戸隠では「そば」の栽培にも力を入れています。将来は地元のそばの実で作りたいです。(三浦 知彦さん)
生活クラブとの最初の出会いは、1978年ですので、おかげ様で約30年が経ちました。まずは食べ続けて頂いている組合員さんに感謝申し上げます。そして生活クラブに関わる一生産者として消費材を作り続けていく事への大きな責任を感じています。
当社(株)おびなたは、1959年に法人設立され、そばの名産地である戸隠高原の地において、そばの栽培から製粉、製麺まで一貫して行っている会社です。創業からは、約58年が過ぎましたが、半分以上を生活クラブと共に行動していることになります。
当社の工場がある戸隠は、長野市の中心部から北西約15kmに位置する戸隠山、飯綱山等の山々に囲まれた標高約1000mの地にあります。昼夜の温度差が大きく、夏でも霧に覆われるなど、良質な玄そばが採れる環境にあります。この様な環境の中、そばを作り続けてまいりました。
生活クラブとの提携のきっかけとなった戸隠そばは、組合員さんの「本物のそばを食べたい」という強い思いから、当社に声をかけて頂き、開発がスタートしました。開発が始まった頃の一般品といえば、そば粉の比率が三割以下、原料も外国産のものがほとんどでした。
開発にあたり一番の問題は、やはりそば粉の配合率でした。五割、六割、七割、八割とそば粉の比率を変え、また麺の太さを変えたものの試作・試食を行いました。最終的に目隠しテストを行い、消費委員会の組合員モニターによって、そば粉七割の本物志向の「戸隠そば」が出来ました。生産者としては、実際そば粉の比率が高くなれば、食感としてはボソボソとした感じになり、食べにくいのでは?と心配した思いがあります。しかし私たち生産者としては、本物のそばを食べようという意気込みは、非常に嬉しい事でした。
乾そばというとそば粉の比率ばかりに目がいきがちですが、実はつなぎに使用している小麦粉も非常に重要です。国産小麦粉は、外国産と比べグルテンが低いので、製麺しにくいのです。これは、そば粉の比率が高くなればなるほど難しくなってきます。戸隠そばも当初は一部、外国産の小麦粉を使っておりましたが、組合員さんの声を反映し、2003年にリニューアルを行い、全て国産になりました。また、現在は、そば粉の風味と食べやすさを両立させるため、風味の落ちにくい石臼挽きのそば粉を使い、そば粉の比率を五割にしています。この様な形で戸隠そばは進化してきました。最近のそばの現状を少しお話しさせて頂きます。そばの国内自給率は、約30%弱といわれています。国内で消費されるほとんどが外国に依存している現状です。農林水産省の統計では、人口4000万人台であった明治の中頃は、そばの生産量は13万tもあり、国内自給率は100%。1人当りのそば粉の年間消費量は約2kgでした。現在は0.74kgです(少ないですね)。実に明治の頃は、今より約3倍のそば粉を食べていたわけです。
当社では、国内自給率を上げる、また戸隠そばを守るという事を目的に農業生産法人を5年前より立ち上げ、そばの栽培に力を入れています。近隣の農家の方のご協力もあり、現在は約25haの広さにまでなりました。将来的にはこれを100haまで広げていきたいと思っております。現在は、まだ消費材に使用するところまで収穫量が多くはないですが、将来的には地元で収穫されたそばの実を使い、消費材を作れればと考えております。
また、「GMOフリーゾーン」に賛同し、本社前にある自社のそば畑に「フリーゾーン」の看板を設置しました。フリーゾーン宣言をする事で、地域へも情報発信を行っていきます。次の世代に伝える為にも。
そばは、65日程度で収穫される穀物です。農薬は全く使いません。また栄養価的にも非常にすぐれているので、成人病の予防にもなると言われています。食べ方も色々あり、サラダやスイーツにもなります。これからもどんどん組合員さんへ新たな食べ方などを提案していきたいと思います。
最後になりますが、生活クラブの消費材は常に進化していきます。生産者交流会などを通じて、組合員さんの生の声に真摯に取り組む事が、我々生産者の責務です。今後も色々なご意見を頂ければと思います。
(2009年10月掲載)
※掲載時期によりパッケージが現在のものと異なる場合があります