信念を持って「飼料用米」を続けられたのは、生活クラブの皆さんと一緒に培ったネットワークがあったからです。㈱平田牧場、㈱平牧工房
提携品目:ポークウインナー、豚肉 他
平田牧場の成り立ち
私の父親(現会長)は昭和8年生まれで、高校卒業後、大学の先生に「やがて米が余り動物タンパクの時代になる」と聞き、昭和20年代後半に養豚を始めました。会社は私が小学校に入学する昭和39年に創業しました。生活クラブとのお付き合いは昭和48年、当時赤堤にあったバラックのような事務所を訪ねた翌年、ポークウィンナーの供給からです。
添加物を使わない“無鉄砲ソーセージ”
当初は地元の鶴岡生協はじめ東北の各生協からの依頼で、品質の良い豚肉で着色料を使用しない無添加ソーセージを作っていました。魚肉原料の赤いソーセージが当たり前の時代に、着色料を使用せず、混ぜ物のない無添加のオールポークソーセージを組合員に食べてもらいたいと思ったわけです。ところが、店舗が主体の東北の生協では見た目が大事で、日持ちがしなく赤くないウインナーは全く売れませんでした。全く思いが届かないわけです。そんな状況で毎月倒産の憂き目に遇いながら、豚の内臓を処理して給料を払ったと聞いています。
生活クラブとの出逢い
その頃、前衆議院議員・阿部昭吾さんの紹介で生活クラブ生協と出逢いました。いきなり5tのウインナーを注文いただきましたが、ネト(腐敗してネトネトすること)を発生させてしまい全量廃棄処分となりました。生活クラブの凄いところは「添加物を使わないから腐った。だからもう一度やり直して取り組もう」とすべて前向きに考えるところです。そこで最低限の保存料(ソルビン酸)を使って生産することになりました。(現在のポークウインナーは無添加です)
業界常識の壁
昔は発色剤(亜硝酸塩)と塩で塩漬しないとハムと呼ぶことができませんでした。「無塩せきハム・ソーセージ」は生活クラブが先駆者となって勝ち取った言葉です。メーカーは添加物をいっぱい使って作った商品を消費者に買わせることが仕事で、消費者が望む消費材を生産することは業界では常識ではなかったわけです。生活クラブは情報を開示して、こういう添加物を使ってないから日持ちはしませんと言って供給してきました。
1頭買いを通して「自主運営・自主管理」を実現
また「豚肉の1頭買い」は、組合員が自ら考えて行動する「自主運営・自主管理」を象徴する画期的な取り組みとなりました。当時の職員の「まだ早い」という反対を押し切った組合員さんの主体性と熱意こそ、生活クラブの精神だと思います。
36年続く庄内交流会
庄内交流会は今年で37回を数える大交流会ですが、毎年全国から100名近い組合員の皆さんが庄内の生産者をくまなく見て回ります。豚舎を見て「餌はどこから来るのですか」と質問されますが、その都度「輸入」と答えなければならず、何とか飼料を自給できないかといつも考えていました。そしてついに減反田を利用した飼料用米に行き着いたのです。
こめ育ち豚を世界に冠たる豚に
ところで、スペインのイベリコ半島には世界一美味しいと言われる生ハムがあります。4年ぐらい前、生活クラブ連合会の加藤会長と一緒に視察に行って来ましたが、豚がどんぐりを食べているんですね。日本のどんぐりと違い油分が多く大変おいしいどんぐりです。地産地消を考えれば日本では米しかないと考えていたのですが、当時は米をただ豚に与えていただけでした。ところが組合員に届けるために改めて試食したところ、お米を与えた豚肉は、脂質がすこぶる良くなり、あっさりと甘く大変美味しかったんです。そこで俄然やる気になったわけです。これはイベリコに勝てるかもしれない。日本の豚は世界に冠たる豚になれるかもしれない。実際にそういう豚になったと思います。
本当にいい豚肉
本当にいい肉は、筋繊維が細かく、脂質が良い肉です。口に入れると、白身である脂がくどくなくあっさり甘い。牛でも鶏でも魚でも一緒ですね。いくら霜降りが入っていても、脂が美味しくないと美味しくない。それから赤身は非常にさっくりして食感がいい。私も仕事柄毎日豚肉を食べます。朝はソーセージ、昼はとんかつ、夜はしゃぶしゃぶ、焼肉のように3食豚肉を食べますけど豚肉は全く食べ飽きない。豚はすべての料理に相性が良くソーセージからハムから、しゃぶしゃぶ、ハンバーグ、唐揚げ等和洋折衷、なんでも相性が良い。さらにお米を食べさせると脂質が、さらにあっさりとした上品な甘みが出ておいしくなり、なおかつビタミンなど栄養も抜群で本当に素晴らしい動物たんぱくだと思います。
生活クラブで実現したモデル
私たちが信念を持って飼料用米の取り組みを続けてこられたのは、生活クラブの皆さんと一緒に培ったネットワークがあったからです。そして消費者と生産者が手を取り合って国内の自給力を高めるという画期的な運動は、いまや国内農業の食料自給力向上のモデルと高く評価されています。政治家や生産団体、マスコミ取材等が全国から庄内に押し寄せ、うれしい悲鳴の1年となりました。お米は究極のNON-GMO食品です。生活クラブや我々生産者が拡大すればおのずと日本の自給力が上がります。社会にとってはこんな良い取り組みはありません。素性が明らかなお米で育てた、安全でおいしい三元豚、金華豚で生活クラブの輪がもっともっと拡大していけばと思います。
(2010年1月掲載)
※掲載時期によりパッケージが現在のものと異なる場合があります