本文へジャンプする。
本ウェブサイトを利用するには、JavaScriptおよびスタイルシートを有効にする必要があります。
ここからサイト内共通メニューです。

地域の"資源"で確かな食を【美勢商事】

低価格販売の目玉となる冷凍食品。輸入原料と添加物の使用は業界常識だ。
こうしたなか、美勢商事は地域の“資源”を活用し、確かな原材料での冷凍食品づくりを追求する。

地元の新鮮野菜を使用

焼きあげた餃子 刈り取られたニラの根元にキラキラと露が光る。収穫したばかりのニラは独特のきついにおいがなくさわやかな香りだ。「このまま食べてもらいたいほど肉厚で、幅広のいいニラなんですよ」と収穫作業中の大野田美和子さんは言う。
 長野県塩尻市にある美勢商事では、原料野菜から最終製品までの一貫生産をめざし2009年に農業生産法人格を取得。近隣農家から農地を借り、ニラやキャベツを栽培、自社で製造するギョーザなど加工食品の原材料に使う。
 かつて同社の社員としてギョーザをつくっていた大野田さんは、定年退職後この農業生産法人に再就職しニラの栽培、収穫を担う。実際にギョーザをつくっていた経験を踏まえ「朝収穫してその日の午後には加工できるから新鮮で香りが逃げない」と自社栽培のメリットを説明する。農薬は一切使わず、土づくりのため毎年10アール当たり10トンの堆肥を施す。一番の重労働は草取りだ。
 「せっかく工場が高原野菜の一大産地にあるのによそから仕入れるのはもったいないですよね」と同社営業部の利根川大吾さんは言う。最近は塩尻市周辺でも高齢化などにより耕作できなくなる農家が多い。農地を荒らすままにしておくよりは地域の資源として活用、自社製品の原材料を生産したいと考えたのが農業生産法人取得のきっかけだ。野菜の生産に際しては、農薬や堆肥の使用、さらに品種や栽培基準も細かく指定する。
 同社が生産する生活クラブの冷凍ギョーザには、おいしさや安全性に定評のある平田牧場の「平牧三元豚」や国産小麦粉100%の皮、生活クラブの提携生産者の調味料などの原材料が使われる。中でも、地元で収穫された新鮮な野菜をできるだけ使用するのが大きな特徴だ。これがおいしさや栄養素を逃すことなく、地域経済を支え、より安心な食材を提供することにもつながっている。

10円ギョーザの実態は…

今年から新たに自前のカットセンターも設立。野菜の洗浄、カットはここで行う このように原材料一つ一つがわかるギョーザは、もはや市場では少数派だ。市販の冷凍ギョーザ売り場をのぞいてみると、12~20個で200円前後、中には1個10円以下のものもある。
 「10円という価格は本来ありえないんです。これでは原材料にかけられるのは2~3円、肉代にもなりません」と利根川さん。仮に1キロ800円の豚肉をギョーザ1個に約6グラム使うと想定すれば、肉代だけでも確かに5円近くになる。
 ではなぜ10円で販売できるのか。それを可能にするのが「粒状植物性たんぱく」だ。大豆から油を搾ったカスで、見た目は肉そっくり。1キロ200円のものを水でふやかし4~5倍にして使えば1キロ約50円ほどで済む。1個5グラムならたった25銭、さらに1グラムの肉を加えても1円程度に収まる計算だ。市販のギョーザには必ずといっていいほど「粒状植物性たんぱく」の表示がある。
 「それ自体は悪いものではありません。ただ、見た目が肉と似ているだけで味や香りは別物。らしくするために大量の化学調味料や添加物がどうしても必要なんです」。さらに加工用の「粒状植物性たんぱく」は製造工程での薬剤使用や原料大豆の遺伝子が組み換えられている可能性もあるが、確かめるのは難しいという。
 同じことは皮にもいえる。本来、小麦粉と水と食塩があれば作れるはずだが、市販品の表示には、乳化剤、糖質、大豆粉などの添加物名が列挙され、調味料の記載まである皮もある。
 利根川さんによれば、乳化剤は皮を限りなく薄く伸ばしても破れにくくするため、糖質はきれいな焼き色をつけるのに用いるという。「皮だけ食べ比べてみてください。生活クラブのものは小麦粉の味がするけれど、添加物が多いものは水のりのようです。調味料を添加するのはこれを補うためかもしれません」

