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わかるから見いだせる対策と希望【江連 克実さん】

パスチャライズド牛乳の産地、栃木県那須塩原市。未曽有の原発事故の影響は、緑豊かなこの地にも及んだ。
しかし、連日の検査にも放射性物質不検出(検出限界1キロ当たり2ベクレル)を貫いている。

出たら終わりだ 組合の決断

印南智久課長 「えささえきちんと管理すれば牛乳にはでないんです。農産物よりもむしろ対策はたてやすい」と箒根(ほうきね)酪農業協同組合の総務課長印南(いんなみ)智久さんは言う。牛乳は牛という“フィルター”を通して生産される。だから、汚染リスクのあるえさを牛に与えない、不安のあるものは検査してから与える。事故以来、箒根酪農協では、そうした対策を徹底してきた。
 福島第一原発から直線距離にして105キロ。事故当時、誰もがここまで放射性物質が流れてくるとは思っていなかった。それでも生活クラブの代表的消費材だけに、事故直後から牛乳の検査は最優先で行われた。
 最初に問題となったのは5月、牧草の収穫時期だ。周辺の畑に作付けされた牧草は、春、夏、秋と3回にわたり刈り取られ、1番草、2番草、3番草として牛の飼料となる。輸入配合飼料にできるだけ依存せず国産粗飼料の割合を増やそうと、箒根酪農協でも積極的に取り組んできた。
 栃木県の検査で、1番草から高濃度の放射性物質が検出され、すぐ使用禁止となった。幸い当時はまだ前年収穫の牧草を使用していたため、牛乳の汚染は防げた。
 その後、2番草、3番草と徐々に検出値は下がり県の禁止命令は解除になったが、箒根酪農協は独自に検査を実施、組合としてどうするかあらためて話し合った。牛乳が汚染されれば元も子もないが、輸入飼料を購入すれば、酪農家の負担増になる。
 結局、酪農家には1ロール(約300キロ)の牧草につき1万円を組合が補償することで2番草、3番草は使用しないという結論に至った。「県を信用しないわけではなかったんです。ただ生活クラブの組合員にとっては、たとえ10ベクレルでも20ベクレルでも牛乳から放射性物質が検出されたら大変なことになります。出たら終わりですよ。自分たちでできることはやろうと判断しました」

毎日の生産から希望を

牛に食べさせることができず畑に積まれている昨年収穫した牧草 夫婦2人で35年以上酪農を続けてきた箒根酪農協の組合員江連(えづれ)克実さんにとっても昨年3月11日は大きな転換点となった。
 牧草の代わりに輸入飼料を購入すると一ヵ月当たり余分に20万円の費用がかかる。「もう1年たつから年間で240万円、補償は全額ではないし、結局は持ち出しですね」と苦笑する。オーストラリア産の飼料エンバクは、牧草に比べ高価な上に牛の胃に負荷をかける。そもそもえさの切り替え自体が牛にとっては負担だ。時間をかけ徐々に切り替えることで、なんとか牛の健康を損なわずに乗り切った。
 しかし江連さんにとって費用負担以上にきついのは、毎日の仕事すべてに身構えなければならなくなったことだ。えさやわら、土壌など、何が汚染につながるかわからず、個々の作業に気が抜けない。自費で資材の検査も行った。「行政を待っていては遅いんです。お金をかけて自分で結果を出さなければ、毎日の仕事に自信が持てなくなってしまいます」
 この1年間、人の話を聞き、本を読み、さまざまな仮説を立てて作業を行ってきた。炭は多孔質だからえさにまぜればセシウムを吸着するのではないか、バクテリアの働きはセシウム分解に効果を及ぼさないか─。
 えさから牛乳への移行率、水分換算の割合など、江連さんの口からは数字や計算式がすらすらとでる。「牛舎はバクテリアの巣みたいなもの。活動するバクテリアの種類で塀の色まで変わります。その正体はまだ3%しかわかっていないし、もしかすると放射性物質除去に有効な働きもあるのかもしれません。現に自宅の中よりも牛舎のほうが線量の低下傾向がみられるんです」
 科学的な事実かどうか、江連さんにも確信があるわけではない。しかし、「日々小さな変化を見逃さず、まめに検査してデータを蓄積すれば糸口は必ずあるはず。誰にも経験のないことですから。牛を飼う毎日の生産活動が新しい方向性を切り開くなら励みにもなります。それを生活クラブの組合員がバックアップしてくれるというのであれば涙がでますよ」

