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手づくりを再現する 120人のパティシエたち【下田 祐次さん】

江戸時代、西洋との唯一の窓口だった長崎から貴重な砂糖が江戸へと運ばれた。
多くの銘菓を生んできたシュガーロードと呼ばれるこの街道沿いに、丸きんまんじゅう(佐賀市)はある。

原料切り替えへの挑戦

下田 祐次<span>(しもだ ゆうじ)</span>さん<br >■提携先  (株)丸きんまんじゅう <br >■提携品目 米粉のロールケーキほか、和洋生菓子 「地元の生協にも認めていただいていたので大丈夫だろうと。いやぁ、甘く見ていました」。丸きんまんじゅう、取締役統括部長の下田祐次さんは、苦笑しながら生活クラブとの提携当初を振り返る。生活クラブの原料点検、特に遺伝子組み換え作物へのチェックは予想以上に厳しく、自主基準をクリアする原料の模索とこれを用いた試作が重ねられた。
 「試作の段階では完璧だったんですよ。ところがいざラインを動かしたらシュークリームのシューが膨らまない、もう真っ青でした」
 菓子づくりはデリケートだ。ふわっとした生地、滑らかな口あたりのクリーム、いずれも原材料の特質に合わせた調整が要求される。試作段階とラインでの製造と、つくる量によっても配合や火加減が微妙に変わる。ましてや、ベーキングパウダーや乳化剤など添加物を使わないここの製造ラインは、生地やクリームがだれないよう少量単位で回数多く製造しなくてはならない。その日の気温、湿度に応じ微調整も欠かせない。遺伝子組み換え原料不使用と断定できなかったためマーガリンを替えたら、生地が型から出てこなかったことも。原料切り替えは、製造現場総力をあげての取り組みだった。
 名前が示す通り、もとは和菓子専門だった丸きんまんじゆう。生菓子などきれいに飾ることに価値を置くこの業界では、合成着色料など添加物の存在はあたりまえだった。が、16年前に地元生協と提携、洋生菓子製造を始めたことをきっかけに下田さんらは徐々に添加物について学習を重ねていく。
 「私自身、だんだん添加物の使用に違和感を感じはじめ、子どもたちに食べさせたくないと思うようになったんです。現場の苦労はもちろんあったけれど、安心して食べられるものをつくる価値を一人ひとりに話し続け、徐々に理解が広がっていきました」

おいしさがついてくる

黒糖まんじゅう 無添加追求の一方、その過程では原材料や素材の質もあらためて見直された。全国的にも和菓子メーカーが自社製あんをやめていく中、丸きんまんじゅうでは、あくまで生の小豆から炊くあんに主眼をおき、朝から夕方まで、翌日使うあんの製造におよそ12時間もの時間を費やす。
 「小豆を煮る際、リン酸塩を入れると見事に軟らかくなるんですよ。消泡剤にシリコンも使います。いずれも禁止ではないので製あんメーカーでは当然使う。そうしないと時間がかかりすぎるんです。でもリン酸塩は使いすぎれば骨をもろくするといわれています。できれば使いたくない」。無添加を求めれば自社製あんを続けるしかなかったと下田さんは言う。しかもこうした原料への添加物は最終製品への残留が微量とみなされ、表示の必要がない。市販品ではまったくその存在がみえないのが実態だ。
 ただ、生の小豆を使ったあんは、風味・食感において、仕入れた製あんとは明らかに違う。無添加を追求した結果、ほかとは違うおいしさが際立つ形となった。モンブランロールケーキのマロンクリームには、クリペーストに生のさつまいもを加える。フルーツケーキに使うのは、国産で、完熟のパイン缶だ。いずれも素材の風味、味が生きた、市販品とは一味もふた味もちがう製品に仕上がる。多少の苦労はあっても、その価値の実感は従業員の中に確実に広がってきている。

食べさせたいものを

金村康弘専務 卵を泡立てる、粉をまぜる、焼く、切る、巻く……。丸きんまんじゅうの製造ラインは、家庭での手づくりと同じ工程をたどる。ただ量が違うだけ。原材料は家庭のおよそ30倍の量でラインを流れ、次々に仕上げられていく。つくるのはあくまでも人、機械はそれを要所要所で絶妙に補佐している。
 大型機械を設置し、単一ラインを稼働し続ければ効率的な生産はできる。が、規模では大手メーカーにはかなわない。少量でもバラエティー豊かな品ぞろえ、そして、無添加、安心素材へのこだわりが丸きんまんじゅうの強みだ。
 「量産体制の中で手づくりを再現するというのが基本の考えです」と取締役専務兼生産本部長の金村康弘さんは言う。年間500種類におよぶ和洋菓子の製造には、器具、設備など全部ちがうものが必要とされる。
 まして原料にこだわり添加物を使わない工程には独自の工夫が必要だ。「ほかと同じ考え方、機械ではできません」。

