「生産する消費者」としてトマトの収穫に参加
農産物の輸入自由化や農家の高齢化などの影響により国内農業は、きびしい状況におかれています。とりわけジュースなどの加工原料になる国産品はひとしおです。生活クラブはトマトジュースの原料となる加工用トマトの植え付け、収穫を生産者とともに組合員が行う「計画的労働参加」に18年前から取り組んでいます。今年も8月16日から25日までの間に4グループに分かれて110人の組合員が収穫を行いました。(2012年10月15日掲載)
組合員が消費材の生産に参加
生活クラブのトマトジュースは、長野県産のトマトをそのまま搾ったストレート果汁100%。しかし、原料となる加工用トマトの国内生産は4万5000トン(2006年)で、トマト全体の生産量の7%しかありません。これは1972年にトマトペーストとピューレ、1989年にトマトジュースの輸入が完全自由化されたことが大きな要因ですが、農家の高齢化や加工用トマトの植え付けや収穫が一時期に集中し、農家の負担が大きいことも生産が激減した理由のひとつになっています。
そこで生活クラブは1995年からジュースの原料となる加工用トマトを生産するJAながの飯綱加工トマト部会と連携して、組合員が定植や収穫を担う「計画的労働参加」を実施しています。今年も8月16日から25日までの間に4グループに分かれて110人が収穫に携わり、生産者とともに汗を流しました。
一口に収穫といっても加工用トマトの栽培は支柱を立てずに行うため、地に這うようにして実っているトマトを一つひとつ屈んだ姿勢でとらなければなりません。それも日差しを遮るものがない炎天下の畑での仕事です。
また「計画的労働参加」は一般的な援農とはちがい、4000円の日給が支払われます。ですから参加する組合員はいっそうの責任を感じて農作業に取り組むことになります。
今年は関西方面の生活クラブグループからも初めての参加がありました。
エスコープ大阪の岡 公美常務理事は「長時間におよび『労働』は過酷の一言でしたが、自分たちの消費材の生産に関わること、実体験することはとても大事だと思いました。作り続ける、食べ続けられるようにするにはどうしたらよいのかの答えはすぐには出ません。でも、まずすぐにできることは、この取組みを知ってもらい利用を呼びかけることだと思いました」と、感想を寄せています。
またエスコープ大阪の杉原千鶴子さんは「一定期間のうちに収穫や定植をすることのたいへんさを知りました。私たち組合員の労力がどこまで役に立っているかなど、腹を割った話を生産者としてみたい」と述べています。
希少な国産原料の確保、農業を支える実践例
一方、JA ながの飯綱加工トマト部会の生産者は約30人ですが、高野今朝雄さんは加工用トマトを栽培するために畑を借りるなどして規模の拡大をはかっています。
「トマトは一時期になるので、取り切れないくらいできます。だから、生活クラブ組合員の『計画的労働参加』は当てになりますし、とても助かっています」と話します。
今年は天候が順調で、例年以上の収穫が見込まれています。
高野氏のほかにも栽培面積を増やす40代の若手や、今年から加工用トマトの栽培を始めた生産者がいる一方、この1年で亡くなった方や、高齢化のために作付けを縮小せざるを得ない生産者がいるのも事実です。飯綱町に限らず国内の産地は、輸入農産物の自由化や高齢化などきびしい状況を同様に抱えています。そのようななかで計画的労働参加は、生産者の高齢化に伴う離農などによって希少となっている国産原料の確保、国内農業を支える実践例のひとつといえるでしょう。
生活クラブ都市生活から参加した19歳、21歳の組合員の娘さんは「とても楽しかった。もっと働きたいくらいだった」「とてもよい経験になりました」と振り返ります。
自らも“労働”した生活クラブ大阪の渡会恵子理事長は、「長い歴史のある計画的労働参加のすばらしさに感心しました。生活クラブの運動としてこれからも取り組んでいきたい」と、無事、収穫作業を終え帰阪する際に生産者に挨拶しました。
JA ながの飯綱加工トマト部会長である滝沢武利さんは「遠路はるばる関西からお疲れさまでした。ありがとうございました」と、その労をねぎらいました。
収穫されたトマトは搾汁する長野興農(株)の工場に運ばれ、昼夜2交替のフル稼働でジュースが製造されています。そして、1年分の国産100%ストレート果汁のトマトジュースがつくられ組合員のもとに届きます。