江連克実<span>(えづれかつみ)</span>さん ■提携先  箒根酪農協 新生酪農(株)  ■提携品目 パスチャライズド牛乳

共に問題に向き合うために

 「別のメーカーと取引していたころは、乳価交渉でもなんでも一方通行です。えらい人がきて今年の乳価はこれで、と言われて終わり。こっちで何を言ったってダメでした。生活クラブとは1987年からの提携。確かに要望も多いけれど、こちらも言いたいことは言えます。対等なんだなと実感しました」と印南さんは生活クラブとの提携当時を振り返る。
 その後も殺菌温度の変更や遺伝子組み換えでないえさの導入など、新たな課題が発生するたび、話し合いながら解決してきた。今回の事故のようなときでもこの関係は有効だったのではないかと印南さん。「確かにここは線量が高いのですが、誰がどんなえさでどう生産したかはいつだって明らか。事故直後から情報は出していたし、毎日検査もしています。27人の酪農家には何を使ってはダメと情報共有して指示も徹底できます。これほど安心な牛乳はほかにないと思うのですが」
 江連さんも「こんな状況だし他地域の牛乳が選ばれるのは仕方ないのかもしれません。それでも飲んでくれる組合員がいるのだから、私は百パーセントの努力をします」と言い切る。放射能汚染は絶対出さないという思いで続ける現場の対策を、少しでも理解し信用してもらいたいというのは産地の共通の願いだ。
 この4月、箒根酪農協の原乳を製品に加工する新生酪農は独自の放射性物質検査機の購入を決めた。
箒根酪農協の事務所に設置され、酪農家が主に使用する。
 「行政の検査機はどうしても食品が優先。自前のものがあればえさやわら、土壌など気になればその都度測ることができ、より安心な体制ができます」と印南さん。日々気の抜けない作業を行ってきた酪農家にも大きな支えになる。こまめな検査とデータの蓄積は、江連さんの探求と可能性の発見にもきっと役立つにちがいない。


牛乳を未来につなぐために

原点に返り、大胆に話し合う第7次牛乳政策

72度15秒間の殺菌方法では乳の細菌数を抑えることがポイント。清潔でていねいな搾乳風景 パスチャライズド牛乳の利用量は事故以前から毎年右肩下がりを続けてきた。原発事故がこれに拍車をかけ、さらに下降線をたどる。新生酪農は、日本で初めて消費者が出資して設立し、オリジナルな価値をさまざまに実現させてきた生活クラブ自前の牛乳工場だが、このままでは存続さえ危うい事態となる。
 そうした危機感から、生活クラブではこの先の牛乳の共同購入をどう進めるか、原点に立ち返った検討を行い、「第7次牛乳政策」としてその方向性をまとめた。その中では、良質なタンパク質、カルシウムをとれる牛乳・乳製品は、組合員のこの先の暮らしに欠かせないことを再確認したうえで、あらためて酪農(生産)を支えていくとともに、品目や容量の多様化、コストの見直し、価格の検討などで利用を広げていくことが構想されている。早ければ2013年からノンホモ牛乳、200ミリリットルのびん容器入り牛乳などの実現に向け議論が始まる予定だ。

ここがすこい! みんなでつくったプレミアム

 生活クラブではこの間、より安心なおいしい牛乳をつくるために改善を重ねてきている。自前の牛乳工場だからこそ次のようなことが実現できた。
パスチャライズド牛乳の導入(1988年~) 善玉菌やよい成分は生かし悪い菌のみを殺す絶妙な殺菌方法が72度15秒間殺菌。ほのかに甘い風味に加え嫌な後味の残らないすっきりしたおいしさを実現した。
えさを非遺伝子組み換え作物(NON-GMO)に(2000年~) 食べ物の質は、牛乳の質にストレ-トに影響する。GMトウモロコシを一番消費しているのは日本の家畜といわれるほどGM作物が普及している日本の畜産業の中にあって、昨年3月11日の震災後の一時期を除き一貫して非遺伝子組み換えの飼料を使用。安心なえさだからこそ安心して飲める牛乳ができる。
リユースびん容器の使用(2000年~) 洗って繰り返し使うリユースびんでCO2削減に大きく貢献。環境への影響もさることながら臭いを通さないびん容器でおいしさも一段と際立つ結果となった。

朝食、おやつに牛乳を

 大量の食べ物を1日1回食べるより、数回に分けてこまめに栄養補給をするほうが体にやさしく、肥満にもなりにくいとか。忙しい朝に1杯、おやつに1杯と栄養をこまめに補給するのに最適な牛乳。暮らしのリズムに合わせてうまく取り入れてみてはどうだろうか。

『生活と自治』2012年6月号の記事を転載しました。

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