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油に宿る種子の力

本紙で「上がり目 下がり目 えだもんの目」を連載中の料理研究家、枝元なほみさん。その第2回(8月号)でも触れたように油への関心は高い。そんな枝元さんが生活クラブの提携生産者「米澤製油」独自の製造工程を見学、生産者と油について語りあった。

話し手/森田政男さん(代表取締役)、安田大三さん(東京出張所)、山崎栄さん(技術顧問)

いじりすぎないからおいしい

「一番搾り油はできたてはクリームのよう。今日一番の感激」と枝元なほみさん[ 枝元 ] 仕事柄、油は何種類も使いますがベースにしているのはこのなたね油。揚げ物にも使えるし生で回しかけてもおいしいです。そういうなたね油はそうはないんです。
[ 森田 ] うれしいことです。
[ 枝元 ] 特に揚げ物をすると質の差がはっきりでますね。量販店で売られている低価格の油だと揚げているうちに気持ち悪くなるのですが、何がちがうのでしょうか。
[ 山崎 ] この油だと胃にもたれないのはなぜかとよく質問されます。証明はできないのですが、一般の搾油工程ではノルマルヘキサンという溶剤を使って抽出しますが、当社はそれを使わず機械で搾ります。ガム質や遊離脂肪酸など不純物を取り除く精製工程も、一般にはカセイソーダやリン酸などを使いますが、当社は湯で洗います。そうした製造上の違いが関係しているように思います。
[ 枝元 ] 見学させていただき、ナタネの粒が油になる様子が目にみえてよくわかりました。砂糖や塩も精製しすぎると味がとんがっておいしくありません。薬剤を使うと素材が本来持つバランスが崩れてしまうのかもしれませんね。
[ 山崎 ] 確かに、ヘキサンを使う場合は熱を2回かけるし、カセイソーダも遊離脂肪酸がきれいにとれる代わりに油をいじめます。いずれも油への負担は大きいですね。
[ 安田 ] 最初にこの油ができたとき天ぷらの味の違いにみんなびっくりしました。当時の技師が分子の移動、変形が多いと油の酸化は早くなると言っていました。薬剤を使わなければそれだけ分子をいじらないで済みます。種子の生命力だと思い当たりました。1粒の種はすごい力を持っています。植えれば芽を出し花を咲かせ実をつくります。過酷な条件をひとつひとつ排除していった結果、その力を損なわない油ができたと思います。

食べることを取り戻す

薬剤を使わす精製する湯洗いは6回繰り返される[ 枝元 ] 薬剤を使わない製造に挑戦しようと思ったのはなぜですか。
[ 安田 ] きっかけは、カネミ油症事件でした。脱臭のための熱媒体として使われていたポリ塩化ビフェニール(PCB)が油に混入して多くの人に健康被害がでた事件です。それを聞いた本社のおばあちゃんが「おっかねえ油、つくるんじゃねえぞ、食べたくないから」と言いました。そのひとことで、つくり方を変えようとみんなで決めたんです。
[ 枝元 ] じーんとくるお話です。
[ 安田 ] 熱媒体を当時の日本では珍しかった電熱加熱に変え、製造方法の実験も始めました。おばあちゃんのひとことで、食べる人の立場を考え安心して食べられるものをつくろうと変わったんです。
[ 枝元 ] おばあちゃん、えらい!その対極にあるのが遺伝子組み換え(GM)作物ですね。今、輸入ナタネの9割以上はGMになっているそうです。油の質や安全性への影響はまだわかりませんが、生態系には確実に影響を与えています。これを使うこと自体、自ら地球環境を滅ぼすことになるのではないかと怖くなります。
 GMナタネの2代目は発芽せず、自殺する種子と言われています。芽がでてこないような種子の油を食べて、人間が生きていきたいと思う気持ちになるでしょうか。
[ 森田 ] 神様が人間に知恵を与えすぎたんでしょうか。
[ 枝元 ] 知恵じゃなくて欲のような気がします。本当の知恵は、さっきのおばあちゃんみたいに危ないことをするなと教えることです。
[ 山崎 ] 家で料理をすれば使っている食材の違いがわかるようになりバランスのよい食事ができるようになります。料理の楽しさがわかれば外食やスナック菓子の摂取も滅って子どもの肥満も少なくなるのではないでしょうか。ぜひ、料理をする人を増やしてほしいですね。
[ 枝元 ] 人口が増えて産業や貿易が発達して、自分の食べるものさえ自分の手が及ばない領域でつくられるようになってしまいました。でもこのまま環境破壊が進めば、地球は7つあっても足りないとも言われています。もう一度、食べることを自分の手に取り戻していかないと。買うより料理をつくるほうがずっと豊かだと多くの人に知ってほしいです。料理をしながら台所の窓を開ければ、材料のこと環境のこと、すべてが社会につながっているんです。

