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元祖のプライド 使わずに済むものは 使わない

辛子めんたいこ発祥の地といわれる山口県下関市。ここで戦後まもなく創業したイリイチ食品は、伝統の技を用い、添加物に頼らずにめんたいこを製造する。

より美しくよりおいしく…

 店頭に並ぶピンク色でツヤツヤの辛子めんたいこ。パッケージの表示には多くの添加物名が書かれている。「いつごろからでしょうね。これほど添加物を使うようになったのは。お店のお客さんはどうしてもきれいなほうに手を出すでしょう? より美しくよりおいしく、より日持ちがするようにと添加物が開発されるたびに業者が持ち込んで、業界全体が自然にそうした流れになったんです」
 「泰山食品商行」を通して生活クラブと提携する「イリイチ食品」の社長、高井秀樹さんはそう話す。高井さん自身、かつては添加物の使用になんの疑問も持たなかった。「問題が多いとされる、発色用の亜硝酸ナトリウムさえ、以前はまったく使用基準がなかったんですよ。素手でつかんでバッとたるに入れるような時代でした」
 魚卵の成分と反応しその色を鮮やかに変える亜硝酸ナトリウムは、抗菌効果もあり、今やめんたいこ製造に欠かせない。だが、魚に多く含まれる第2級アミンと反応して発がん性物質を発生することがわかり、現在、魚卵については1キロ当たり5PPM以下と使用基準が定められている。
 「かつては腐る寸前の黒い魚卵でも亜硝酸ナトリウムを大量に入れればピカピカによみがえったものです。あまりの効力に、よい面ばかりでなく悪い影響もあるのではと心配になります」

増え続ける添加物

 今も新しい添加物は次々に開発される。みずみずしく見せるもの、つややうま味を引き出すものなど、その数に際限はない。「一つ足したら何か引けばいいのに足し算ばかり、化粧の上塗りみたいなものなんです」と高井さんはため息をつく。
 だが、それだけ使用されるものは一体どう表示されるのか。
 「ここですよ。『調味液(アミノ酸等)』とあるでしょう。この『等』の中に、リンゴ酸ナトリウムやアラニンなど4種類も含まれるんです」。高井さんは市販品の表示を指してそう説明する。製品の仕様書には、使用する原料を第3次工程までさかのぼって記載するが、店頭での表示は「等」のみ。消費者にわかるはずもない。
 「国が検査して決めた基準を守れば安全という意見もわからなくはありません。ただ、添加物は量だけでなく品質や作られ方にも問題があるようです」と高井さん。
 それは、鈴鹿医療科学大学教授、中村幹雄さんの指摘でも裏付けられる。「食品添加物の製造は今、国内からの撤退が相次ぎ、海外、特に中国での製造が増えています。誰が、どのように製造しているかわからず、質も正確に検証できていません。国でいくら検査しても純度の低いものは安全とは限りません。さらに遺伝子組み換え技術を用いて製造される添加物も増えています」
 イリイチ食品では今も添加物を使っての製造も行うが、工場は別にして従業員の行き来も制限するなど添加物不使用品の製造に混入しないよう管理を徹底する。「使わずに済むなら使わないほうがいい」が製造現場にいる高井さんの実感だ。

原料の質、技と時間で

 イリイチ食品がつくる生活クラブの消費材「からし明太子(めんたいこ)」の原材料は、「卵巣、唐辛子、砂糖、食塩、昆布だし、ゆず」。28年前、生活クラブから依頼を受けた泰山食品商行の要請がきっかけで製造を開始した。当時はめんたいこブームで、九州地方特有の食品だっためんたいこが全国的に広がった時代。大量の添加物使用があたりまえで安心して食べられるものはほとんど手に入らなかったという。
 「昔ながらの製法でつくればできるだろう」と引き受けたが、実際には試行錯誤の連続で、なかなか思うような味や形にならなかった。まず、しっかりした原卵でないと身を締める添加物なしではどろどろになってしまう。グルタミン酸ソーダを使わずいかに味を引き出すかも大きな課題だった。
 「泰山食品商行と生活クラブの職員が毎日やってきて、無添加とはどういうことかこんこんと教えられました。こんなにうるさいならもういいと思いましたね」と苦笑する。それでも両者の熱意に根負けして研究を重ね、原料の質を吟味し手間や時間をかければ添加物なしでの製造が可能との結論に達した。重いたるを何度も天地返しする塩漬け作業は一般には機械で行うが、魚卵ひとつひとつの状態を確認しながら手作業で行うことで身の締まり具合と塩加減を調整できる。物足りないと思われる調味液も時間をかければ味がよく染みこむことがわかった。
 水産資源の乱獲などもあり、現在魚卵の質は以前よりかなり悪くなっているという。完熟卵は少なく、水分の多いものや未熟卵がほとんどだ。それでも添加物を使えばしっかりしたきれいなものが低コストで生産できる。「無添加を続けるには原料卵の吟味をより慎重にしなければならないんです」と高井さんは今後の課題にも触れる。

