放射能の影響を市民自ら監視 2014年度甲状腺検査活動
子どもたちの健康への放射能の影響について福島と他地域を比較するため、生活クラブは2012年度から毎年、甲状腺検査活動を行なっています。2014年度は各地域で736人が受診、その結果がまとまったことを受けて7月19日に東京で報告会を開催しました。
(2015年8月3日掲載)
新たに11の医療機関が活動に協力
生活クラブは「福島の子どもと知る権利を守る活動」として、子どもの甲状腺検査活動をすすめています。その目的は福島県が行なっている甲状腺検査に対して自主検査を行なって結果を比較すること、および県などによる情報管理や操作を監視することです。
また、それ以外にも右の3つのねらいがあります。
これらの目的のもと2014年度は21の地域で甲状腺検査が行なわれ、合わせて736人が受診しました。
生活クラブ連合会の渡辺繁美企画課長は「2012年度からの検査継続者は245人で、2014年度は新たに303人が参加しました。医療機関も新規に11ヵ所の協力を得ることができ、福島県郡山市でも検査活動を開始することができました。一方、検査数の違いなどから福島県のデータと単純比較するのはむずかしい」と、概要を報告しました。
*2014年度「生活クラブ生協甲状腺検査活動報告書」はこちらをご覧ください(PDF)。
国は甲状腺がんの被害を10分の1に過小評価
私たちの甲状腺検査活動を監修する道北勤医協・旭川北医院院長の松崎道幸さんは講演で、福島県が行なっている甲状腺検査で126人の子どもが甲状腺がん、もしくはその疑いがもたれていることに言及し、「国は100万人に1人の確率といってきたが、当初の予想をはるかに上回っています。政府は被害を10分の1くらいに過小評価しているのではないか」と、懸念を示しました。
甲状腺がんは、ホルモン分泌の関係で女性のほうが発生する確率が高いといわれています。現に日本の子どもの自然発生的な甲状腺がんの男女比は1対4.3の割合です。ところが福島県の子どもの甲状腺がんの男女比が1対1.4~1.9の割合であることを松崎さんは示し、「福島で発生している甲状腺がんは、自然発生ではない可能性があります」と指摘しました。
福島県の甲状腺検査は2014年度から本格検査が始まっていますが、今後も注意深く見守る必要があります。
松崎さんの講演ファイルは、下記からダウンロードできます。
http://yahoo.jp/box/Uel6Xt
活動の継続が福島への理解、共感に
福島からの現状報告では、生活クラブふくしま理事長の大津山ひろみさんが「暮らし続ける限り放射能から逃れることはできません。その影響により発症するかもしれない重苦しさが絶えずあります。自主避難をする人も夫と離ればなれで暮らすケースが多く、放射能への不安か、家族と離れて暮らすことかの“究極の選択”を迫られる状況です」と語りました。
福島では放射能に不安を感じていても口にできない風潮が強く、「生活クラブでは放射能問題を話し合える場を確保していきたいと思います。福島県の甲状腺検査は2年に1回ですが、生活クラブは1年に1回の検査を続けていきたいと思います」と、大津山さんは抱負を述べました。
続いて開かれてパネルディスカッションでは、各地域で行なわれた検査活動を代表して生活クラブ茨城理事の魚津真喜子さんと生活クラブ神奈川副理事長の戸田美智子さんが登壇。魚津さんは「活動に協力してくれる病院を探すことを通じて、地域で問題意識を共有できる医師と出会うことができました」と成果を話しました。また戸田さんは2015年度に向けて「甲状腺検査を呼びかけ、継続していくことが、福島の人たちが抱える問題への理解や共感につながっていくと思います」と語りました。
生活クラブは2015年度も各地域で甲状腺検査活動を実施していきます。
◆福島への関心を高めていきたいと報告会に先立って、映画『小さき声のカノン』の上映を行ないました。
監督の鎌仲ひとみさんは「東京電力福島第一原発の事故から4年が経ち風化が進んでいますが、福島に暮らす方が救済されたわけではありません」と話されました。