生活クラブと台湾、韓国の生協が福祉をテーマにアジア姉妹会議を開催
生活クラブ生協連合会と台湾の主婦連盟生協、韓国の幸福中心生協連合会(旧 女性民友会生協)は1999年に姉妹提携を結んで以来、お互いの活動を学び合う交流を続けています。
今年は生活クラブ連合会が主催となり、福祉をテーマにしたアジア姉妹会議を9月1日に横浜で開催しました。会議には来日した台湾、韓国の生協役員のほか、生活クラブ連合会理事や組合員など約90人が参加し、人の生命や尊厳にかかわる福祉は、非営利で地域に密着した生協が担うべき活動であることをあらためて確認しました。
組合員のたすけあいから始まった生活クラブの福祉の事業高は150億円に
アジア姉妹会議の開催にあたり生活クラブ連合会の伊藤由理子理事は、「今回のテーマは福祉ですが、3カ国とも少子高齢化、経済のグローバル化による格差の拡大といった問題を抱えています。生協として福祉でどんな活動ができるか、議論を深めていきたい」と挨拶しました。
生活クラブ連合会理事で東京の理事長でもある土谷雅美さんは、30年前につくったエッコロ制度という組合員どうしのたすけあいの仕組みから、生活クラブの福祉活動が始まった経緯を次のように紹介しました。
「エッコロ制度は託児や高齢者の介助などで使われることが多く、ちょっとした手助けで暮らしや気持ちが楽になり、仲間がいることを実感する機会になっています。組合員どうしのたすけあいの気持ちを地域に広げたのが、生活クラブの福祉活動です。高齢者や子育て、障がい者を支援する福祉活動が各地で行なわれ、2015年度の事業高はグループ全体で約150億円になっています」
台湾や韓国の生協も高齢社会をむかえ福祉活動を実施
台湾主婦連盟生協理事の黄淑徳(ファンシューテ)さんは、「世界で最も早く高齢化が進む台湾、ケアの新たな課題」と題した報告を行ないました。
「台湾は2018年に高齢人口が14%に達する『高齢社会』になると予測されています。出生率の低下と合わせ、高齢化は日本より速い速度で今後進んでいきます。また医療では延命治療の影響で、寝たきり状態で過ごす期間が平均7年以上と長いことが問題になっています」と、台湾の課題を紹介しました。
この問題に対し台湾主婦連盟生協は『命の記録』というエンディングノートを出版するとともに、「生き方は健康に、去りかたは自然に」をテーマにしたセミナーを開催しています。台湾には介護をするのは女性、延命措置の可否を決めるのは男性という風潮があるなかで、セミナーは好評を博し100回近く行なわれています。
韓国の幸福中心龍山生協理事長の鄭奉熙(ジョンボンヒ)さんは、「幸福中心生協の福祉事業は始まったばかりですが、『協同福祉基金』を活用することを中心に進めています」と報告しました。
協同福祉基金は「協同することイコール福祉」という考え方で2010年に設立され、2015年までに8700万ウォン※の募金があり、合計5000万ウォンを24団体に配分しています。
「配分先は生協組合員の集いもあれば、関係ない団体もあります。いずれも協同して生活を豊かにすることに価値をおいているところばかりです」と鄭さんは語りました。
※10ウォン=約1円
国は違えども同じ問題意識をもつ姉妹の存在が励みに
3つの生協の活動報告後は、質疑応答が活発に行なわれました。「生協は食品などを購買するだけと思われがちで、福祉活動に組合員の理解を得るむずかしさはないか」といった質問や、「活動する場所なくて困っているが、どうしているか」などの相談があり、それぞれの状況を話し合いました。
1999年に3生協で姉妹提携を結んで以来、17年間交流を続けています。この間にそれぞれの生協で名称変更や組織の再編などがあったため、今回あらためて姉妹提携誓約書の調印式を行ないました。誓約書を3カ国語で読み上げ、各生協から参加したメンバーで確認した後に調印を交わしました。
3生協は東アジアで活動し、組合員の大多数が女性ということも共通しています。国は違えども、市民が協同することで社会の問題を解決しようとしています。生協運動をすすめるなかで、時として困難にぶつかるかもしれません。しかし、同じように活動する「姉妹」の存在が励みになっていくことでしょう。
最後に歌と踊りで各国の文化を披露し、交流会を終えました。
交流会
生活クラブは「そんな町を」を合唱。
台湾主婦連盟生協はお面をつけて、収穫風景をよんだ歌と踊りを披露。
韓国の幸福中心生協が両手に生活クラブと台湾主婦連盟生協のマークをしるし、友好を表現しました。
【2016年9月21日掲載】