生活クラブ親生会「衛生管理マニュアル作成チーム」の相互点検
消費材の提携生産者の組織である「生活クラブ親生会」自主管理部会の加工食品分野の生産者と、生活クラブ連合会自主管理委員会の加工食品部会によって2006年5月に結成された「衛生管理マニュアル作成チーム」。消費材製造管理のレベルを高めるため、5年前から実施している生産者同士による相互点検が8月26日、(株)マルモ青木味噌醤油醸造場で行われました。(2011年9月28日掲載)
衛生管理の理想は原料搬入から製品出荷までが一直線
点検に先立って、生活クラブ親生会事務局の森泰見さん(前・生活クラブ品質管理部長)は参加者に相互点検の心構えをこう話しました。「異業種でも共通する施設の整理、整頓、清掃、清潔、そして社員のしつけ、主にこの5Sを点検してマルモ青木味噌の衛生管理のレベルをみてもらいたい。相互点検で重要なことは、自社で実行されていなくても自分の目で判断して問題点だと思えば指摘することです。それを通して双方の衛生管理のレベルを引き上げることにつなげていきたい」
また、生活クラブ親生会・自主管理部会の部会長でもある(株)マルモ青木味噌醤油醸造場の青木幸彦さんは、自社の衛生管理の考え方と課題を参加者に説明しました。それによると、衛生管理で理想的な姿は原料搬入から最終製品の出荷までが1直線で、しかも人とモノがクロスしないこと。ただ、同社ではそれを100%実現できないため、工場内にいくつかルールを設けることでリスクを回避しています。また、工場周辺は田んぼが多いために防虫対策が欠かせません。ただ、工場は有機認証を取得しているために殺虫剤を使えないことから、二重扉や網戸のメッシュを小さくするなどの物理的対策を講じてその侵入を防いでいます。
「前回の点検より清潔」という声の一方
相互点検は3項目にわたって実施します。消費材企画書入力シートや製造記録などの(1)「書類点検」、(2)「工場図面」、そして(3)「工場点検」です。工場の点検項目は詳細を極めます。(ア)「工場内への入退場」では、手洗い施設の蛇口は自動水洗であるやエアシャワーの有無など11項目。(イ)の「工場内」は機械・器具類に汚れ、埃が無く十分に殺菌されているか、原料と製品の保管室は別室になっているか、従業員の作業着は清潔か、など83項目にものぼります。
この日の工場点検に要した時間は約2時間。(株)マルモ青木味噌醤油醸造場の社員の案内で、原料搬入、製造、熟成、包装などの各工程を点検しました。
今回の参加者は15社から20人、加えて生活クラブ連合会品質管理部の1人がそれぞれ、点検結果を報告しました。参加者の中には、2007年に実施された相互点検の経験者もおり、「そのときに比べて工場も清潔で整理、整頓もしっかりしているというのが第一印象で、包装室の清潔区と準清潔区の区分けもしっかりしている」と評価する一方、こう指摘しました。
「清掃は定期的に行っているとのことでしたが窓枠に埃が溜まっていた箇所があった。また補虫用の“ムシポン”が随所に置かれていましが、設置月日が無いものがありました」。
問題点として指摘されたのはこの他、「原料庫の操作盤の下にくもの巣があった」や「仕込み混合工程にあったスパナが錆びていた。錆びにくい製品に換えたほうがいい」、さらには「仕込み工程のコンベアに糸ぼこりがついていた。製品への異物混入が心配」「全体的に配電盤の中の掃除がおろそか」など。
ゴミ箱の蓋なしの理由は?
質問では、「包装室の準清潔区にあったゴミ箱に蓋が無かった。どういう判断にもとづいているのか」や「包装室で手袋をしていない従業員がいるが細菌汚染につながるのでは」などいくつかが挙げられました。
これに対して青木さんは、「蓋があると中身が見えないのでごみがいっぱいに溜まっても始末をしないことがありました。そこで現場と話し合いの上、透明なプラスチック製にして中を見えやすくしました。また、蓋については、ゴミを入れる際に蓋があると手が汚れる心配があることから、粉ゴミのような飛散するゴミではないので蓋が無くても支障はないと考えています」と述べるとともに、手袋についてはこう説明しました。「素手は非衛生的という食品工場の概念からすると、今後は手袋の使用も検討する必要があると思われます」。
相互点検は、点検から間隔を2、3年あけてもう一度点検します。そして指摘を受けた事項を生産者がどのように改善、工夫したかを確認します。このように、生産者の衛生管理をはじめとする品質の向上に向けた取組みに終わりはありません。P(計画)・D(実行)・C(評価)・A(改善)のサイクルを地道に繰り返す努力こそが、消費材の安全・安心や信頼の獲得に結びつくと考えているからです。