つながりが栄養に

[後列]森田政男さん(左)、枝元なほみさん(中央)、山崎栄さん(右)[前列]山口岳彦さん(左)、安田大三さん(右)[ 森田 ] GMの問題以前に、日本のナタネの自給率はたった0.04%だったんですよ。
[ 枝元 ] 0.04%って、1万人に4人の割合ですよね? そんなに少なかったんですか。
[ 安田 ] かつては30万トン近く国内で生産されていたんですが今は1500トン程度です。国産品種は、健康に影響のあるエルシン酸を多く含むとして敬遠されたこともあったんです。でも、自分たちが食べる油脂資源をどうするのかという思いもあって、低エルシン酸ナタネの開発に成功した技術者との出会いをきっかけに、自給力を高めていこうと生活クラブとともに運動を始め、各地に生産者を増やしていったんです。今、ようやく0.06%を超えるほどまで回復しつつあります。
[ 枝元 ] そもそも自分が食べるものを買ってくれば済むと考えるのが間違いですよね。相手が売ってくれなくなればすぐ飢えてしまうのに。食べることは生きることの根幹で、それをそこまでないがしろにしていいのかと思います。
[ 安田 ] 国産ナタネの約半分は今、米澤製油で搾っていますが、消費者にはなんとか今後も国産ナタネを使った油を安定して食べ続けてほしいです。そうでないとせっかく開発した国産ナタネも種子さえなくなってしまうかもしれませんし、生産者も作り続けられなくなりますから。
[ 枝元 ] 食料確保以上に、こうしてつくってくれる人とつながれるのが国産の一番大切な意味のように思います。人にとっては、食べものの作り手のプライドや思いを知ることもすごい栄養になるんですよ。今日は私も、こんなふうに大事につくってくださる方々とつながれてすごく元気になりました。


◆ナタネの精、いただきました ~見学を終えて~

枝元なほみ

油は植物の精。
▲卓上用におしゃれなボトル入りも新登場。「欧州では、オイルとビネガーを食卓に置き、好みで野菜にかけるスタイルが主流」と枝元なほみさん。手軽に使いこなしてみては? ナタネを栽培する人がいて、そこからその精を大事にとりだしてくれる工場の人たちがいて、そのつながりの中で料理ができるんだとあらためて思いました。
 この工場には年代を重ねたもののいい空気が満ちています。そして働く人たちの志の高さ。薬剤を使わないことにプライドを持っていて説明を聞けば思わず納得、うそがありません。近代的な大規模設備で自動的に目にみえずつくられる食べものが多いなか、人が生きていくサイズに近い規模だからこそ、「おいしさ」が流れていかないように思いました。
 私は、まずなんでも口に入れてみるんです。農薬を使っていない場所の土は、においを嗅いだり、ちょっと口に入れてみることもあります。今回も工場で一番搾りのできたての油をなめさせてもらいました。まるでクリ-ムのようなこくとうま味。本当においしくて、ナタネ自体がおいしいんだ、植物の力が生きているんだと感じました。
 最近はみんな太るからと油を嫌って、ノンオイルの調味料とか脂肪がつきにくい油とかを使いたがるけれど、前者はほとんど化学調味料の味だし、後者には発がん性の疑いがあると製造中止になったものもありましたよね。ていねいにつくったものは体がちゃんと受け入れます。私が言うのもなんだけど、こういう材を使って家庭で料理をつくれば、決してへんな太り方はしないんです。ごちそうって外にあるのではなく家の中にあるものなんですよね。(談)

【枝元なほみさんのおすすめ】
キャベツとキュウリのサラダ、ニンジンドレッシング添え(奥)と夏野菜の揚げびたし●夏野菜の揚げびたし
①ナス、カボチャ、シシトウなど好みの野菜を食べやすい大きさに切る。
②鍋に油を注ぎ、野菜を素揚げする。
③熱いうちにめんつゆに漬けてできあがり!あればタマネギのスライスなどをちらして。
*ナスは塩水で軽くあくぬきし水分をよくふきとって高い温度であげると鮮やかな色に。カボチャは少し低めの温度で。

●ニンジンドレッシング
ニンジン1本、タマネギ1/4個、塩小さじ1、なたね油1カップ、米酢1/3カップ、昆布茶小さじ1/2~1。
ニンジン、タマネギはすりおろして、先に油に混ぜる。
酢を先に入れると色が悪くなるので注意。あとは材料を混ぜるだけ。油、酢の量はお好みで。

*油を使いこなすワンポイント
自分流の揚げ物システムを構築しておくと楽。油こしとセットで所定の場所に置き、揚げ終わったら熱いうちにこして元に戻す。安い油はすぐに変質するが、質のいい油は何度でも使える。

『生活と自治』2014年9月号の記事を転載しました。

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