「電力の組合員アンケート分析報告&共同購入キックオフ集会」を開催しました
生活クラブは、今年の4月から始まる電力の小売自由化を踏まえ、10月から電気の共同購入を全体実施します。この準備のため、昨年の6月~7月に組合員を対象とした「電力の小売り自由化と、電気の共同購入に向けたアンケート」を実施しました。
2016年4月16日、全国の単協から100名以上の組合員リーダーが集まり、昨年実施したアンケート分析から見えた組合員意識を共有すると共に、“生活クラブが電気を共同購入することの社会的な価値”を考えました。
そして、先行する首都圏単協が取組み報告を行い、これから取り組む単協がアピールし、「生活クラブの総合エネルギー政策」の具現化に向けた第一歩としてキックオフ集会を開催しました。
集会は、『電力の小売り自由化は、世間的には価格(お得)競争になっているが、エネルギーの中身を選択する自由化であるべき。今日は生活クラブ全単協でエネルギーの市民自治に向けた意志一致を図る場にしたい』との村上彰一総合エネルギー政策実行チーム座長(東京専務理事)の開会挨拶に始まりました。
先行して実施する単協の概況と申込受付状況
次に、生活クラブ連合会エネルギー政策担当理事である半澤彰浩(神奈川専務理事)より、6月からの首都圏4単協で先行する取組みの概要報告がありました。冒頭、取組み報告の前に、なぜどのような目的で生活クラブが電気の共同購入を始めるのかについて簡単な報告がありました。
まず、日本の自然エネルギー発電量(導入)の割合が欧州での導入比率に比べて極めて低いこと(約6%。欧州各国では20%以上)、電気の共同購入は消費材の共同購入と同じ考え方であること(トレーサビリティの確かな材の利用結集、社会的課題の解決)、そこでの活動の主役は組合員であること。電気の共同購入への参加を広げることと同時に自然エネルギーの電気を増やしていくことが今後の課題、などです。
続いて、先行実施で分かったこととして、申込みした世代の分布では組合員の年代別構成とほぼ同じ比率で50代、60代、70代の割合が高いこと、申込み者の契約アンペアでは30、40、50アンペアで80%を占めること、基金への参加が約半数あったこと(「驚嘆すべき、革命的な比率」という表現で驚きと喜びを表明)、申込者が実際に契約書を提出する段になって約15%程度キャンセルになったこと、などが報告されました。
アンケート分析結果を共有し、電気を共同購入することの社会的価値を考える
アンケートの共同実施者である名古屋大学大学院環境学研究科の丸山康司准教授からは、組合員の電力切替えへの意欲が社会の平均からみて高いこと、その要因は反原発や社会変革の手段としている点、また生活クラブへの信頼(生活クラブがやるなら参加してみよう)と言う点が大きいこと、自由回答記入者の割合が今まで実施したどのアンケートよりも高かったことなどを上げて、『生活クラブはとんがっている!』という表現でまとめられました。
もう一人のアンケートの共同実施者である法政大学人間環境学部の西城戸誠教授は社会運動への参加という観点で分析され、震災被災地の支援・ボランティア参加という点では組合員リーダー層と一般の組合員とでは差がないが、その他の活動(反原発デモ、地域での太陽光発電事業への参加、市民風力への出資など)ではリーダー層の参加が高いこと、また、そのリーダー層にも2つのパターンがあり、政治的な活動に参加する人(とんがった人)と身近な活動に参加するタイプ(穏健な運動家。少しとんがった人)に分かれていて、反原発に参加した人が必ずしも新電力へ切り替えてはいないという特徴がある、と報告されました。
丸山先生、西城戸先生、半澤さんによる鼎談が行われました
【1】最初のテーマ「電気の共同購入をすることの意味、価値について」
丸山先生から、「自由化とは電力の由来を知って市民が選ぶことができるようになること。しかし、選ぶことで責任も発生する―これまでは東電のせいにできたが、これからは市場を通じて市民が選択することになる(=選ぶ側の責任が発生する)。生活クラブは選択肢を提示した。可能性とチャレンジを感じている」。
西城戸先生から、「電気の購入をするには想像力が必要。電気は手に取って分かるものではない。生活クラブは風車建設を縁として、秋田県にかほ市との連携(その地域の人との交流)を行うことで新しい価値をつくってきた。これこそ生活クラブらしさといえる。このように電気(コンセント)の裏にあるエピソードや価値を想像できるかどうかが重要なこと」。
