庄内の農家を元気に、地域を活性化するために(丸山 悟さん)
私ども羽黒・のうきょう食品加工有限会社がある山形県庄内地方は、農業が基本の地域であり、農家が元気でないと地域が活性化しません。当社は、JA庄内たがわの加工部門として、安心・安全を基本に、環境問題や食糧自給・農家の所得アップを目的に設立されました。地元産を基本に、あくまでも国産原料にこだわり、とくに、地元に眠っている資源の掘り起こしと消費材の開発を進めています。
農家を助けるために始まった生活クラブとの提携
今から約30年前、JA庄内たがわの前進である羽黒町農協は、全農を通して生活クラブに生鮮の農産物を供給していた農協でした。ある年、特産のアスパラガスが強風被害で曲がってしまい、生のままでは販売できなくなったため「アスパラ漬」として製品化し、生活クラブに消費材として買っていただいたことがきっかけとなり、加工部門がスタートしました。その後、さまざまな消費材の開発を手がけるようになり、とくに、浅漬けの分野では組合員の皆さんに好評をいただいています。現在では、地元に眠っている資源の掘り起こしとして、自家用たけのこの加工を生活クラブと一緒に進めています。
地元で消費するだけだったたけのこは
地域に眠る資源だった
庄内はたくさんたけのこを食べる地域です(庄内では月山筍などの細いたけのこと区分して「孟宗(もうそう)」といいます)。郷土料理の「孟宗汁」は誰もが好む料理です。地元には孟宗竹が点在しており、自家用たけのこを栽培している生産者が多くいます。しかし、採れる時期が遅いため、地元産が採れる前に県外産を食べ始め、地元産が採れ始める頃には食べ飽きてしまうという状態で、せっかく採れた地元産は親戚や知人にお裾分けすることがほとんどでした。
2009年頃、中国産たけのこの産地偽装問題が発生。その影響で国産たけのこの需要が高まり、いっきに品不足になる事態となりました。これは今後、成長が期待できる分野になると考え、自家用たけのこを加工原料として集める取り組みをスタートしたところ、初年度はJA庄内たがわの組合員から約1,500kgのタケノコを集めることができました。
その年の山形親生会総会でこの取り組みを発表したところ、連合会の開発担当者から、「ぜひ、その集めた原料たけのこを生活クラブの消費材に使わせてもらえないか」との打診がありました。生活クラブでも春巻などの消費材を一時、生産できない状態になっていたのです。その後、この取り組みをJA庄内みどりやJA鶴岡にも呼びかけ、5年目となった2014年には約130tの原料を集めることができ、生活クラブの春巻、中華丼、シュウマイの具材として供給しています。また、当社でも「たけのこの土佐煮」や「たけのこ水煮」などを新たな消費材として開発しました。
この取り組みのおかげで、地元で消費されるだけだったたけのこが農家の収入源となり、所得アップにつながり、翌年以降の生産意欲の向上につながっています。また、竹林が手入れされることで竹林の環境が維持されることも期待され、一石二鳥です。このように栽培する手、作り上げる手、食べる手がひとつになって、抱えている問題を解決していく姿勢が生活クラブのパワーになっていると思います。
農産物加工生産者がともに課題に取り組む
「庄内協議会」の発足に向けて
米価の下落、後継者不足と、昨今の農業を取り巻く情勢は非常に厳しく、私ども農産物を加工する会社にとっても大きな問題になっています。現在、直面している最大の問題は、生産農家の高齢化が進み、若い生産者がいない状況が慢性化していることです。それによって起こる原料不足をどうするか――。
魅力ある農業でなければ、新規に取り組む生産者は出てきません。何とか原料野菜の減少に歯止めをかけるべく対策を模索していたなか、生活クラブの呼びかけで、庄内で農産物の加工を行なっている生産者が集まり、それぞれが抱えている問題を持ち寄り、問題解決のために広い視野で議論する場をもとうということになりました。
たとえば当社では、夏場の小茄子のように、日々の管理・収穫作業が必要な作物の減少が課題になっており、今後の消費材の供給が心配されています。山形県は夏場の小茄子の一大産地でしたが、現在では20年前の約4分の1しか生産されなくなっています。この課題について、この会のなかで「農家任せにしていた原料調達を会社として真剣に取り組むべきだ」との議論になり、2015年からは当社が収穫作業を請け負う取り組みを始めることになりました。今後のモデル的なケースとして進めていき、最終的には自社農場を立ち上げることを想定しています。
2015年度は「庄内協議会」の立ち上げに向けた準備会を設置し、2016年度からの本格的な活動に向けて準備を進めていきます。皆、抱えている悩みは同じです。この会が、さまざまな意見のなかから解決策を見出していく足がかりになることは間違いありません。
これからも地元の農家が作る農産物を大事に加工して、組合員の皆さんに安心して召し上がっていただけるように取り組みを続けてまいります。
(2015年4月掲載)
※掲載時期によりパッケージが現在のものと異なる場合があります