冷凍野菜の生産者の視察交流を実施
生活クラブでは青果と合わせて冷凍野菜の利用を通じ、国内自給を高めることをめざしています。そのためのトレーサビリティの確立は重要な課題です。5月27日から2日間にわたり生活クラブ連合消費委員や青果部会員4人が宮崎県を訪れ、冷凍野菜の取組みで提携する生産者との視察交流を行いました。(2011年6月20日掲載)
青果の提携生産者がつくる冷凍野菜
「2年越しでようやく宮崎の地を訪れることができました。生活クラブは消費材を食べる組合員自らが生産者のみなさんに会い、生産現場を視察しながら交流を深めています。今回は34万人の組合員を代表して4人がまいりました。冷凍野菜は原産地などトレーサビリティが問われています。青果の提携生産者でもあるみなさんの野菜を原料にしてつくられる冷凍野菜は、たいへんおいしいと思っています。原料となる野菜の畑や製造工場を確認させていただくことで相互の信頼関係を築き、冷凍野菜を利用することが農業基盤の強化につながるよう、食べる意味についても話し合いたいと思います」
生活クラブ連合消費委員の木村庸子さんは5月27、28日の両日にわたって宮崎県小林市、綾町で行われた「冷凍野菜生産者視察交流」でこのように挨拶しました。
この視察交流は、実は昨春に計画されていました。ところが宮崎県で口蹄疫が発生したために畜産生産者への影響などを考慮して、1年延期してようやく開催されました。
2008年度に冷凍野菜の産地偽装問題が起こったことを受け、生活クラブでは冷凍野菜の再開発方針を策定。以下のような基本方針を決定しました。
- 冷凍野菜原料のトレーサビリティの確立と安全性を追求します。
- 自給力の向上とリスク分散のため、国内に凍菜工場を複数配置します。
- 産地特性に合った青果の活用と消費動向に対応した品目展開を追求します。
- 市販品に対峙する優位性の形成
- 持続的生産と消費の関係を構築するため、計画的生産と計画消費の関係を追求します。
- 原料産地表示や産地情報についての情報開示を進めます。
- 加工食品原料用の冷凍野菜の開発を進めます。
この基本方針のもと、青果の提携生産者でもある(株)西日本ファーマーズユニオンと昨年から冷凍野菜の取組みを始めたのです。
新燃岳の影響を克服したほうれん草
西日本ファーマーズユニオン取締役の鳥越和廣さんは、同グループが製造する冷凍野菜について「原料となる野菜をだれがどこでどのようにつくっているかがきちんとわかるのが特徴です」と話します。
冷凍野菜工場は綾町にある(株)綾・野菜加工館。青果の提携生産者の西日本ファーマーズユニオンの一員でもある生産団体です。
「冷凍野菜づくりはあちこちから原料を買い集めるのが一般的ですが、綾・野菜加工館は農家がつくった会社なので栽培から冷凍加工まで一貫しています。また、多くの工場が野菜をボイルして加熱するのに対し、うちは蒸す方法を採用しています。ですから、素材の味が生きているのです」
このように綾・野菜加工館の専務取締役の税所篤三郎さんは説明します。
原料となる野菜の供給は綾・野菜加工館を設立した小林市にある西日本ファーマーズユニオングループの(有)丸忠園芸組合です。小林市と綾町は隣接しているため、葉物のように鮮度が重要な野菜は午前中に収穫しその日のうちに、午後収穫したものは翌朝に、冷凍処理することを綾・加工館は基本的としています。
視察した日は小松菜の冷凍加工が行われていました。(1)品種は加工専用のものがあること、(2)歩留まりは6割程度で加工に使えなかった部分は肥料工場に運び、たい肥となって畑にもどってくること、(3)洗浄選別から製品化まで約15分程度で鮮度を保つ工夫がなされていることなどが分かりました。また、工場が稼働したことで約70人の雇用を地域で生み出すことができ、それが農村地域にとっては非常に重要であることがわかりました。
ところで宮崎県といえば最近こそ小康状態ですが、気になるのが新燃岳の影響です。1月26日から2月14日頃の噴火により県内では車のガラスが割れるなど多数の被害がありました。
丸忠園芸組合・会長の税所篤朗さんは、畑への被害を次のように語ります。
「この地方はほうれん草の産地として有名なのですが、育ち始めたほうれん草の畑に10cmほど火山灰が積もったところもありました。当時はどのくらい被害が出るか戦々恐々としていましたが、火山灰の酸性度が低かったので、畑の土にすきこんで植え直したところなんとか無事に育ってくれました」
生活クラブでは前述の冷凍野菜の再開発方針に基づき、全国農協食品(株)と提携して茨城県産の「冷凍ほうれん草」を取り組んできました。しかし、東日本大震災により、供給ができなくなりました。そこで、28週より西日本ファーマーズユニオンを提携先に丸忠園芸組合で栽培、綾・野菜加工館で製造された「冷凍ほうれん草」を代替品として取組みむことになりました。
視察交流を行った木村さんは「市販の冷凍野菜は海外産で不安とか、おいしくないというイメージがありますが、ここでつくられる冷凍野菜は原料産地が明らかで鮮度がよいことが分かりました。国内の自給力を向上させるためにも青果とともに食べていきたいと思います」と語ります。
そして、西日本ファーマーズユニオンの鳥越さんは「生活クラブの組合員のみなさんと交流を深めていき、農業や食べ物、環境のこと、生産や消費、社会のあり方などをいっしょに考えていきたいと思います」と、今後も提携関係を深めていくことに期待を寄せています。
生活クラブでは冷凍ほうれん草と同じ28週に「冷凍にんにくの芽」、「冷凍きざみねぎ」、29週には「冷凍ごぼう(ささがき)」など西日本ファーマーズユニオンと提携した冷凍野菜を取り組んでいます。いずれも産地やつくり方が明らかになった野菜が原料です。