老後や子育ての不安にこたえる地域福祉事業をめざして 生活クラブ生協組合員の意識調査を行ないました
2015年の夏、生活クラブ連合会と生活クラブ共済連、生活クラブグループの社会福祉法人が協力し、各地の生活クラブ組合員を対象に地域福祉のあり方についての意識調査(アンケート)を実施しました。生活クラブが地域福祉事業の取り組みを広げていく参考となるよう、組合員自身がどのように考えているのかを知るための調査です。このほど調査結果がまとまり、生活クラブがめざす福祉事業の課題を明らかにすることができました。
(2016年1月21日掲載)
意識調査(アンケート)実施の目的と概要
今年は東京・世田谷で生活クラブが誕生して51年目を迎えます。組合員の世代構成も幅広くなり、それぞれの世代に応じた生活課題やニーズも多様化しています。また、介護保険や子育て関連などの福祉関連法、さらに雇用関係や生活困窮者自立支援、医療分野など、暮らしに密接に関わる法制度の面でも大きな改定が行なわれてきました。それぞれの制度の対象や内容は異なっていても、方向性としては、基礎自治体の責任で民間や市民の参加で支えていく姿に向かっています。
その背景となるのが「人口減少・少子高齢社会」です。国の推計では、現在の人口から、2030年には1,026万人が減少、2060年には4,014万人が減少すると予測されています。首都圏一極集中は今後も続くものの、2020年代には全国で人口が減少し、特に出生率が低い大都市圏の高齢化率が大きく高まることが特徴です。こうした予測からも、自分の将来を個々人だけで守ろうとしても不安は拭い切れないほど、社会の様子が大きく変化しつつあることは明らかです。
こうした中、生活クラブ連合会は生活クラブ共済連とともに、すべての生活クラブ生協がぞれぞれの地域での福祉政策を作ることをめざす中期計画を2015年に策定しました。この中期計画では、自分たちの地域で福祉のためのどんな資源や計画があり、どういう人がいて、何をしようとしているのかを調べ、そのうえで不足するもの、必要なものを描いていこうという方向性を組み立てました。
そのためにも、まずはみんなが何に不安を抱き、どんな未来を想像しているのか、生活クラブ組合員の意識を知ることからはじめることとし、今回の意識調査(アンケート)を実施しました。この結果を、それぞれの地域で本当に必要な福祉事業を具体化・実行していく基礎データにしたいと考えています。
アンケートは、以下4つの分野の設問に答える形式で行ないました。
1. 老後に関すること
2. 子育てに関すること
3. 障がいに関すること
4. その他(成人した子どもに関することなど)
それぞれについて、「現在自身が困っていること」「将来困るであろうこと」「生活クラブにその分野の事業を取り組んで欲しいかどうか」「事業に参加・協力したいか」を答えていただく内容です。
●調査実施時期:2015年7~8月
●調査対象:生活クラブ生協の組合員36,400人、回答数は10,750人、回答率は29.5%
●年代別回答率:20~49歳(22.2%)50~69歳(34.1%)70歳以上(35.6%)
回答者の家族構成
組合員と配偶者と子どもの世帯が46.3%と最も高く、次いで組合員と配偶者の二人暮らし世帯が28.4%となりました。配偶者との二人暮らし、一人暮らしを生活クラブ全体で捉えると、それぞれ約98,200世帯(二人暮らし)、21,000世帯(一人暮らし)と推計できます。
回答者の4.4%が本人と子どものみ世帯であり、そのうち31.6%が18歳以下の子どもと暮らしています。生活クラブ全体で捉えると、約15,000世帯が本人と子どものみ世帯で、そのうち約4,800世帯が18歳以下の子どもがいる世帯と推計できます。
回答者の9.1%がなんらかの障がいを持つ家族と暮らしています。生活クラブ全体で捉えると、約31,500世帯と推計できます。
介護を要する親族の有無では、「あり」30.3%、「なし」69.7%となり、組合員の約3割、全体では約10万3,800世帯は介護に直面していると推計できます。
世帯構成と年齢構成の関係では一人暮らしの66.7%が65歳以上で、47.3%が70歳以上となっています(グラフ①参照)。
【グラフ①】
回答から読み取れる組合員の不安
●老後の不安
高齢期にある組合員は、健康維持、地域の居場所・生きがい、生活資金などの不安が多く、子育て期組合員の将来の不安では、認知症予防などの健康維持、入居したい住まい・施設、自宅で暮らし続けるための介護サービス・食事サービスなどが多いことがわかりました。
●共通した生活課題
食事・買い物・家事・移動手段が39歳以下と70歳以上の双方でその世代の「今、困っていること」の最上位となっており、乳幼児育児期と高齢者の生活問題では共通項があることが見えてきます。
●若年層の悩み
乳幼児の一時預かり場所、病児・病後児保育、変則的な仕事の時の保育、放課後や夏休みなどの日常的な子どもの居場所確保に対して現在困っている状況がみえます。
●成人した子どもについて
50代では、現在困っている問題として、成人した子どものメンタルヘルス、成人した子どもの就労支援、働く場所の確保の問題が多くあることがわかりました。
●生活クラブで取り組んで欲しい事業
高齢者支援では食事の確保、買い物、移動サポート、介護サービスなどの在宅支援サービス、生活資金、老後の生活に関する情報や相談、子どもの居場所、障がい者就労支援など多岐に渡ります。
これからの生活クラブに期待される課題
生活クラブが取り組む事業・活動への参加・協力については全項目について反応があり、今後事業を展開していく上では心強い回答が得られました。
今回のアンケート結果から見えてきた組合員が抱える不安や困っていることに対して、生活クラブ連合会・生活クラブ共済連、そして生活クラブグループの社会福祉法人は、各地の生活クラブ生協と連携して地域福祉政策を策定し、主体的に組合員や地域の資源と連携・協力して解決をはかっていくことが課題と考えます。
4つの分野別 設問ごとの回答率一覧表
『生活クラブ たすけあいカタログ』2016年2月号(生活クラブ共済連発行)掲載記事に加筆、転載しました。
生活クラブ共済事業連合生活協同組合連合会
http://seikatsuclub-kyosai.coop/