無添加の「からし明太子」の開発は、試行錯誤の連続でした。添加物は“魔法の薬”と言っても過言ではありません。㈱泰山食品商行
提携品目:からし明太子、ちりめんじゃこ
生活クラブとの出会いは、1968年頃、生活クラブ草創期の理事と弊社の社長との出会いから始まったそうです。当時は煮干やひじき等を納入し、その量は徐々に増えてきましたが、1973年の石油ショック時にさらけ出た日本生協連のコープブランド依存の危うさを教訓として、生活クラブは消費材の独自開発の道を歩む事になりました。しかし、その波紋は、弊社を直撃しました。生活クラブは消費材開発の視点として、原料の由来が明確であることや、産地直接提携などを基本に生産者との関係を全面的に洗い直すことになり、水産加工品も品質のばらつきや、油焼けなどが発生した場合、問屋では調査や追跡能力がほとんどない、また、流通経費などにも差が出る等の理由から問屋とは提携を止める方針が出され、その中に弊社も入っていましたが、消費材に対する企画能力の高さからなんとか提携が継続されました。
生活クラブでは、北海道の古平町水産加工協と提携し、「たらこ」を取り組んで以来、からし明太子の開発が、しばしば話題になっていました。しかし、北海道は原料たらこの供給地とはいえ、その食文化の地ではありません。1987年、生活クラブより添加物を入れないで安心して食べられる明太子の開発要請が弊社にありました。そこで歳月をかけて開発するわけですが、弊社の提携先であるイリイチ食品との共同開発で、試作品の開発は試行錯誤の連続でした。食品添加物を使わないからし明太子は市場には出回っていません。無添加が受け入れられる時代ではありませんでした。
原料のたらこは、皮の厚さがバラバラで薄いものは身が軟らかい為、身締め剤のリンゴ酸ナトリウムを添加することが業界常識でした。ところが無添加では、塩分濃度で調整しなければならなくなり、8%なら「食べ頃」の味になるが、身は軟らかいまま。12%なら身は締まるが塩辛い。化学調味料を使わずに原卵の持っているアミノ酸を引き出すための熟成時間も夏は96時間、冬は120時間とその時によって多少違ってきます。この様に課題は山積で、一つクリアすれば次の難問と、試行錯誤の連続でした。
最近ではスーパーなどで、「完全無着色」とか、いかにも添加物を使用していないかの様な表示で販売されている明太子も多く見かけますが、完全無添加品はあまり無いようです。からし明太子は朝鮮半島から戦後、九州方面に入ってきた食品です。現在では日本独特の製法で味付けされるのが普通です。市販品の明太子は、疑わしい添加物を使用し、不自然な色に化粧をして製品化されています。無添加では明太子の原料に使えないたらこでも、添加物を使用することで一番状態の良い完熟の卵と一見同等の製品に仕上がるのです。着色料だけでなく、身締め剤のリンゴ酸ナトリウム、発色剤の亜硫酸ナトリウム等の添加物を使う事により、身を固めたりして見た目を整えるのです。原料価格の安いたらこでも添加物を使うことで価格の高い製品に化けるのです。見た目、形が良くなる添加物は、まさに“魔法の薬”と言っても過言ではありません。からし明太子になぜ多くの添加物を使うのかというと、このように見かけ優先と利益が多く出るからです。これは業界の常識です。組合員の皆さん、常識に捕らわれないようにしましょう。当然、添加物の身体に与える影響を考えると恐ろしいですね。
弊社は、魚介類の加工生産者です。国内の魚、魚種によっては輸入魚を含め産地漁場を明確にし、製造から品質管理まで一貫した指導を行っています。現在、生活クラブで取り扱っている消費材は、からし明太子、ちりめん関係、干物、漬魚等ですが、資源保護、環境、鮮度、美味をかぎりなく追求し、挑戦していきたいと考えています。
ところで、消費材という言葉をご存知ですか? 生活クラブの言葉です。一般では商品と言っていますが、商品はメーカーの利益のために、必要であろうがなかろうが大量に生産され、必要がなくなれば廃棄してしまうのです。一方、生活クラブの消費材はすぐに販売する事はできません。それは、不要なものは使わない 使わないためにはどうしたら良いのかを話し合い、幾つものハードルをクリアし、思いを込めて作られていくからです。
生活クラブは、「より良いものを、より安く手に入れる」ことを目指しているのではなく、「安全、健康、環境」の生活クラブ原則のもと、生産から消費までを明確にできる確かな消費材づくりをしています。弊社もこの考えをもとに、消費材づくりに励みたいと思っております。
(2010年2月掲載)
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