。

1999年、畜産排泄物を適切に管理し、排泄物を堆肥として利用することを目的に、「家畜排せつ物法(家畜排せつ物の管理の適正化及び利用の促進に関する法律)」が施行されました(5年間の猶予期間を経て2004年に発効)。この法律によって畜産農家は排泄物の処理、保管施設のための設備投資をしなければならなくなり、経営が圧迫される農家も出てきました。

生活クラブが進める“耕畜連携”

自主基準書

このように、畜産農家にとって家畜の排泄物は処理に手間もお金もかかる“やっかい者”。しかし、農産物生産者は土づくりのために家畜の糞尿を必要としており、彼らにとっては有効な「資源」と言えるのです。「畜産農家と農産物生産者の家畜排泄物に対する認識のギャップを埋めるキーワードが、生活クラブが推し進めている“耕畜連携”なのです」と、生活クラブ連合会品質管理部自主管理推進課の本間隆夫は話します。

家畜の排泄物を利用した堆肥を土壌にまいて、その土から作物や飼料が育ちます。飼料→家畜→排泄物→堆肥→土壌→作物・飼料→……という循環が、畜産農家と農産物生産者が結びつくことによって、可能になるのです。

生活クラブの「自主基準書?畜産基準」では、「生産物である肉や卵、牛乳は、“飼料”と“排泄物”の中間生成物である」と位置づけています。つまり、生活クラブの牛、豚、鶏が食べる飼料が安全なものであれば、肉、牛乳、卵も安心して食べられるし、排泄物も良質な有機肥料になる、というわけです。飼料の基準がNON-GMO(非遺伝子組み換え作物)やPHF(収穫後に農薬を使用しない)で抗生物質を使わないといった厳しいものになっている理由は、ここにあります。

「“耕畜連携”による循環型農業の課題はたくさんあります。畜産農家と農産物生産者との需給バランス、肥料の成分バランスの問題、特に重要なのは両者を結びつけるコーディネート機能の存在などです」と、本間は強調します。

もっと効果的に堆肥を使うために勉強

学習会の様子

この資源循環の仕組みがうまく成り立っている事例として注目を集めているのが、「生活クラブ山形親生会」(4/24の記事)です。平田牧場の豚の排泄物を完熟堆肥にして山形親生会の生産者に提供し、農家はその堆肥で土づくりをし、作物を育てます。遊佐町の米農家は飼料用米に取り組み、それを食べた平田牧場の豚の排泄物は、再び堆肥としてまた田んぼに還ります。

耕畜連携の動きは全国の提携生産者に広まっています。12月5日に生活クラブ連合会で開催した「第3回堆肥学習会」では、栃木県開拓農協、千葉県の旭愛農生産組合、平田牧場の畜産担当者が活動報告を行いました。

生活クラブの畜産物の一大産地である栃木県開拓農協の農畜産部次長の加藤効示さんは、「農産物生産者が求める堆肥と、畜産農家が供給する堆肥に少なからずギャップがある」と課題を報告。畜産と耕種農家がともに話し合いながら、実用的な完熟堆肥をつくるために研究を進めていると話しました。

旭愛農生産組合養鶏部会の赤座繁樹さんは、鶏糞堆肥を野菜の生産者に供給する約20年にわたる実績と、土壌診断を行い適切な施肥設計を目指す4年前からの取り組みについて報告しました。「鶏糞は窒素分が多いため、良質な有機肥料になります。ただし、有機肥料であっても入れ過ぎはよくない。土壌障害を起こさないためには、成分を分析して適切な使い方をしなければ」(赤座さん)

平田牧場の生産本部本部長補佐の木口孝義さんは、今年3月に山形親生会で行った「堆肥活用勉強会」の成果として、施肥設計をすることで、従来よりもかなり少ない堆肥の量で済む農家が出てきたと報告し、「今後は薄く広く、庄内地方全体に平田牧場の堆肥を供給していきたい」と展望を語りました。

堆肥を科学的に使おう

エコFIT

生産者の報告を受け、千葉県農業総合研究センター生産環境部土壌環境研究室の金子文宜室長は、「食料生産の基盤として物質循環を進めるための努力に敬意を評したい」と評価。そのうえで、堆肥の匂いをコントロールして完熟させるつくり方と、農産物の品種や土壌の性質、栽培期間などに応じた土壌診断による堆肥の施肥についてアドバイスを行いました。

また、主席研究員の斉藤研二さんは、千葉県農業総合研究センターで開発した施肥設計支援システム「エコFIT」を実演しました。各生産者の堆肥の窒素、リン酸、カリなどの成分を分析し、栽培する野菜や果物によって堆肥を与える量を計算。「今与えている量だとリン酸とカリが多すぎる」「足りない成分を補うには菜種の油粕を補うとよい」といったことがコンピューター上で一目瞭然で、生産者からは驚きの声が上がりました。

「自然界の物質循環を十分に理解し、これからは科学的な視野を持って堆肥を活用していくべき」と最後に金子氏が話し、生産者を激励しました。

今後も生活クラブでは、化学肥料に頼らない安全な堆肥づくりを畜産農家と農産物生産者とともに研究活動を継続的に進めていく予定です。

【2007年12月27日掲載】

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