資源を生かす水産加工を

 産地との直接提携を基本とする生活クラブの生産者として、加工業者との間を仲介するのが泰山食品商行。だが、常務取締役の佐藤久さんは「うちは問屋でも商社でもなく魚屋」と言う。
 現社長は新製品の開発に多くの力を注ぎ、いかに安心でおいしい水産物を手軽に食卓に普及させるか、社を挙げての研究を欠かさない。製品レシピを開発してはそれを高い技術で製造できる業者を探し、生活クラブなどへ開発提案する。産地と消費者をつなぐ提携の一端を担うとの自負も強い。
 乱獲による資源の枯渇や地球温暖化による漁獲の変化など、日本の水産業の行方に課題は多い。
 貴重な水産資源をいかに無駄なく、安心できる食材として提供できるか、泰山食品商行は、思いを共にする製造加工業者と連携することで、水産加工が担う難しい課題解決へのチャレンジも視野に入れている。


◆持続可能なおいしい明太子を

【ひと味ちがう、国産卵】
 イリイチ食品では、原材料として主にロシアのカムチャッカ沖でとれるスケトウダラの卵を使うが、一部国産卵も扱う。「本当は全部国産を使いたいんですがとんでもない値段になってしまうんです」と社長の高井秀樹さん。ロシア産の卵は船内で凍結、そのまま工場に納品され、解凍してから塩漬け工程と調味に入る。一方、国産卵は北海道近海でとれたものを冷凍せずにそのまま塩漬け加工し、半製品となったものが納品され調味される。「生のまま塩潰けしたものはつぶもプチプチしているし、冷凍していないから原卵自体の味がちがいます。一番いいものは唐辛子をまぶしただけでもおいしい」と高井さん。ただし、国産卵は北海道でも寒い時期にしかとれず流通量も全体の15%にも満たないため、博多では最上級品として扱われる。信頼性だけでなくおいしさの面でも価値のある、大切にしたい国内資源だ。

【添加物と資源保護】
 めんたいこの原料卵を産するスケトウダラの寿命はおよそ18年。一番いい卵を産むのが7~8歳のころといわれている。「昔は卵優先にとっていたから資源保護も行われていたんですが、最近はタラの身の需要が高まってきてまだ育っていない卵を抱えているような魚体までとってしまう。卵の質も低下するし次の年の漁獲も減ります。未熟卵の比率は圧倒的に高まりました」と高井さん。
 一方で、国内では価格競争の果てに大手メーカーから100グラム398円というめんたいこが登場。「これが販売されたときは参りました。未熟卵でも添加物を使えばこの価格でできるんです。以前よりどんどん安く質も悪くなって、めんたいこ業者はみんな消耗しています」と高井さんは肩を落とす。添加物の使用を常識とする低価格競争は、将来の資源問題を見えにくくさせているといえそうだ。

【これはおすすめ! めんたいこ鍋】
 高井さんの長男で営業主任を務める顕さんは、料理好きでめんたいこの食べ方にも研究熱心だ。一押しが「めんたいこ鍋」。最近はマスコミでも取り上げられる人気メニューの作り方、おいしさのポイントを聞いた。

●キャベツ、ニンジン、モヤシ、シイタケなど好みの具材を鍋に入れ、めんたいこを100~150グラムほどのせて鶏がらスープを注ぐ●酒、しょうゆ、ショウガ・ニンニクのすりおろしで味を調える●めんたいこを崩しスープに混ぜると極上のだし汁がでて豚骨スープのようになる。好みで、紅しょうが、高菜、キムチなどを入れる。仕上げに麺を入れてもおいしい。

『生活と自治』2014年4月号の記事を転載しました。

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