重茂の「フォーラムの森」の草刈りと、復興後押しのバーベキュー企画におおぜいが参加
震災と直後の大津波で甚大な被害が起きた岩手県宮古市の重茂地区ですが、7月30日に「シャボン玉フォーラムin重茂」を記念した「フォーラムの森」の草刈りと、復興を後押しするバーベキュー企画が行われました。バーベキューには地元重茂地区だけではなく、隣接する地域の住民や生活クラブ関係者ら総勢760人が参加。重茂と生活クラブが一体となり夜が更けるのも忘れてこれまでの、そしてこれからのつながりを確かめ合いました。(2011年9月2日掲載)
「フォーラムの森」で草刈り
昨年5月、岩手県宮古市の重茂地区で協同組合石けん運動連絡協議会(協石連)の主催による「シャボン玉フォーラムin重茂」が開かれました。その時のテーマは「森・川・海をつなぐ循環社会」。テーマを表現するための特別企画として「フォーラムの森」に1500本の苗木の植樹を行い、後世にも語り継ぐことをひとつの目的にしました。
「フォーラムの森」はその後重茂漁協が管理し、協石連に参加する生協の組合員が下草刈り体験をはじめとした林業体験を行ってきました。しかし、3月11日の地震と津波は容赦なく重茂にも襲い掛かり多くの人命を奪い、家も奪い去りました。
「フォーラムの森」の草刈りは重茂の人々を中心に行う予定でいましたが、復旧と復興に向けた動きに身動きが取れません。そこで生活クラブ岩手が中心となり草刈りの行動を広く知らせて参加者を募りました。
重茂はいま復興に向けて大きく動き出しています。その息吹を感じ、森の育ちを確認する意味を込めて、7月30日に草刈りが企画されました。
草刈りのスタートは午前7時半。前夜から重茂漁協本部に泊り込んだ部隊に、生活クラブ山梨や生活クラブ親生会など当日到着組を含めて総勢は約100人。あいにくの小雨模様。しかし、生活クラブ岩手専務理事の大木敏正さんの「小雨でも決行、とにかくやる」の一言で作業は始まりました。
頭にタオル、長靴、合羽などで身を包み、鎌やチェーンソーで桜やねむの木、欅(けやき)の苗木に陽があたるようにします。草刈にかかった時間はおよそ2時間。慣れない作業に「早くも筋肉痛」というメンバーもいましたが、苦闘の末に切り開いた「フォーラムの森」を振り返り、参加者は次の再会を誓い合いました。
重茂も生活クラブも「目いっぱい楽しんだ」
そんな「フォーラムの森」の草刈りが行われた当日の午後5時。夕闇が迫る頃から重茂漁協会館前の駐車場で「大バーベキュー大会」が開催されました。
重茂中学校の生徒17人による「とどヶ崎太鼓」に続いて、山梨からバスで駆けつけた生活クラブ山梨の太鼓クラブ「らん・La・乱」の6人によるオープニング演奏で始まった「大バーベキュー大会」。
この日の準備を着々と進めてきた生活クラブ岩手理事長で実行委員長の熊谷由紀子さんは、開会をこう宣言しました。
「企画するにあたって雨はないと信じていました。ところが朝起きてみると雨。それでもバーベキュー大会までには絶対晴れると信じていたら、本当に晴れました。食べ物をたくさん用意しています。目いっぱい食べて楽しんでください」
乾杯の音頭は重茂漁協組合長の伊藤隆一さん。生活クラブの物心にわたる支援活動に謝意を表すとともに現状を報告し「来年春には、生活クラブに肉厚わかめを届けられるように頑張っています」と強調、さらに原発事故と放射能汚染に触れこう呼びかけました。
「風評被害が起きる恐れがあるという声があるなかで、生活クラブと一緒になって六ヶ所再処理施設の稼動に反対する運動を展開してきました。今回、原発事故が起きたことで初めて私たちの主張が正しかったことが証明されました。今後も反対運動を継続させます。生活クラブと一緒になって安全な生活が送れるように手を取り合って頑張ることを誓って乾杯しましょう」
