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「安心・安全」を超える価値を【新田 嘉七さん】

約30年前に生活クラブとともにつくり上げた「平田牧場」(山形県酒田市)の「平牧三元豚(ひらぼくさんげんとん)」は今や日本を代表するブランド豚として広く知られる。「安心・安全」を超える価値を追い求め、それが社会に認められてきたからだ。

日本第3位のブランド豚

新田嘉七<span>(にった・かしち)</span>さん<br>■提携先 (株)平田牧場<br>■提携品目 豚肉 7月30日付の日経流通新聞(日経MJ)が掲載した「国産ブランド豚肉」ランキングで、平牧三元豚は鹿児島の「かごしま黒豚」、沖縄の「あぐー豚」に次ぐ第3位にランクされた。もはや押しも押されもしない日本を代表するトップブランドの豚として認知されている証しだ。
 平田牧場は現在、東京・日本橋や六本木にとんかつやしゃぶしゃぶが食べられる豚肉料理の外食店などを展開、グルメをうならせる人気店になっている。これがブランド豚としての認知度を高める大きな原動力になったとされる。
 「最初からブランドだったわけじゃない。会社としてブランドにすることにこだわってやってきた。だから(生活クラブ以外の)外に向かって発信した。そうすることで、生活クラブの組合員はさらに(平田牧場を)認知してくれると思う」「三元豚ではうちが元祖で、一番上にいるという自負があるし、黒豚よりおいしいと思う。品質にこだわってきたからだ」。社長の新田嘉七さんはこう言って胸を張る。
 外食店の人気の理由を「肉そのものが圧倒的にいいから」と分析する新田さんは、品質として「安心・安全」だけでなく、「おいしさ」と「社会性」を挙げる。

美しささえ感じる平田牧場の豚肉 もともと平田牧場の実質的な歴史は「安心・安全」を目指した食品添加物無添加のウインナーに挑戦したことから始まる。当時としては画期的な、この化学合成の食品添加物を使用しないウインナーで、生活クラブとの縁ができた。40年近く前の1974(昭和49)年だった。平牧三元豚の開発も「おいしい豚肉を食べたいという生活クラブ組合員の声から始まった」(生産本部主任研究員池原彩さん)。
 平牧三元豚は3種の豚(ランドレース、デュロック、バークシャー)を交配させた「三元交配種」で、開発には7年を要したという。通常ならば、短期間で出荷できるよう生産性を考えて改良するところを、「おいしさ」を追求して、あえて国内の他の豚より20日間ほど長い肥育期間200日をかけてじっくり育てるようにした。

「おいしさ」にこだわった

加藤潔さん(左)と池原彩さん もちろん、不必要な薬剤を使用せず、飼料は遺伝子組み換え(GM)ではなく、収穫後の農薬(ポストハーベスト)を使用していないトウモロコシにするなど「安心・安全」は大前提。豚舎はストレスを少なくする開放型としながら、人の出入りを厳しく管理して防疫にも気を配る。
 こうして出来上がった平牧三元豚は軟らかく、脂はあっさりとして甘みがある。事業本部長の後藤徳雄さんは「生産性重視ではなく、おいしさにこだわった。消費者はおいしくなければ食べてくれない。おいしければ次もまた買ってくれる。おいしくなければ、世の中には広がらなかった」と話す。
 さらに、新田さんが挙げた「社会性」─。その一つが「飼料用米」への挑戦だった。作付けできない水田が増え衰退する一方の農業を再生し、食料自給率の向上を目指して、豚のえさに米を活用した。この試みは2004年に生活クラブなどとともに発足させた「飼料用米プロジェクト」につながり、国の政策をも動かした。
 ただし、平田牧場は“基本”を忘れなかった。豚に米を食べさせることで肉質がどう変わるのか注意深く見守り、さらにおいしくなることを突き止めた。脂肪は白く締まり、軟らかさや味、風味なども好評だった。
 「田んぼに来て米(落穂)を食べたカモはおいしいという猟師の話があって、もしかしたら豚もおいしくなるのでは、という期待はあった。それでもやってみなければ、どうなるのか分からなかった。間違いなく食べてくれる人(生活クラブ組合員)がいたから実験ができた」と生産本部長の加藤潔さん。
 現在は、平牧三元豚にえさの10%、中国の希少な豚を交配させた「平牧金華豚(きんかとん)」に10~15%の飼料用米を与え、「こめ育ち豚」の名も付けられている。

