「第6回GMOフリーゾーン全国交流集会in阿波」を開催
2月26日~27日にかけて、徳島県徳島市で「第6回GMOフリーゾーン全国交流集会in阿波」(主催:遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン)が開かれ、全国でGMOフリーゾーンを進めている生産者、生協、消費者団体など約450人が参加しました。国内のフリーゾーン面積は昨年から約1万3100ha増え、6万8672haになりました。集会には生活クラブの組合員ら約30人のほか、JA庄内みどりから3人が参加、各々の代表がGMOフリーゾーン運動の現状を報告しました。(2011年4月14日掲載)
持続可能な食と農が生物の多様性を守る
「GMOフリーゾーン」は遺伝子組み換え作物が存在しない地域を指し、生産者は自らの意思でGMOの栽培をはじめ流通なども拒否します。1999年にイタリアで始まった運動は世界に広まり、日本では2005年に滋賀県高島市の「針江げんき米栽培グループ」が最初の宣言を行いました。この動きをさらに拡大していこうと、GMO交流集会が毎年行われるようになり、今年は6回目になります。
全体会は、実行委員・春日洋さんの「日本や世界にGMOフリーゾーンを広げて埋め尽くすために情報を共有し、団結の場になることをお願いしたい」との開会挨拶で始まりました。続いて、昨年10月に生物多様性の持つ可能性を幅広く周知したいとの目的から、「自然と共生する農業サミットin小松島」を開いた小松島市の稲田米昭市長が「生物多様性農業を推進し、本当に喜ばれる安全・安心な農産物が生産される産地として小松島市の農業が発展していくよう、取組んでまいりたい」と歓迎の挨拶をした後、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン代表の天笠啓祐さんが昨年10月、名古屋で開かれた「生物多様性条約第10回締約国会議」(COP10)、「カルタヘナ議定書第5回締約国会議」(MOP5)の成果と課題について基調報告を行いました。
「生物多様性条約」は1992年6月、ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開かれた国連環境開発会議(地球サミット)で「気候変動枠組み条約」とともに署名・成立しました。翌93年に発効し、94年からほぼ2年ごとに締約国会議が開かれています。締約国の会議の略称が「COP」です。この条約では、生物多様性に悪影響を及ぼすおそれのある遺伝子組み換え生物の取り扱いについても検討することが決められました。これを受けて、コロンビアのカルタへナで開かれた特別会議でその内容が討議された後、2003年に遺伝子組み換え作物などの輸出入時における国際協定「バイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書」が発効しました。議定書の締約国会合の略称が「MOP」です。
天笠さんは報告のなかで、遺伝子組み換え作物の混入による影響で、オーストラリアの農家が有機認証を取り消されるなど、すでに経済の破壊が起きているケースをいくつも紹介しながら、「遺伝子組み換え作物は種の壁を破壊し、生物の多様性も破壊している」と指摘。また、カルタヘナ議定書が各国に制定を求めた国内法のうち、日本は予防原則を採用していないことや、生物多様性の影響評価についても対象を野生生物のみに限定し、農業や人の健康が対象とされていないことなどの問題点を明らかにしました。そのうえで天笠さんは、貿易の自由化とTPPがもたらす悪影響に言及し、「持続可能な食と農が生物の多様性を守る」と訴えました。
遺伝子組み換え技術の問題の報告が
全体会での現地報告は、生活協同組合連合会コープ自然派徳島理事長の環滋子さんが「食と環境を守るコープ自然派の取組み」と題して行いました。同連合会は「遺伝子組み換え技術によって生産された作物・食品の取扱いを行わないことを原則とします」などの基本姿勢を1998年に決め、署名活動やGMナタネの自生調査、GMイネ反対運動、さらには各地でGMOフリーゾーン運動を展開してきました。その一方で、2006年から小松島市の協力で「生物多様性農業と田んぼの生き物調査」を、2011年には同市と「環境共同宣言」を行うなど、持続可能な社会の実現をめざした取組みを続けています。環さんは報告の最後を、「GMOフリーゾーン運動は農業、環境、私たちの暮らしを守ることにつながります。持続可能な社会を目指してさらなる挑戦をしていきたいと思っています」と締めくくりました。
今回の全国交流集会では、兵庫県豊岡市長の中塚宗次さんが「コウノトリと共に生きる~豊岡の挑戦~」を、京都学園大学教授・金川貴博さんが「遺伝子組み換え技術の基本的問題点」について特別報告をしました。
豊岡市は、2005年にコウノトリの放鳥に初めて成功したことで知られています。この過程で豊岡市は「環境創造型農業」に取組むと同時に、「持続可能性」「地域が経済的に自立する」「誇り」をキーワードに、環境と経済が共鳴するまちを目指した取組みを進めています。中塚さんは「どの分野なら田舎で経済が活性化するかといえばそれは環境です」とし、食について「これまで求められてきたことは安全、安心、美味しいでしたが、これからは生物多様性の保全がプラスされる」と断言しました。
金川さんは、遺伝子組み換え技術の歴史やそれがどのような技術であるかなどについて基本的な解説をしたうえで、この技術でもっとも心配な問題として、予想外の物質を生産することと半端なタンパク質を生産することを指摘。「遺伝子組み換え生物は自己増殖するので予想外の場所へも広がり、根絶は不可能です。危険とわかったときは手遅れなので予防が重要で、そのためには、皆さんが遺伝子組み換え作物いらないという声をあげることが大切です」と呼びかけました。
四国・関西でフリーゾーンが大幅に増加
GMOフリーゾーンの面積は年々、増えています。総面積は2011年2月10日現在で6万8672haになりました。これは日本の耕作面積の約1.5%に相当します。今回の報告で特徴としてあげられたのは四国、関西で大幅に増えたことでした。特に全国集会の開催地となった徳島県は約6800haに増え、北海道に次いで2番目の登録面積になりました。この他、沖縄で初めての登録があったこと、海のフリーゾーン、牧場のフリーゾーンに続く「森のフリーゾーン」が宣言されたことなどが報告されました。
生産者のリレーメッセージには14団体が登壇し、力強いメッセージを発しました。トップバッターは昨年、第5回の全国集会が開催された山形県遊佐町のJA庄内みどり遊佐町共同開発米部会の阿部浩さん。米づくりの現状を紹介するとともに飼料用米や大豆、さらになたねを栽培することで自給率向上などに取組んでいることを報告しました。
生活クラブは、生活クラブ連合会のGM食品問題協議会の寺嶋明美さん(愛知単協)が生活クラブと提携する生産者を含めてフリーゾーン宣言した面積は約4万6000haにのぼっていることを紹介。そのうえで、埼玉、長野、栃木、北海道、静岡、大阪、神奈川での具体的取組み内容を報告し「全国にもっとフリーゾーンが広がり、日本中がフリーゾーンになるように今後も積極的に活動をしていきましょう」と呼びかけました。
全体会では、現在、宮崎大学で進められている「GM綿栽培実験」に反対するアピールがあり、最後に、次のような大会宣言を採択しました。
今日、ここ阿波に集まった私たちは、世界の人々と連帯して、GM作物栽培拒否地域を広げ、自治体でのGM作物栽培規制条例の制定を後押ししていきます。GMОフリーゾーンの輪を広げることで、食料主権を確立し、地域固有の農と食文化を守り、食の安全と生物多様性を守ります。 |
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