生活クラブとのつながりでつくり続ける、こだわりのりんご紅玉(菊地 美津雄さん)
組合員が農協婦人部の家に分宿して農業体験したのが提携のきっかけ
私たちの町、大江町は山形県のほぼ中央に位置する中山間地にあり、夏は暑く、冬の寒さは厳しく、昼夜の温度差が大きい、典型的な盆地気候の町です。町内には日本三大急流のひとつの最上川と、朝日連峰を源流とする月布川が流れています。人口は約9,000人と小さな町ですが、たくさんの農産物を生産しており、農業が非常に盛んです。
さて、生活クラブとの出会いは1976年6月、生活クラブの組合員が旧大江町農協(現・さがえ西村山農業協同組合大江営農生活センター。以下、JAさがえ)婦人部を訪れ、農家に分宿して農作業体験や交流会を行なったのがきっかけでした。このときの農業と農家の生活を理解しようと努める組合員の方々との出会いから、生活クラブと旧大江町農協との取り組みが始まりました。生活クラブの「価格は再生産を保証する」「より安全な食物を」という考え方は画期的で、私たちの「りんごの無袋栽培による完熟で本物の味を目指す」という考えにも共通するものがありました。消費材の取り組みから始まり、組合員と生産者の交流へと発展していきました。
元中学校寄宿舎・渓親寮を拠点に交流会を開催
1978年にりんごとおみ漬けの供給が開始されました。ラ・フランス、干し柿、トマトなど取り扱い品目が増加していくとともに、毎年5月上旬に開催している、りんごの花の下での交流会など、組合員と生産者の交流会が始まりました。これは、大江町の都市交流事業として行なっています。
また、1987年に町から寄贈を受けた元中学校寄宿舎・渓親寮を「協同村」を位置づけ、ここを中心に交流が行なわれるようになりました。地区住民・行政・JAのなかから渓親寮協力会が発足し、世話人的な役割を担っています。その後、青果物の取り組みを行なうなかで、生活クラブ提携産地協議会が発足するに伴い、JAさがえ内に生活クラブ提携産地大江協議会(提携農家の集まり)が発足し、出荷組織の代表が組織委員となって活動を続けてまいりました。このあたりから、「生活クラブとJA」のつながりから、「生活クラブとJA・提携農家」のつながりへと広がっていきました。
生活クラブ提携産地大江協議会の発足後は、会を中心に提携農家との交流を図り、取扱品目も増えました。また、それととともに提携農家の数も増え、とくに、果樹栽培が多く、野菜栽培の農家がほとんどいなかった大江町において、現在はのべ200名近い数にまで増加しており、現在も増加中です。
農薬を減らして栽培している、こだわりのりんご紅玉
これから秋にかけて、果実部門ではりんご(6品目)、ラ・フランス、果菜類では枝豆(秘伝)、こなすなどが最盛期を迎えます。なかでも、りんご紅玉(こうぎょく)の取り組みには力を入れています。
紅玉は、やや小ぶりの丸いりんごで、その名の通り、濃い紅色に色づくのが特徴です。果肉は緻密でしまりがあり、甘味とともに酸味もきいていて、香りも芳醇。生食のほかに、お菓子づくりにも向いています。大江町での収穫は9月下旬~10月上旬になる中生(ちゅうせい)種で、晩生(ばんせい)種のふじと収穫期が重ならず、貯蔵力もある品種です。
栽培方法にもこだわりがあり、「チャレンジ紅玉」という形で、生活クラブ向けに農薬を減らして栽培しています。8月中旬以降は農薬散布を行なわず、現行栽培より3~4回分の農薬を減らした栽培方法です。紅玉の収穫は花が咲いてから約150日後。大江町では10月上旬が適期で、この頃になると鮮やかな紅玉が、りんごの木いっぱいに実ります。ほどよい酸味と甘みがのった、おいしい紅玉のできあがりです。今年も皆さまのもとにおいしい紅玉をお届けします。
今後の課題としては、取り組みを開始した頃(原点)に戻り、組合員と直接、顔の見える交流を行なうことで、多くの方に産地と、産地のこだわりを知っていただくこと、また、消費材へのこだわりを生産者が理解することを目的に活動していきたいと考えています。
(2015年9月掲載)