被ばくの不安を抱える家族のためのリフレッシュツアー 参加者と開催者の報告・交流会を行ないました
原発事故による放射線量が比較的高い地域に暮らす組合員やその家族を対象に、各地の生活クラブ生協は、今年の夏休み期間もリフレッシュツアーを開催しました。開催の経験を今後に生かすため、ツアー参加者と開催地の担当者ら約60人が福島県郡山市に集まり、リフレッシュツアーの開催報告と交流の会を行ないました(10月9日開催)。
今年度から栃木県北部の組合員もツアーに参加
東京電力福島第一原発の事故による放射線外部被ばく・内部被ばくの不安を和らげる一助として、2011年度から各地の生活クラブ生協は福島の子どもや家族を招くリフレッシュツアーを開催してきました。2015年度も夏休み期間中に12企画が実施され、あわせて198人が参加しました(表参照)。
この経験を共有し、来年度以降も開催するツアーをさらに充実させるため、ツアーに参加した福島・栃木の組合員と、企画した13地域の組合員・事務局メンバーが、10月9日に福島県郡山市に集まり、リフレッシュツアー報告交流会を行ないました。今後のツアー企画の内容など、どのようにしたら多くの人が参加しやすくなるかなどを話し合いました。
2015年度から栃木県北部の組合員もリフレッシュツアーへの参加を呼びかける対象とし、今年は8世帯の組合員家族がツアーに参加しました。これは2014年度の交流会で、「放射能は福島県内だけではなく県境を越えて栃木県北部も汚染したので、当該地域の組合員もツアーに参加できるようにしたほうがよい」との意見を反映させた結果です。今回の交流会では、生活クラブ栃木の専務理事・高澤文哉さんは「放射能を心配する組合員がいることをあらためて強く感じました」と発表しました。
意見交換をもとに来年度以降のツアーのさらなる充実を
また愛知や京都でツアーを企画した組合員は「お子さんやご家族の保養ととともに、組合員同士で福島の現状や原発問題について話し合う交流会を大切にしています」と発表。北海道からは「リフレッシュツアー開催の意義を組合員全体に広げるために、資金づくりのバザー開催を呼びかけました」との報告がありました。
一方、ツアーに参加した組合員は「福島では放射能問題について話しにくい雰囲気があるが、ツアーでは語り合うことができてすっきりしました」、「海水浴や土遊びなど福島ではできない経験を子どもにさせられたのがうれしい」、「ツアー中は外食になりがちだが、生活クラブの食材をつかった料理が出て安心して食べることができました」などの感想が述べられました。そして、生活クラブ生協ふくしまの大津山ひろみ理事長は「福島では大人の甲状腺検査はまだ実現できていないので、ツアーでは今後も大人の検査を継続していただきたい」と要望しました。
これらの意見を受け木村庸子連合理事は「夏休みでも一部の週に企画が集中することがあることをふくめ、出された意見について検討し、来年に向けてツアーをさらに充実させていきたい」と語りました。
時間がかかる復興に対し、息の長い被災地支援を継続
各地の生活クラブでツアーを企画したメンバーは、この機会に福島の現状を知ろうと翌10日は視察を行ないました。
最初に訪れたのは郡山医療生活協同組合の桑野協立病院です。この病院は生活クラブの要請に応えて、2014年から組合員の子どもの甲状腺検査を実施しています。事務次長の鹿又達治さんは福島の現状について「原発事故から5年が経とうするなかで、むかしのように山菜などを採って食べようとする人が現れ始めています。しかし内部被ばくの恐れがあるので注意喚起をしていかなければいけない時期です」と語りました。
甲状腺検査や放射線相談外来を担当する種市靖行医師は「福島県が実施している甲状腺の2次検査では113名のがん、またはがんの疑いがある患者が発見されています。しかし当時16歳~18歳の受診率が悪いので、未受診の約3万人に対しすみやかに検査を行なう必要があります」と指摘しました。
さらに、原発事故で福島県川内村から避難した人が暮らす郡山市の仮設住宅を訪問。避難者を支援するNPO法人昭和横丁の志田篤代表は「原発や津波によって避難している人は福島県だけで約12万人います。とくに仮設住宅は2017年3月で廃止といわれていますが、人々の暮らしをどう再建するかが一番の課題です」と語りました。生活クラブは公益財団法人の共生地域創造財団を通じて昭和横丁を支援していますが、仮設住宅には高齢者が多く、暮らしの再建が難しい現実を知ることができました。
放射能の問題を抱えながらの復興には、時間がかかることがあらためてわかりました。生活クラブはリフレッシュツアーをはじめとした被災地支援を今後も続けていきます。
(2015年11月5日掲載)