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時代の先を見通して挑戦するコメづくり【JA庄内みどり 遊佐町共同開発米部会】

生活クラブとの提携が始まって40年。庄内みどり農協(JA庄内みどり)遊佐(ゆざ)町共同開発米部会は、自ら求めるコメづくりを追求し、つねに実験と挑戦を続ける。

食のビジョンが問われるなか

9月中旬、今年も新米の刈り取り作業が始まった(写真上)地域循環型有機肥料「遊佐づくし」今年3月、ある大手スーパーマーケットが中国産のコメの販売を開始した。国産米より3割ほど安く予想以上の売れ行きだという。日本が環太平洋連携協定(TPP)への参加を決めれば、この動きはさらに加速するだろう。

「遊YOU米(ゆうゆうまい)」の生産者であるJA庄内みどりの遊佐町共同開発米部会長菅原英児さんは言う。「低価格を実現するためのコスト引き下げに一番有効なのは大規模化。でも規模が大きくなれば、きめ細かな管理は難しく、農薬や化学肥料に頼らざるを得なくなります。大規模農業と減農薬はそもそも矛盾するんです」

共同開発米部会は現在、全員が農薬や化学肥料の使用を慣行栽培の半分以下としている。さらに減農薬、無農薬米実験にも積極的にチャレンジするため、その分コストや労力はかかる。
遊YOU米の価格は、生産にかかるコストを基準に話し合いによる「生産原価保障方式」で決めるが、生活クラブの多くの組合員が食べ続けられるよう市場価格との差も考慮され、申請した価格に至らないことが多いのも事実だ。

「この栽培基準でこの価格で、この先再生産が可能かといえば不安はあります」としつつも、菅原さんは悲観はしていない。生活クラブとは率直に話し合える関係があるからだ。こうした時代にあって食をどうしていきたいのか、将来のビジョンを腹を割って話しあっていきたいという。

国の政策を超える

鳥海山の伏流水が湧き出る「胴腹の滝」遊佐町農協(当時)と生活クラブとの提携の歴史は1971年にさかのぼる。その前年、日本では初めてコメの生産調整(=減反政策)が行われた。価格の暴落を防ぐため、生産できる田んぼがあるのにあえてコメをつくらせない政策だ。生産意欲をそぎ、田んぼを荒廃させるこの政策への疑問から、同農協は、新たな可能性を求めて生活クラブとの提携をスタートさせた。

「コメの流通がすべて法律で統制されていた時代に直接提携なんて、違法すれすれでした。将来を見据え、先輩たちは大きな決断をしたんでしょう。それが今につながっています」と菅原さんは言う。
市場原理やそのときどきの政策に左右されるのではなく、生産する側と食べる側が直接話し合うことで、互いに満足のいくコメをつくれないか。双方の思いは80年代後半から「共同開発米事業」として形になり展開されていく。主体的にこれを担う存在として発足したのが、共同開発米部会だ。

つくりやすくおいしい品種選びや減農薬米栽培の実験、自給力を高める飼料用米実験などが次々に行われた。同時に、生産原価保障方式や収穫前に年間利用を予約する登録制度、自然災害や実験による損失が出たらこれを補てんする共同開発米基金など、先験的事業を支える独自のしくみもつくりだした。「スタート時点ではそんなに経済的メリットがあったわけじゃない。それでも実験を続けてきたのは、このままでいいのか、互いに真剣に話し合い刺激し合ってきたからでしょう」と菅原さん。国の政策にただ従うのではなく、自分たちでしくみをどうつくるのか、そのおもしろさが互いの支えになってきたのではないかと振り返る。

持続可能な農業のために

協業化の実験をすすめる遊佐町共同開発米部会メンバー。左から松本一志さん、菅原三勝副会長、菅原英児会長、尾形長輝副会長、事務局の小野寺一博さん同部会が無農薬米の実験に挑戦してから今年で10年になる。現在は、部会員30人が無農薬でのコメづくりを行う。会長の菅原さんは「リスクが大きくてもあえて挑戦するには、安全なコメをつくるという思いのほかにもうひとつ、生産資材の自給という視点も重要なんです」と言う。海外からの供給に依存する資材を使わない生産を極めれば、コスト面でメリットがあるほか、これからどんな時代がくるのかわからない中、海外に依存せず食料を生産する技術を遊佐地区が保有できる、その思いが生産者の誇りと自信になるという。

有機肥料導入実験を示す看板
生産資材自給の一環としてはほかにも、米ぬかや大豆など7~8割を庄内産の原料でつくる有機肥料「遊佐づくし」の導入実験も始めている。
厳しい栽培基準を守りつつ、いかにコストや労力を軽減し、事業として持続可能な農業にしていくかも共同開発米部会の重要課題だ。