 製品に合わせ自社で独自に機械を改造し、原料特性やつくり方を知りぬいた従業員が、これを使いこなす。人と機械の知恵と工夫が手づくりのおいしさを再現する。だからこそ、前述した困難な原料切り替えも可能となった。
 「自分たちが食べたいもの、家族に食べさせたいものをつくろうと思う気持ちが原点です。うちの従業員はラインの歯車ではない。一人ひとりがやりがいと責任を持ってラインを動かしていますね」と金村さんは胸を張る。

厳しさを増す原料確保だが

工場前で、左から岡村課長、下田部長、金村専務 昨年春先の九州地方の長雨などが影響し、今シーズンはさまざまな国産原料の確保に苦労した。それでも国産を使うのは「基本中の基本」と下田さんと金村さんは口をそろえる,自給力低下への不安はもちろん、日本の良質の原料でこそお菓子をつくりたいというのが2人の共通の思いだ。
 さらに目下の最大の悩みは、年々困難になる非遺伝子組み換え原料の確保。原料メーカー自体がこだわらなくなってきている上、栽培が認可される国も年々増え、原産国で判断することも難しくなった。遺伝子組み換えではないといいながら、証明書を提示しないメーカーもあるという。
 「楽な方へと流され、提供する食品の問題を認識しないメーカーが増えるのは悲しいことです」。

 自らの経験からも、食が長年にわたりいかに体に影響するかを実感すると下田さん、添加物はもちろん遺伝子組み換え原料の使用を疑問視し、「生活クラブが求める限りどんなに困難でも納得のいく原料を探し続けたいです」と話す。


伝統の冷凍生菓子をもっとおいしく!

地域の女性が担う活力ある職場

ラインを動かす女性従業員たち パートも含め、丸きんまんじゅうの従業員は現在およそ120人。生菓子は日配品といわれ、夕方受注し夜通し製造して早朝に出荷する業務形態が通常だ。が、丸きんまんじゅうでは16年前、冷凍和洋生菓子の本格的製造にシフトした。
 当時は誰もが驚く決断だったが、ロスが減り品質管理上のメリットも大きかった。何より深夜労働があたりまえだった業務は、昼間の就業に中心が移行、地域の女性たちがその主軸を担う体制ができた。
 「生活クラブとの提携は、原材料ひとつひとつに徹底した吟味を重ね、製造にも工夫が必要。それだけにクリアしたときは達成感があります」と品質管理課長の岡村ゆかりさんは言う。岡村さんをはじめ、生き生きと誇りを持って働く女性たちの姿は、この工場の大きな特徴のひとつだ。

おいしく食べるヒント

1本約30秒の早業 とはいえ、冷凍で生菓子が届くことに違和感を持つ人も少なくない。そこで、岡村さんに、おいしく食べるポイントを聞いた。

ロールケーキ
 時間がかかっても必ず冷蔵庫で低温を保ったまま解凍を。特に夏場はすぐにクリームの水分が生地に移行してしまうので要注意です。

まんじゅうなど和菓子
 こちらは逆に冷蔵庫には入れずに常温で。冷蔵庫では皮が硬くなってしまいます。少し蒸したり電子レンジであたためれば、あんはホクホク、皮はもちっとつくり立てのおいしさがよみがえります。

シュークリーム・エクレア
 冷蔵庫・常温どちらもおいしいけれど、クリームのおいしさを味わうならばぜひ常温で。とろとろの食感が病みつきに。

黒糖まんじゆう
 油で揚げると今はやりの「かりんとうまんじゅう」のような味わいに。

伝統の味を子どもたちに

 シュガーロードの伝統から、丸きんまんじゅうでは和菓子文化継承への思いも強い。特に「ちまき」は平安時代に中国から伝わった唐津(佐賀県)の伝統的なお菓子。当時のままの素朴な味わいを再現している。ひとつずつ手早く生地にササの葉を巻く女性従業員の熟練の技も見事だ。「お節句にちまきを食べながら子どもたちの成長を祝う、そうした習慣とともに次世代に伝えていきたい」と下田祐次部長は言う。

『生活と自治』2012年4月号の記事を転載しました。

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