ロールペーパーの規格・基準には深い意味があるのです。新橋製紙株式会社
提携品目:ロールペーパー、ペーパータオル
生活クラブ独自のトイレットペーパーとして「ロールペーパー」が誕生したのが1983年、「無漂白ロールペーパーシングルソフト」として現在の規格になったのは1997年、以来、18年間のロングセラーとなっています。「ロールペーパー」という名前は、トイレット以外にも、食器洗い前の油落としなど、多目的に使えるよう意図してネーミングされました。
当社は、1948年に静岡県富士市にて設立。1974年に当時の富士市長の紹介で生活クラブと出会い、1975年より再生紙によるトイレットペーパーの供給を始めました。私の入社は1999年、ロールペーパーがリニューアルされて2年が過ぎた頃です。このときはじめて生活クラブの存在を知りました。入社当時は品質管理を担当し、製品検査や工程管理をしていましたが、ロールペーパーの規格・基準には疑問を持っていました。
無漂白ロールペーパーシングルソフトの規格・基準には、1巻の幅108ミリメートル×長さ100メートル、100パーセント再生紙使用、漂白剤をはじめ添加物を極力使わない、などが定められています。
「無漂白」であることは、ダイオキシンの発生抑制に有効ですから納得できます。でも、合成界面活性剤は紙の厚みを均一にするなどのために、どの家庭紙工場でも一般的に使われていましたので、なぜこのような規制があるのか、と驚きました。当時の私は、生活クラブの規格・基準の真意を理解しないまま、「生産者の義務として規格・基準を遵守する」「薬品嫌いな人たちだから、できるだけ使わない」という姿勢でした。
お肌の弱い人も肌荒れしないロールペーパー
ロールペーパーの原料は古紙100パーセントです。組合員のみなさんから回収された注文OCR用紙も一部含まれています。ところが、この原料古紙が曲者で、同じグレードでも昨日の入荷品と今日の入荷品とでは品質が違い、製品の一定の品質を維持するのは簡単なことではありません。中には感熱紙などのような再生困難な古紙もあり、不純物が混じっていると穴があいたり、途中で切れたり。製造工程でトラブルを起こすことも少なくありませんし、事故(クレーム)を発生させて、ご利用の方々にご迷惑をおかけする可能性もあります。
これらのトラブルを防ぐために合成界面活性剤などが使われているケースもあるようです。薬品を使えば簡単に対処できますが、消費材の規格に照らし合わせると、使えません。薬品を使わずに問題を解消するには機械を改造するなどの対処が必要になり、数年がかりで改善に取り組む場合もあります。これには少なからず苛立ちがありました。「なぜ、そこまで」「過剰な基準ではないか」との思いがあったのも事実です。
ところが、2009年6月の「Sマークフェスタ」(*)で忘れられない言葉と出会います。
「市販のトイレットペーパーを使うと肌荒れするのですが、生活クラブのロールペーパーは肌荒れしません。なぜですか?」。ある組合員の方がお尋ねになりました。まったく予期しなかった質問に、曖昧な答えを返すので精いっぱいでした。
生活用品は誰でも使うもの。それはわかっていたつもりでした。でも、その「誰でも」の中にはお肌が敏感な方もいる――。それまで自分の立場でしかものを見ていなかったことがとても恥ずかしくなりました。
何が違うのか? 漂白剤か? 合成界面活性剤か? それとも別の要因か? 明確な答えは今も出ていません。しかし、生活クラブの規格・基準で作ったロールペーパーはお肌が過敏な人でも使うことができる。この事実に、それまでのモヤモヤは吹き飛びました。「この規格・基準で間違いない!」と確信したのもこの日です。
今は交流会の担当をしていますが、組合員の方から「お肌の弱い方にロールペーパーの愛用者が多い」とお聞きすることも少なくありません。
(*)Sマーク消費材(生活クラブのおすすめ消費材)を生産者が直接、組合員にPRするために開催された交流会。
丈夫で使う量が少なくてすむので、結局、お得です
ロールペーパーが18年間のロングセラーになっているもうひとつの理由は、経済性・利便性にあります。見かけの値段はスーパーなどの特売品の2倍程度になりますが、1巻の長さが100メートルあることに加え、紙の厚さは1.2倍ほど、強度は1.5倍程度あるため、シングルで十分。丈夫で、1回の使用量は市販品より少なくてすむので驚くほど長持ちして、結局お得になります。ロールペーパーの根強い愛用者の方々はこの経済性も重視されています。
市販品からロールペーパーに切り替えるときは、使用する長さの目安を2~3割短くするとよいでしょう。さらに、水洗トイレでほぐれやすいので、下水道や浄化槽への負荷も少なくなり、市販品の3分の2ほどのコンパクトサイズのため収納場所もとりません。
のべ1,000人の組合員の皆さんが知恵を出し合ってできたロールペーパーの規格・基準には深い意味があるのですね。まだ発展途上にあり、改善努力を続けなければならないと思っています。それにしても、人にも環境にもお財布にも優しい規格・基準が、わが社の発案ではないことは悔しい限りです。
【2015年5月掲載】