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瑞穂の国が育む甘露【角谷 利夫さん】

プロの料理人に愛され続ける三州三河みりん。200余年続く伝統の技からつくりだされるその味を今に引き継ぐのは角谷文治郎商店だ。

凝縮される米のうまみ

角谷利夫<span>(すみや としお)</span>さん<br >■提携先  (株)角谷文治郎商店 <br >■提携品目 三州三河みりん国産のもち米と米こうじと米焼酎。こはく色の調味料「三州三河みりん」の原料は至ってシンプルだ。
特筆すべきはその米の量だろう。「米1升、みりん1升」といわれる伝統的なつくり方により、一つのタンクの仕込みに3トンのもち米と1800リットルの米焼酎を使うというぜいたくさだ。仕込んだばかりのタンクの中はさながら雪山のようで、焼酎の香りはしても、液体の気配はない。

「米こうじの力でもち米のでんぷんをゆっくりと糖に分解していくんです。3ヵ月ほどもろみ熟成するとみりんがしぼれるようになります」
こう話すのは「角谷文治郎商店」代表取締役の角谷利夫さん。今では機械化した工程も多いが、その設計はすべて自身で行った。「機械に合わせて仕事をする気はない」と笑う角谷さんは、何よりもみりんの“都合”を優先する。

仕込んで時間がたつほどに、みりんは米こうじの力によってどろりとした質感に変化していく。棒状で船具の櫂(かい)のかたちをした道具「櫂棒」でかき混ぜると、シュワシュワと小さな音とともに、甘くふくよかな香りが広がる。
「私たちの仕事は米焼酎で発酵調整をしながら、雑菌という名の“いたずらっ子”が入ることのできない環境をつくること、そして時間を惜しまないことだけです」
しぼった後のみりんは、さらに約1年かけて熟成させて、ようやく使う人の手元に届けられる。

米焼酎も自社で

伝統的な製法のみりんでは、清酒かすや米を原料とした焼酎が使われる。角谷文治郎商店のある愛知県碧南市は江戸時代から醸造が盛んで、かつては酒造業の清酒かすが利用されていた。

しかし時代は移り変わり、酒造業者は減少し、焼酎をつくることが次第に難しくなっていった。さらに醸造用糖類や醸造用アルコールを加えてつくる安価な代替品に市場を席巻されたことで、みりん製造業者自体が激減。今や「海外の安価な米やアルコールでつくられた焼酎で仕込む」が業界の常識になってしまったという。

こうした中で角谷文治郎商店は、規模は小さいながらも独自の道を選んだ。焼酎は自社工場でつくっている。もちろん原料は国産米。生活クラブ関連のルートで人手する備蓄米などが中心となる。
「米焼酎には独特の風味があり、この良さをわかっているからこそ、優れたみりんをつくることができると思っています」
品質への飽くなき探求はほかにもある。自社に精米工場を持ち、米焼酎に使ううるち米、みりんの仕込みに用いるもち米を精米する。これも業界ではまれなことだ。

▲みりんをびんに詰める。異物の混入がないか、チェックする(写真左) 熟成したみりんのもろみを袋に詰め、しぼる(写真中央) 「櫂棒]を使って熟成中のみりんをかくはんする。水分量が少ないため、重労働だ

築かれていく信頼

▲自社製の焼酎製造ライン。機械化し、コンピューターで制御する。みりんの仕込みのない夏、冬に製造を行う精米工場を移転新築した翌年の1992年、日本列島を駆け抜けた台風19号が、各地に農産物の被害をもたらした。もち米の大産地である佐賀県でも、例年の3割の収穫しかない大凶作になった。

うるち米と比べて栽培が難しいもち米は全国的に生産量が少なく、産地も限られている。収極量が1割減っただけで全体の価格は2倍に跳ね上がるというように、不作になればたちまち需要がひっ迫し、相場が上がる。その結果、取引そのものが不安定になってしまう。安価な米を求めていた加工メーカーは原料の手当てがつかなくなり、海外産原料にシフトしていった。

角谷さんは全国農業協同組合連合会(JA全農)系列の正規流通の米にこだわって手を尽くした。すると、「基準から外れた等外米なら佐賀にある」との情報が入った。サンプルを取り寄せ精米したところ、何とか原料として使えるとの確信を得て、当時のJA佐賀経済
連に発注した。その後、お礼に佐賀に出向いたときに先方の担当者から言われた言葉を、角谷さんは忘れることができない。