大型機械を共同で所有し、数人のグループが堆肥散布や刈り取り、消毒作業などをまとめて請け負う協業化の試みに取り組む。これまで外部委託していた作業を内部で回すことでコストダウンをはかる。若者が高齢生産者の作業を請け負い、いくらかの現金収入にもつなげる。今後、農産物の加工や特産品の開発など年間通じてできる仕事をつくりだすことができればさらに可能性は広がるという。
状況が厳しさを増す中、だからこそ将来を見据え、自ら考え新しい実験に挑戦する共同開発米部会の姿勢は、生活クラブとの提携を通じ世代を超えて受け継がれてきた。

町ぐるみのチャレンジヘ

時田博機遊佐町長鳥海山に降る雨が湧水となって田んぼに流れ、月光(がっこう)川を通じて日本海に注ぐ。遊佐町のきれいな水はおいしいコメづくりに欠かせない。90年に月光川上流にアルミ再処理工場ができた際には、移転を求め遊佐町農協が町に署名を提出、生活クラブも署名とカンパで支援し操業停止と移転を実現させた経過もある。

今、遊佐町からのよびかけで、JA庄内みどりと遊佐町共同開発米部会、生活クラブの4者による「地域農業と日本の食料を守り持続可能な社会と地域を発展させる共同宣言」に向けた話し合いが行われている。

きっかけは、際限なく広がる岩石採取から水を守るため町自らが水源付近の土地約14ヘクタールを購入したこと。その費用には生活クラブのカンパをもとに町がつくった環境保全基金が活用された。そうした経過もあり、これを遊佐町民と生活クラブの組合員が共同で管理・活用していこうという計画が浮上した。環境や食といった互いの生存を守る活動の源にしたいとの思いから「共存の森」(仮称)という名称も検討されている。

遊佐町の時田博機町長は「鳥海山が育むきれいな水を守り、安心な食を次世代につないでいくことはこの地域の使命」と話す。農村と都市が、生産と消費という関係を超え、体験ツアーや援農、定住のあっ旋など新しい形でつながっていくことを目指す宣言だ。
食を支える農業は、それを育む環境とともにある。長年共同開発米部会が取り組む環境に配慮した農業をバックアップする体制が、地域全体に広がろうとしている。


地域から地球を考えるコメづくり
新米の季節到来 新米は水分を多く含むので水加減は1割ほど少なめに
【農薬は成分管理で確実に減らす】

遊佐町共同開発米部会では、農薬の管理を散布回数ではなく成分回数で行う。
年間2回の散布といっても、1回につき5成分を使えば10成分の農薬を使用したことになる。厳密に管理することで確実に農薬を減らしていこうという試みだ。
山形県の慣行栽培基準が20成分であるのに対して、同部会では8成分以下とする。
さらに減農薬栽培は広がっており、2011年には部会員が栽培する全面積の約1割が、3成分栽培または無農薬栽培の田んぼとなった。
一般に農薬を使用する場合は、多少なりとも周辺への飛散は避けられない。遊佐町では地域全体が減農薬に取り組むことで、「どんなに飛散しても8成分以下」と部会員は胸を張る。

【地球の食料を考える

今年はアメリカの干ばつなどで世界的に穀物価格の急騰が伝えられる。途上国の飢餓や政情不安を引き起こした08年の世界的食料不足から5年もたっておらず、食料不足は構造的な問題ともいわれる。
こうした状況に対し部会長の菅原さんは「今、年間1億人もの人が飢餓で死んでいるといわれるのに、日本は60%もの食料を他国に依存しています。何ができるだろうと考えると飼料用米の可能性は大きいんですよ」と言う。

飼料用米は、減反田でつくる家畜のえさ用のコメだ。7割以上を海外からの輸入に頼る飼料の自給力を高めていこうと、04年に本格的に作付けが始まった。 08年の穀物価格高騰の際に注目を集め、国の政策にも積極的に取り入れられている。
「確かに今は家畜のえさ用につくっていますが、いざというときには人間も食べられます。危険分散になるんです。何かのときには地球全体にも回せたらいいですよね」
同部会が食の自給、生産資材の自給にこだわる先には、将来の地球全体の食を考える視点がある。
一連の実験を食べることで支えているのが生活クラブだ。ただ手をこまねいているだけの一消費者ではなく、「食料不足に対抗する手段を生活クラブはもっている、そう考えるとステキじゃないですか」と菅原さんは笑った。

『生活と自治』2012年11月号の記事を転載しました。

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