この頃にはすでにバーベキューや焼おにぎりの前には長蛇の列。子どもたちは会場内をところ狭しと走り回り、わたあめの前では「まだか、まだか」という表情で順番待ち。会場のアチコチで、バーベキューとビール片手にお互いの近況を話し合う姿もあれば、車座になって“目いっぱい楽しんでいる”漁師の面々も。櫓(やぐら)や提灯といった派手な飾りはないものの、会場はさながら盆踊り大会と生活クラブの大試食会を足してさらに2乗する様相を呈していました。
食事と懇談の後はステージで子ども向けのクイズや有名歌手に漁協職員や生活クラブ組合員が扮した歌謡ショー、さらには漁協女性部のダンス「どうにもとまらない」等、拍手と笑いの渦が会場を埋め尽くしました。
バーベキューや焼そば、わたあめ、焼きおにぎりをはじめとする調理部隊は生活クラブ連合会や各単協、さらには生活クラブ親生会などから馳せ参じたメンバーが担当。バーベキューで供された豚肉、牛肉、鶏肉、ウインナー、野菜などは提携生産者のもの。野菜一式を提供し、「野菜届け隊」として参加した茨城県の青果の提携生産者である(有)丸エビ倶楽部のメンバーはマイクを握り、「被災現場を初めてみましたが、すごい被害だと分かりました。お互い手を取り合って頑張りましょう」と心の奥底からエールを送り、生活クラブ親生会の副会長で(株)泰山食品商行の佐藤久さんはこう挨拶しました。
「震災直後は被災された生産者が心配でなりませんでした。今日、皆さんのお元気な姿にお目にかかれて何より嬉しい。こういう機会をつくった生活クラブ岩手の皆さんにも感謝したい」
まつりの最後には、生活クラブ連合会常務の渡部孝之さんが「今日は重茂の皆さんの表情が明るい。これからも皆さんには頑張ってもらいたい、頑張ろう、頑張ろう!」と締めくくりました。
復興に向けて立ち上がる契機に
ところで、この「大バーベキュー大会」は生活クラブ岩手が震災直後から重茂への支援を継続させながら温めてきた企画です。「この時期に開催してもいいのか」という悩みもありましたが、相談した漁協女性部から「心の区切りをつけるためにも」と賛意が得られたことから実現の運びとなりました。
重茂漁協は例年、漁協主催で8月の第一日曜日に「重茂味まつり」を開いてきました。海産物の廉価販売や重茂半島巡り、歌謡ショーなどのイベント地が盛だくさんのまつりとして地域を越えて定着し、今年は6回目をむかえる予定でした。しかし、東日本大震災の影響で会場となる漁港が壊滅的な打撃を被ったため、開催を断念せざるを得ませんでした。
そこで、“味まつり”に2回目から関わってきた生活クラブ岩手が主催し、重茂の人たちに食べることを通じて3月11日以来の苦労に対する労いの気持ちを伝え、重茂と生活クラブが一体となって懇談する機会をつくるために「大バーベキュー大会」は企画されたのです。重茂の人たちが外の人を迎える「味まつり」。これに対して今年は生活クラブが重茂の人たちを招待する。いわば“逆・味まつり”です。
会場で漁師や生活クラブからの参加者がビール片手に懇談する光景がアチコチに見られ、漁協女性部のメンバーが生活クラブ連合会からの参加者に駆け寄り、「重茂に求められていたことがこういうイベント。この地域に限らず隣接する地域からも駆けつけてきた人がいる。こういうことに飢えていたんです。ありがとう」と感謝に気持ちを伝える光景もありました。また、太鼓演奏した重茂中学校の代表も演奏前に「給食支援ありがとうございました」と挨拶。さらに、ある漁協職員は重茂全体の意思をこう話しました。
「生活クラブは被災直後から私たちが必要としている支援物資を届けてくれました。学校の給食支援もその一つ。これはもう、感謝、感謝しかありません。それに続くこのイベント。漁民たちも復興に向けて立ち上がろうとするいい機会になります」