本物志向と地域循環

 1980年代前半、地域経済の主要な担い手を自負していた同社は、地産地消を原則に長野県を中心にチルド(冷蔵)ギョーザを販売、その市場占有率は60%を超えていた。
 しかし、80年代後半に高速道路が開通すると、首都圏の大手メーカーが県内市場を席巻するようになる。そのとき大手が持ち込んだのが添加物を多用した安価なギョーザで、美勢商事の製品より圧倒的に安かった。
 このまま低価格競争に参入して大量の添加物を使うかと悩んだ末に当時の経営陣は、チルドから撤退し「冷凍」に切り替えることを決めた。冷凍であれば遠隔地への出荷が可能になる。社是である本物志向を貫くため、食の安全に厳しい消費者が多くいる首都圏に販路を求める決断だった。
 大きな転機を乗り越え品質第一の路線を維持し続けた同社では長引く不況の中、低価格化と添加物の多用が業界の常識として定着していくのを危惧する。「わかっていて安いものを選ぶなら仕方ないですが、多くの人は実態を知らないまま買わされているように思います。生活クラブのみなさんは、原料のわかるギョーザの価値やそれを選ぶことが可能だと知っているのだから、ぜひそれを社会に広げてほしい」と利根川さんは期待を寄せる。
 美勢商事は現在、県内に13ある生活クラブ提携生産者と共に、原材料などの地域内自給をめざす「ぐるっと長野地域協議会」にも積極的に参加する。一度は県内の市場から撤退せざるをえなかった同社だが、地元への思いは強く、農業生産法人による事業や「ぐるっと長野」の活動を通し、地域の暮らしや経済を元気にしていくことに今、あらためて向き合う。それが首都圏のみならず、日本の豊かな食の提供につながるとの信念があるからだ。


わかって食べる、おいしいギョーザ
中味丸ごと生活クラブ
 「原材料はすべてみなさんの台所にあるものと同じですよ」と美勢商事営業部の利根川大吾さんは言う。ギョーザの開発には、生活クラブ長野松本支部の組合員が参加した。加工食品の一括表示の分類により、みりん風醸造調味料は発酵調味料、カキ味調味料はオイスターソ一スと表記されるが、豚肉・皮をはじめ、調味料まですべてが生活クラブの提携生産者の製品だ。「機械であんをつくる場合、通常は粉末調味料を使います。液体だとどんなに練り上げてもまとまりづらく、配合や製法など試行錯誤の連続でした」。もともと国産原料を使用し、原料の安全性にこだわってきた美勢商事だが、ここまでのレベルを求められたことはなく、工場全体にとっても大きな挑戦だった。粉末調味料を使えば楽でロスも少ないとの思いもなくはなかったが、生活クラブのギョーザを完成させたことで、本物をつくっているという意識がすべての従業員に浸透したという。

利根川大吾さん加工食品の原料原産地表示を
 食品表示をわかりやすくするため、現在、新しい食品表示法案が検討されている。特に注目されているのが加工食品の原料原産地表示のあり方だ。詳しく知りたいという消費者の声に対し「表示する情報量が増えるとコストがかかる」という業者側の声がこれを阻む大きな要因になっている。こうした中、業者の立場から積極的に表示すべきと発言を続けているのが美勢商事だ。「確かに包材切り替えのときには手間がかかりますが、原料原産地は消費者にとって重要な情報、求められていることは表示したほうがいい」と利根川さん。コストを理由に表示しなければかえって何か隠しているのではと疑われ、業者側の信頼を失うことにもなりかねないと指摘する。メーカー側からのこうした発言は、原料原産地表示実現をめざす消費者にとって大きな後押しとなる。

ギョーザの焼き方・ワンポイント
  1. 熱っしたフライパンに薄く油を敷き、凍ったままのギョーザを20個敷き詰める。
  2. フライパンに150ccの水を入れ、ふたをして強火で3~4分蒸し焼きにする。
  3. 水分がなくなったら大さじ1杯の油を回し入れ、皮をパリッと焼く。
  4. 皮が破けやすくなっているのであまり箸でいじらない。焼き色がついたころ、フライパンをゆすってきれいにはがす。
*一度蒸してから冷凍しているのであたためるくらいの気持ちで。生ギョーザを焼くよりは水も少な目に。水が多いと蒸しすぎてうま味が抜け皮もベチャッとなるので要注意。

『生活と自治』2013年7月号の記事を転載しました。

生活クラブをはじめませんか?

40万人が選ぶ安心食材の宅配生協です

本文ここまで。
ここから共通フッターメニューです。
共通フッターメニューここまで。