厳重な管理の下で行われている豚肉の解体作業

あえて社会にアピールを

 また新たな試みも始まっている。平田牧場が中心となって、他の外食店などにも参加を呼び掛けた「良い食の会」。「無添加、化学調味料不使用、国産素材、食料自給」を掲げ、これらにこだわりを持つ店が一緒になって消費者にアピールしようという運動だ。
 「今の消費者が店を選ぶ尺度はミシュランやグルメ本ばかりで、どんな素材が使われているのか全然知らされていない。われわれの取り組みを具体的に示すために始めた」と社長の新田さん。さらなる「社会性」の追求だ。
 かつて平田牧場は値下げ要求をしてきた大手スーパーとの取引を断り、主に生活クラブに供給することで再スタートを切った経緯がある。
 「無謀だったが、かけてみようというところもあった」(新田さん)という。そこからブランド化、外食店などの展開、飼料用米の取り組みなどを続け、年間約20万頭を出荷できるようになった。
 ところが、社会的な認知度が高まる一方で、生活クラブヘの供給はこの数年減り続け、06年と11年を比較すると、年間で約1万頭分が減った計算だという。
  新田さんは「生活クラブとともにやってきた自負はあるし、生活クラブには現状を維持し、発展してもらわなければ困る。ただし生活クラブに迎合してはいけない部分もあり、おかしいと思うことはおかしいと言える存在でありたい。互いに鍛え合えればいい。内向きでは成長しないから、うちはあえて外に向けて、いいものだとアピールしている」と語る。
 平田牧場は環境問題や社会貢献に取り組み、生産から加工、販売までを手がける6次産業化にも成功したトップランナーでもある。この先に何を目指すのか?」との問いに、新田さんは、「豚にかかわることだけでなく、環境や食品自給の問題なども含めて社会に貢献できる会社でありたい」と答えた。


庄内発で国動かした飼料用米への挑戦

 この辺り(山形県の庄内地方)の田んぼはパッチワークのようだった」。生産本部長の加藤潔さんはかつての風景をこう振り返る。米をつくらない休耕田が増え、夏でも緑一面にならなくなっていた。
 元の風景をよみがえらせたのが飼料用米の試みだ。現在、飼料用米を栽培する水田には、豚のイラスト入りプレートともに、主食用よりやや背の高い稲が並ぶ。

【一石四、五鳥」の離れ業

 2004年発足の「飼料用米プロジェクト」は、平田牧場に加え、生活クラブの提携生産者である庄内みどり農協(JA庄内みどり、同県酒田市)、生活クラブ、同県遊佐町が参加。JA庄内みどりの生産者が栽培した飼料用米を豚のえさにし、平田牧場が「こめ育ち豚」を生産するサイクルを確立した。
 こめ育ち豚は軟らかさや味がよくなることに加え、生活習慣病を予防、改善すると期待される脂肪酸「オレイン酸」が増加し、過剰摂取が体に悪影響を与えるとされる脂肪酸「リノール酸」が減少するという、肉質の変化も確認された。
 飼料用米の取り組みは、農村の環境保全や食料自給率向上に貢献し、豚肉の品質も向上させた。さらには近年急騰を続け、不足さえ懸念される輸入飼料の一部を国内産に代替できる策ともなった。他の作物への転作ではないため、農家が新たな農機具を購入する必要がないなどの利点もある。まさに「一石四、五鳥」の離れ業となった。
 当初は「豚に米を食べさせるなんてと驚かれた」(事業本部長の後藤徳雄さん)というが、庄内での飼料用米のプロジェクト成功をモデルとして、他生協や民間企業なども追随して広がり、飼料用米は鶏のえさとしても活用されるようになった。法施行、作付けは770倍に拡大
飼料用米であることを示す水田のプレート 日本では、食料自給率(カロリーベース)が40%前後に落ち込む一方で、主食である米の消費量が減少の一途をたどっているため、約4割の水田で米の作付けができない事態に陥っている。この状況を打開する一助として国も飼料用米に注目し、飼料や米粉など米の新たな利用を促す「米穀の新用途への利用の促進に関する法律(米粉・飼料用米法)」が09年に施行された。
 農林水産省によると、平田牧場などのプロジェクトが立ち上がった04年度には全国で44ヘクタールしかなかった飼料用米の作付面積は11年度には実に約770倍に当たる約3万4000ヘクタールに拡大、庄内地方で始まった試みか国や日本の農業を大きく動かした。

『生活と自治』2012年10月号の記事を転載しました。

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