「わかってくれましたか」
92年産の佐賀産を多くの業者が敬遠した。角谷さんも例外ではなかった。だが、佐賀経済連はJA全農を通じて毎年注文を入れてきていた角谷文治郎商店を大切な取引先と認識していて、等外米でも可能な限り状態の良いもち米を出荷していたのだ。
「これからも産地に認めてもらえるユーザーでありたい」と角谷さんは心に誓った。そして産地もまた、自分たちのつくった米を評価されたいと切望していることを知る。これ以降、角谷さんと産地は契約栽培という絆で結ばれるようになった。

農の風景とつながって

みりんの仕込みは春と秋。もち米と、米こうじ、米焼酎を合わせたものが、タンクの中に仕込まれる。さながらぼたん雪のよう角谷さんは社会の出来事に対し、いつもアンテナを高く張っているという。
契機となったのは1978年に明らかになった「照射ベビーフード事件」である。愛知県内の食品会社が大手16社のベビーフードに用いる粉末野菜を違法に放射線で殺菌し、販売していた事件で、以来、「無関心であればそれゆえリスクを冒してしまうことがある。そうならないよう自分の目で見て吟味し、選び取る」というのが角谷さんの信念となった。だから産地にも足を運ぶし、国内外の消費者と会う労を惜しむことはない。その成果か、バブルの崩壊も、リーマン・ショックも角谷文治郎商店の売り上げには影響をおよぼさなかったという。

さらに角谷さんは、時代の求めているものを見極め、それに沿ったみりんの価値を表現することが大切と考えている。21世紀のキーワードに定めているのは「環境」だ。
一部の製品で長年愛用してきた角型のびんをリユースびんに切り替えたことについては、「消費者の環境意識の高まりがあってのこと」とさりげない。
だが、農業とのつながりを語るとき、おだやかな口調が、がぜん熱を帯びてくる。

「みりんづくりを通じて、環境への貢献もできると考えています。米はただの原料ではありません。その後ろには日本の農の風景が広がっているんです。これを未来に残していけるような仕事をしたいと、心の底から思っています」


可能性は無限大。三州三河みりん

日本料理店「小伴天」(碧南市)の料理。魚の煮つけに、創作料理にと、プロが選ぶのは三州三河みりんであるすべてが有効活用される

三州三河みりんをつくる工程では、主に二つの副産物が発生する。ひとつは米焼酎の製造過程から出てくる廃液類、もうひとつはみりんをしぼった後に残る膨大な量のみりんかすである。廃液類は農業用の肥料の原料に、「使った米の半分がみりんかすになる勘定」といわれるみりんかすは、奈良漬や守口漬の漬け床になる。原料が米だけであることから、安心して余すことなく有効活用することができる。

広がるみりんの使い方

古来「甘いお酒」、リキュールとして愛されてきたみりん。正月の『おとそ』の風習はそのひとつだが、今では調味料としての用途が一般的だろう。みりんの特徴としてまずあげられるのは「照り、つやを出す」「上品でまろやかな甘み」だろう。さらに付け加えるなら、「コクやうまみを引き出す」「くさみを消す」「煮崩れを防ぐ」だ。これはみりんに含まれるアルコール分の働きによる効果だ。定番の煮つけや煮しめ、照り焼きはもちろん、魚介類のだしを使った吸い物やみそ汁などの仕上げに一滴たらすとくさみを飛ばし、より風味を引き立ててくれる。

みりんを使った夏向けのレシピ

・ジュレ
三州三河みりん、しょうゆ(あれば白しょうゆ)、純米酢、だし汁を1:1:1:4の割合で準備し合わせる。ここにゼラチンを溶かし、冷やしてジュレをつくる。水分量を多めにして軟らかくつくるのがコツ。写真の小鉢のようにサラダにしたり、刺身にカルパッチョ風にアレンジする。そうめんにめんつゆ代わりに添えても涼しげだ。

・ミニトマトのコンポート
三州三河みりんを鍋に入れて煮切り、そこへ皮を湯むきしたミニトマトを漬けてよく冷やす。くどさのない上品な甘さは伝統的な製法のみりんならでは。 トマトの酸味に合う。

・めんつゆ
だし汁、三州三河みりん、しょうゆを9:2:1の割合で準備する。まずみりんを火にかけアルコール分を飛ばし、そこへだし汁を入れ、最後にしょうゆで味を調え、火を止める。

『生活と自治』2012年5月号の記事を転載しました。

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