協同組合間協同で未来を拓こう
生活クラブとグリーンコープ共同体は11月5日、東京都内で合同の活動交流集会を開きました。2012年は国際協同組合年(IYC)、また生協法の再見直しの年に当たります。集会は、両生協に具体的な活動実践を報告し合い、学びあうことを目的にしました。そこから見えてきた生活協同組合としての今後のありたい姿を協同宣言としてまとめて確認しました。当日は生活クラブから約120人、グリーンコープから約80人が参加しました。(2011年12月6日掲載)
協同組合発展のための連帯システムづくりには労働者協同組合の法制
開会に当たり、実行委員長でグリーンコープ共同体代表理事の田中裕子さんがこう挨拶しました。「東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故は、今後も長くさまざまな課題を投げかけていくと思います。わたしたちは人と人とが支え合い、たすけ合うことを通して、この厳しい現実を乗り切っていきたいです」一方、同じく実行委員長を務める生活クラブ東京理事長の吉田由美子さんは「実践の中から示していくのがこの両生協。IYCに向け、世界中にアピールできる存在になりましょう」と参加者に呼び掛けました。
基調講演は、「協同組合の未来と課題―社会変革の協同組合と連帯社会への展望」をテーマに、桃山学院大学教授の津田直紀さんが「連帯」を軸に論じました。津田さんはまず、連帯社会について「労働者・弱者を大切にする、個と全体のバランスがとれた社会」と定義しました。そして、協同組合が「価値の実現」と「効率・発展の実現」という相反要素を両立するのは可能かという課題については、「連帯を軸にしたシステムを作れば可能」とし、イタリアやオーストラリアのマレーニなどの事例を紹介したうえでこう提案しました。「日本では『縦割り行政』による法規制が妨げになっています。『労働が資本を支配する組織』を形成できるよう、労働者協同組合の法制化を早急に行うべきです」
地域が主役の生活クラブ
活動報告では、生活クラブからはまず、生活クラブ神奈川副理事長の鈴木伸予さんが秋田県にかほ市に建設する風車について報告しました。風車の建設は、生活クラブ東京と神奈川で検討課題にのぼり、2010年11月に首都圏4単協の理事会で構想が決定しました。その後、各単協総代会の決定を経て、11年7月にNPO法人北海道グリーンファンドと共同で一般社団法人グリーンファンド秋田を設立し、事業に着手しました。
ところで、福島第一原発の事故を契機に首都圏の電力を地方が供給していた点にも関心が向けられており、この風車も「なぜ秋田に?」という質問が組合員から上がったといいます。これについて鈴木さんは、「風車の建設および運転に適した土地の問題や地元自治体の協力が得られる点から選定しました。にかほ市は生活クラブのお米の産地の一つである山形県遊佐町とは県境で接していますので、お米と同じようにエネルギーでも地域間連携を深めます」と述べました。
また、生活クラブ長野理事長の石川京子さんは、持続的生産基盤づくりや循環型社会を目指した、生活クラブと提携生産者による「ぐるっと長野地域協議会」の活動を紹介。その成果について、「組合員と生産者の間のみならず、生産者間でも連携が深まりました。これからは生産者と消費者の両軸で食の自給運動をすすめます」と述べました。
このほか、生活クラブやまがた理事長の長谷部玲子さんが高齢者福祉事業について、生活クラブ千葉(通称・虹の街)理事の中井孝子さんが社会福祉法人生活クラブ(通称・風の村)と共同で建設した施設について、また東京コミュニティーパワーバンク理事長の坪井眞里さんが市民による非営利金融の実践について報告しました。さらに、ワーカーズ・コレクティブ ネットワーク ジャパン(WNJ)代表の宮野洋子さんが協同組合地域社会づくりの必須要件に掲げている、ワーカーズ・コレクティブの法制化を訴えました。
一連の報告を吉田さんは「地域が主役の生活クラブ」とまとめ、「各単協がそれぞれの主権を大切にしながらお互いに財産として認識することが必要」とこれからの方向性を示しました。
一方、グリーンコープからは食べもの運動、ファイバーリサイクル、ホームレスや多重債務者を支援する事業への取組み、それとワーカーズの活動について報告があり、このうち、ホームレス支援事業については2010年5月に開設の「抱撲館(ほうぼくかん)福岡」の活動が紹介されました。この施設は、社会福祉法人グリーンコープが事業主体となって福岡市内のホームレス生活者の自立を支援。生協活動の基盤である「たすけ合い」の精神でホームレス生活者問題の解決に当たっています。
協同組合は地域活性化の道具
両者の報告に続いて、仙台市に事務局を置く一般財団法人共生地域創造財団の代表理事を務める奥田知志さんが活動を報告しました。この財団は、東日本大震災の被災地支援を目的にホームレス支援全国ネットワーク、生活クラブ、グリーンコープの三者が共同で立ち上げた事業体を公益法人として改組した団体ですが、奥田さんは「この団体の活動の柱は、単なる復興支援ではなく創造的支援です。ただ食料を支給するだけではダメ。食事は誰と、何のためにするのか、が重要です」と、被災者を孤立させない「存在の支援」の必要性を説きました。
最後に、生活クラブ神奈川理事長の荻原妙子さんとグリーンコープの田中裕子さんが「協同組合が持続可能な市民社会に貢献できるよう法改正を求め、協同組合が地域社会を活性化させる重要な市民社会の道具であることの認知を拡げる活動をすすめる」とする内容の協同宣言を読み上げ、拍手で採択されました。