「注いだ湯気の向こうに作り手の顔が見えるお茶」がモットー。㈱新生わたらい茶
提携品目:お茶
無農薬茶へのこだわり・・・生活クラブとの出会い
消費材名となっている“わたらい”は地名で“度会”と書きます。
「わたらい茶」の産地である三重県度会町・大台町は、伊勢市から十数キロ程西南に位置しています。地域を流れる一級河川「宮川」は国交省の水質調査で何度も一位になっているほどの清流です。一帯は全国三位の生産量を誇るお茶どころで、昔から「伊勢茶」と呼ばれる良質なお茶の産地として親しまれてきました。三重県のお茶は「伊勢茶」といいますが、消費材には無農薬茶へのこだわりから「わたらい茶」と名付けたそうです。
生活クラブとの提携は1976年からになります。当時、グループの生産者は、戦前、戦後の農業を経験した人たちが中心でした。戦後、近代化のかけ声とともに農業は栽培技術の開発と機械化が進み農業構造は一変しました。茶栽培も例外ではなく、化学肥料の多投や農薬、除草剤の使用により収穫量が増し、品質も良くなりました。しかし反面、残留毒性による人体への安全性問題や、土壌をはじめとする生態系への悪影響など、様々な問題が浮上してきました。
そうした茶栽培への反省から、グループは1973年に有志を集め、有機栽培による茶作りを開始、75年には協同で堆肥場を造り度会農事生産販売協同組合を設立しました。あわせて、「健全な作物は土壌から」を合言葉に、堆肥場(1,500㎡)を建設し、堆肥作りを始めました。それ以来、環境と人体への影響の少ない栽培を続け、2000年のJAS法改正を機に有機JASの取得を進め、現在では全ての圃場が認定圃場となっています。
私ども株式会社新生わたらい茶は、登録された生産者が農薬を使用せず、堆肥を中心とした有機質肥料を投入して栽培された原料を仕上げ加工し、袋詰めにしています。市場に流通している茶のうち、有機栽培茶の占める割合は数パーセント。その中で、「安全・健康・環境」という生活クラブ原則と弊社の基本理念を共有することで、生産者は安定した生産を、生活クラブ組合員の皆様は安全・安心なお茶を飲み続けられていけるのだと考えています。
産地も流通経路も明らかなお茶
わたらい茶は通常、年3回(一番茶・二番茶・秋番茶)収穫します。その順序に従って消費材名は一番茶では「一番茶上煎茶」と「一番茶煎茶」、二番茶は「二番茶煎茶」、秋番茶は「わたらい茶番茶」と「わたらい茶ほうじ茶」となっています。
一般的にお茶は、荒茶という半製品の形で生産者から流通し、卸や小売り段階において再製加工されて最終製品に仕上げられ、消費者の手に渡ります。この再製段階の仕上げ茶においては、産地、品質の異なったものをブレンドすることが通例となっており、化学調味料の添加や輸入茶の混入がされても、ブレンド技術の向上によって一般の消費者には見分けることが出来ません。
また、産地や摘採期(一番茶、二番茶等)などで品質の落差が大きいにもかかわらず、品質や価格の統一的な基準が設けられていないため、小売り段階の販売価格だけが消費者にとっての基準、あるいは目安になっているのが実態です。さらに、複雑な流通経路の中で品質や価格が操作されるため、消費者にとっては、どこでどのように作られ、品質と価格が適正かどうかといったことを確かめるのは困難になっているともいえます。
Sマーク消費材「わたらい茶」の特徴は、緑茶生産者と消費者が共に手を携え、「お互いに顔の見える関係を作り上げ、品質と価格の確かなお茶を飲みつづけるために栽培し、製品化している」―この一点に尽きます。「注いだ湯気の向こうに作り手の顔が見えるお茶」をモットーに荒茶工場、仕上工場では軽トラックで生葉を運んでみえる生産者の笑顔を思い、また飲んでいただける組合員の笑顔を想像して製造・加工しています。
ところで、“度会”という地名には、人々が渡り合うという意味もあります。このことを振り返りながら、生活クラブとの出会いに思いを馳せ、生産者と消費者がつながることの意味や、無農薬・有機栽培を始めた父たち世代からの思いを自分たち、また次の世代に引き継いでいくことがこの地で育った私たちの役割ではないかと思います。
これからも健全なお茶作りに専念し、安心して飲んでいただけるお茶を作り続けていきたいと考えています。湯呑にそそいだお茶には、長年にわたり継承されてきた生産者から消費者への、たくさんの思いがいっぱい詰まっています。
※昨年の大震災と原発事故、そしていまなお続く放射能汚染問題。その影響はいまだ終息のめどもつかない状況が続いています。25年前(1986年)のチェルノブイリ原発事故の時に「わたらい茶」は、放射性物質のセシウムが227㏃/㎏検出されたために供給停止となり、焼却処分したことを、父をはじめグループ生産者や生活クラブの方からも聞いています。今後、二度とこのような事故が起きないことを切に願うとともに、脱原発、エネルギー問題について国民一人一人が真剣に考える時期に来ているのだと痛感しています。
(2012年2月掲載)
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