評判の『緑茶チョコレート』は、私の初めての消費材開発でした。胸が高鳴ったのを、昨日の事のように思い出
当社は1901年、京都市下京区において京干菓子の製造で創業しました。現在、埼玉県草加市にある工場では主力のチョコレートを始め、チョコレート菓子、焼き菓子、ウエハースを生産しています。
生活クラブとは1990年秋から、『フィンガーチョコレート』『チョコレートウエハース』の生産・供給で提携を開始しました。当時の消費材規格書を見ますと、海外産の小麦粉や一般品のチョコレートを使用していましたが、現行品は改良を重ね、国産小麦粉の使用となっています。
2000年4月からは、市販にはない増粘剤不使用のパウンドケーキである『ココアのケーキ』、『いよかんのケーキ』、『ラムレーズンとくるみのケーキ』の取り組みを開始しました。通常、こういった類の具入り生地の場合、具の沈み防止と満遍なく焼き上げるため、ほとんどの市販品には増粘剤を使用していますが、当社は増粘剤不使用にこだわって生産・供給を開始しました。しかし、暫くすると、包丁で切るとボロボロする、しっとり感が欲しいなどの改善要望が組合員から少しずつ聞かれる様になりました。特に『ラムレーズンとくるみのケーキ』は、酷い状態でご迷惑をおかけしました。速やかに組合員からの改善要望に応えるべく、様々な改良案を検討しては試行錯誤を繰り返す中、課題であったボロボロ感やしっとり感の改善には寒天、こんにゃく粉を使用する事で効果がある事が確認できました。ようやく2009年1月分より順次、改善されたパウンドケーキを供給する事ができました。
「市販にない美味しさ!」と大評判の『緑茶チョコレート』の開発のきっかけは、生産者見学会に来た組合員の一言から開発が始まりました。
「私、お茶のチョコレートが好きなんです。消費材で開発して頂けないでしょうか?」
当社はOEM(相手先ブランド名による生産供給)の生産をしていますので、工場見学の当日は、市販品の抹茶チョコレートを生産していました。生産現場を目の当たりにした抹茶チョコレート好きの組合員から、切実な想いを私達に投げかけて頂いたわけです。早速、組合員達が帰られた午後から開発に着手しました。当時の私は、当社の平塚社長より生活クラブの担当を引き継いで間もない入社2年目で、自分自身で開発に携わった消費材は何一つありませんでしたので、自身初となる消費材開発の機会に巡り合い、胸が高鳴ったのを昨日の事のように思い出します。先ずは、ベースとなるホワイトチョコレートの手当てをどうするかでした。通常、私達が供給するチョコレート加工品は、生活クラブの提携生産者の月島食品製の『クーベルチュール』を使用していますので、月島食品に相談させて頂いたところ、「原料としての『ホワイトチョコレート』の供給の予定はない」との事でした。「それなら、『ホワイトチョコレート』から作っちゃおう」と意気込み、その後、数十ヵ月掛かりましたが、市販品では必ず入っている風味付けの香料や口解けを良くするための乳化剤を使わないホワイトチョコレートを完成させました。また、混ぜる緑茶は、これも生活クラブの提携生産者の新生わたらい茶の一番茶の粉末茶葉を使用しています。生産者交流会の時などによくクイズを出します。「配合している粉末茶は何%ですか?」と。正解は3.5%です。
平塚製菓入社以来、生活クラブを担当させて頂いて12年程になりますが、これまで何とか頑張れてこれたのは、おおぜいの組合員はじめ、生活クラブグループの職員の方々、提携生産者の諸先輩方々に出会え、叱咤激励、細やかなご指導、食に対するこだわりなど、数多くの事を教えて頂いたからです。皆様への感謝の思いでいっぱいです。これからも皆様に喜んで頂けるお菓子作りに真摯に取り組んで参ります。
(2010年5月掲載)
※掲載時期によりパッケージが現在のものと異なる場合があります