強火の白焼工程と自信のタレで、「うなぎ」本来の味が楽しめます。(桑高 毅人さん)
組合員の皆さんには、まだ、静岡うなぎ漁業協同組合と言われてもピンとこない方も多くいらっしゃるかと思います。当組合は2008年4月1日に焼津養鰻漁業協同組合(焼津市)、丸榛吉田うなぎ漁業協同組合(榛原郡)、大井川養殖漁業協同組合(旧大井川町)、中遠養鰻漁業協同組合(磐田市)の4つの養鰻組合が合併し、誕生しました。合併したいきさつは、旧単協では漁業協同組合と認められる養鰻家(池)の人数がなく、合併か解散という選択を迫られ、"「うなぎの静岡」復活"養鰻振興の推進"を目指し、発足しました。
静岡県は過去に日本一のうなぎの産地として栄えていました。ピーク時には国内生産量の90%を東海地区で生産しており、その中の70%が静岡県でした。なぜ静岡県でうなぎの養殖が盛んに行われていたのかと言いますと、気候が大変穏やかであり、なおかつ養殖に必要不可欠な水が豊富にあったという事。また、浜名湖や駿河湾沿岸でうなぎの稚魚が採れた事。さらには焼津は巨大漁業基地として栄えており、水揚げされる新鮮なカツオ、サバを餌として使用出来た事が他産地と違い良質なうなぎ作りが出来た要因です。しかし、突如発生した病気や中国、台湾からの大量な輸入により相場が乱れ、生産コストを無視した価格設定により廃業が相次ぎ、その後、静岡県を含め日本国内の養鰻業界は年々縮小をしていき、現在に至っています。
1991年に生活クラブと出会い、旧焼津養鰻漁業協同組合が神奈川、千葉単協(デポー)と翌年から取組みをする事になりました。きっかけとなったのが生活クラブの組合員が「土用丑の日」に、取組みのない一般品のうなぎを食べていたという現実。そして、「生活クラブのうなぎを食べたい」という組合員の要望でした。皆さんご存じかと思いますが、当時は養殖=薬漬けという時代でした。当組合では健康なうなぎ作りを念頭に置き、極力水産医薬品に頼らない養殖をしていました。養鰻家(生産者)が少なかったからこそ出来た事です。その事が認められ、生活クラブとの取組みが始まったのです。
現在は消費材として、長蒲焼き、カット蒲焼き、さっぱり焼き、きざみうなぎの4種類があります。消費材と一般品の大きな違いは2つあります。
まず1つ目は白焼の工程です。一般品に比べて火を強く入れており、うなぎの持つ川魚特有の臭みを消しています。強く焼く事によりうなぎ自身の持つ余分な脂や水分を飛ばし、うなぎ本来の味を楽しんで頂けます。当組合では外せないこだわりの工程です。
2つ目は蒲焼に使用するタレです。タレは無添加・無着色はもちろん、GM対策済でもあります。また、味に関しても何度も試行錯誤を重ねて作り上げた自信のタレです。一般品では見た目重視のタレを使用している蒲焼が多く、タレにアミノ酸や着色料を使用し、解凍した蒲焼を冷蔵庫で2~3日置いても、色が落ちないタレを使用している物等が多く見受けられます。ちなみに無添加のタレを使用した蒲焼は2~3日もすれば、タレの色が薄くなり、一般的に見て色が悪い蒲焼になってしまいます。まだまだ一般量販店では、この見た目重視のタレが好まれており、一般消費者の方も見た目が綺麗な添加物入りの蒲焼を購入していく人が多いのが現状です。実際に「おたくのうなぎは食べれば美味しいけど見た目が・・・」と言われる事が多々あり、その言葉を聞くたびに大変悔しい思いをしています。しかし一方、生活クラブの組合員の皆さんからは、「おたくのうなぎはすごく美味しいよ」と言う声を沢山聞かせて頂いています。「自分たちの物作りに対する思いは間違っていないんだ」と胸を張って言える自信をもらい、いつも感謝をしています。
7~8世紀に編集された万葉集の中で、大伴家持が「石麻呂に われもの申す 夏やせに よいといふものぞ むなぎとりめせ」という歌があります。この歌は、夏場の暑気に当ってさらに夏やせした石麻呂を見かねた家持が、「うなぎは夏やせに効くと聞いている。うなぎをとって食べたらどうだ」と薦めている歌です。この歌からもわかる通り、当時からうなぎは夏バテに効く、体に良い食べ物であった事が理解出来ます。実際にうなぎにはビタミンB群が豊富に含まれており、疲労回復に一役かっています。遠い昔より日本で食べられている"うなぎ"という食材を守りながらより多くの人に食べて頂けるよう、これからも皆さんと一緒に美味しいうなぎを作り上げていきたいと思います。
(2010年9月掲載)
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