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「協同組合が活躍する場を広げるために」シンポジウム開催

東日本大震災の被災地支援活動や2012年の国際協同組合年、また2013年の生協法見直しを契機に協同組合が果たす社会的役割について注目が集まっています。協同組合が活躍する場を広げるための学習と議論を重ねる場として、生活クラブ連合会などが呼びかけ団体となってつくった「協同組合フォーラム」が、5月12日、「生協の社会的役割と地域の未来」をテーマに連続シンポジウムの第1回目を東京で開催しました。(2012年6月13日掲載)

協同組合の事業には公益性がある

青山学院大学名誉教授の関英昭さん シンポジウムでは、日本協同組合学会会長の関英昭さんの基調講演と、協同組合が各地で行なっている地域貢献の活動事例報告がありました。
 講演のテーマは「グローバル化と協同組合」。関さんはまず「グローバル化とは“アメリカ化”だと理解している」と述べ、日本は戦後、アメリカの経済や教育、金融システムなどの考え方を導入してきたと説明。会社法もアメリカの法制度に近づきつつあり、最近の具体例として同じ目的を持つ人の結合体である「社団」という言葉が会社法からなくなったことを紹介しました。
 協同組合の基本構造について関さんは「非営利・社団・法人」としたうえで、「ICA(国際協同組合同盟)原則にもあるように同じ目的を持った人の結合体であることが協同組合の定義。また、持続するための収益は必要となりますが、その分配が主たる目的ではありません」と説明し、協同組合の社会的役割について次のように期待感を表明しました。
 「これから福祉や医療など地域に根付いた事業分野での役割を果たすことが期待されています。その協同組合が社会的信用を得るためには、組合員が自分の組織をきちんとチェックできること。そのこと自体が協同組合の公益性であり、そのために組合員教育が重要なのです」

生協法見直しに向けた共同提案

 「協同組合フォーラム」の呼びかけ団体である生活クラブ連合会、消費者信用生協、グリーンコープ共同体は2012年3月、「次期生協法見直しに向けた私たちの共同提案をまとめました。
 基調講演後、この「共同提案」をどう考えるかとの質問に関さんは“定款自治”は進めるべきだとしながらも、“員外利用と圏域”の考え方についてはこう注文をつけました。
「圏域規制は事業連合がカバーしてきたという経緯があります。協同組合は人と人の結合体。これが弱まる可能性がある生協の規模拡大は自主的に制限してもいいと思います。ただ、共済については別。東日本大震災で一地域でのリスク管理はできないことが明らかになったので、全体をカバーできる仕組みをつくる必要があります」
 そのうえで“ガバナンス”について「組合員参加を大事にし、民主的な経営をどう行うかについて意見を集約したほうがいいでしょう」とアドバイスしました。

協同組合原則に沿って活動すれば、大切さが理解される

 活動事例ではグリーンコープ共同体が取り組む「就労支援事業」、みやぎ生協の「生活相談・貸付事業」、パルシステム連合会の「セカンドリーグ神奈川」、そして、神奈川ワーカーズ・コレクティブ連合会の「ワーカーズ・コレクティブ共済」の報告がありました。
 グリーンコープの就労支援事業は、地域福祉の活動・事業を助成するなかでホームレス支援団体と出会い、それを契機に多重債務から貧困・生活困窮者への支援と広がってきました。生活困窮者の自立支援施設づくりのほか、就労支援センターでの職業訓練などの活動に取組んでいます。
 みやぎ生協の生活相談・貸付事業は2013年度から。生活困窮に陥った組合員から相談を受け、生活改善と再生策をともに考え、相談者自らの力で生活改善・再生するための支援事業を準備しています。自らも東日本大震災の被災者であるみやぎ生協の報告者は、事業に取り組む背景をこう強調しました。
「宮城県では小泉構造改革を明瞭な画期として現れている人々の生活困窮状態に、大震災が追い討ちをかけている」
 セカンドリーグ神奈川は心豊かな地域社会をつくるために地域の人々やコミュニティ、行政に働きかけて社会的価値ある事業を支援することを目的にコミュニティ・カフェ起業、子育て支援団体の支援、企業・行政等とコミュニティビジネスや団体を結ぶパートナーシップ事業の3つを展開しています。
 ワーカーズ・コレクティブ共済は、雇用によらないワーカーズ(働く人々の協同組合)の働き方を支える自前の労働保障制度の必要性から2001年に発足。保険業法改定による再出発を経て、2011年にワーカーズ・コレクティブ共済株式会社を設立しました。就業中の障がい保障と休業保障=所得保障に絞り、雇用されない働き方や短時間労働など、すべての働く人にとって有効な保障制度になっています。
 4つの活動事例の報告を受けて、関さんはシンポジウムをこうまとめました。
 「協同組合の研究目的でドイツに行きましたが、そこではホームレス支援などのセーフティーネットの役割は教会が担っていました。日本では今後、医療・福祉を中心にした社会のセーフティーネット分野での協同組合の役割は増してくると思います。またさまざまな制度を利用して働く場を作ることも協同組合のミッションです。生協法見直しを提言していくことももちろん大事ですが、地域のなかで協同組合原則に基づいて活動していけばその大切さが人々に理解されていくことでしょう」

写真左から、グリーンコープ共同体常務理事の片岡宏明さん、みやぎ生協の釜萢勝宏さん、パルシステム神奈川理事長の吉中由紀さん、神奈川ワーカーズ・コレクエィブ連合会理事長の島田純子さん

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