半澤さんから、「サービスや価格だけでなく発電源に価値を置きたい。透明性や公正性をつくること、それを組合員が共同購入によって作っていくことで社会的価値となる。また、自分たちが自然エネルギーを選択して共同購入することで社会に対して異議申し立てや意見を言える(原発は止めろ!等)」。
【2】2つ目のテーマ「若い世代への訴求力について」
丸山先生から、「電力やエネルギーというテーマは若い世代に訴求力はあるが、<怒りや悲しみが行動の始まり>であったとしても、広がりや継続性をつくるには<喜びと楽しみ>が重要なポイントになる」、「大学は電力の大消費者で、そこにアピールしたい。食堂メニューの質を上げたいので、生活クラブの消費材を使えないかを考えている。学生にはリアリティーが必要で、そこに期待もしたい」と。
西城戸先生から、「組合員が生活クラブに加入した理由の第一は、子どものためではないか(安全な食べ物を食べさせたい)。同じ理由でエネルギーの選択肢があるのでは」と。
【3】3つ目のテーマ「これから実現したいこと(もしくは期待したいこと)」
半澤さんから、若い世代が自然エネルギーに関わることが『カッコイイネ、オシャレダネ』と思えるようにすることがポイント。若い女性が活躍しているところは、どこも活性化している」。
丸山先生から、「ドイツは、電力自由化で切り替えた人は10%だった。その中の90%が自然エネルギーを選択した。これから発電と消費の共同購入をやろうとしている。まさに生活クラブがこれからやとうとしていること(先進的な取組みということ)」。
西城戸先生から、組合員を拡大する時のきっかけの一つに、電気の共同購入ができることを入れて欲しい。またエネルギーをきっかけに、家庭内での話し合い(家庭内拡大)もして欲しい」。
会場から活発な質問より
Q1電力市場で勝ち残ることとはどういうことか?
A)2020年時点で会社が存続していること。
Q2)組合員宅の太陽光発電の買い取りのメド?
A)いつでも買い取ることはできるが、契約手続きが研究課題。この1年内で検討したい。
Q3)契約キャンセルの理由は?
A)①他社との価格やサービスの差、②比較のための資料が欲しくて申込んだ、③単純に契約書記入がメンドーになったことが主な理由。
先行取組みした首都圏単協からの報告ポイント
東京では、各ブロックでそれぞれ目標を決め、学習会を丁寧に行いました(合計18回)。そのことで、500名の目標に対し1,456名の申込みがありました。風車「夢風」建設までの活動が活きていると感じました。また、にかほ市との連携した活動として、夢風ブランド企画品「タラーメン」を開発できました。この6月に首都圏で共同購入します。
神奈川では、2015年に神奈川太陽光発電設置に向けて、組合員から特別増資参加を呼びかけた活動が今回の電気の共同購入先行取組み活動の力となりました。学習会では一方的に聞くのではなく、情報交換や意見共有を行い、共感者を増やしました。結果として、組合員の1.5%(140人)から申込みがありました。全体取組みに向けて、さらに生活クラブが取組むエネルギー政策への理解者を増やしたいです。
埼玉では、電力自由化に向けて組合員の理解を深めるための連続講座を開催しました。丸山先生を招いた講座では「市民が電力を選ぶ社会の到来」というテーマで企画し、幅広い層の組合員の参加がありました。第2弾は「ファイヤーワールド」の石川氏を招き、木質バイオマスエネルギーについて学習。第3弾は「フクシマを考える」として会津放射能センター/放射能から子どもの命を守る会・会津代表の片岡輝美さんを招き、原発事故発生からこれまでの福島の状況について学習しました。この他にも、サステイナブル政策委員が6つのブロックに分担して、電力自由化と生活クラブエナジーの取組みの説明を行いました。これらを通じて、目標250名に対して738名の申込みにつながりました。夢風ブランド企画としては、「いちじく」の開発をすすめています。
千葉では、12月~1月にかけて、リーダー層や職員向けに14回の学習会を開催し、1月~2月は地域組合員向け学習会を90回開催しました。参加者からの質問をまとめ、回答をリーダー層と共有したことで次の学習会に活かせました。さらに単協主催の学習会を2月に開催するなど学習会を丁寧にすすめた結果、250人の目標に対し352人の申込みがありました。原発や放射能を気にしている人を、「電気の共同購入」参加者につなげていくことが今後の課題だと思います。夢風ブランド企画としては「鱈しょっつる」の開発をすすめ、この7月に首都圏で取組む計画です。
全体取組みに向け単協からのアピール概要
北海道では、3月の支部大会で電力自由化と生活クラブの電気をアピールしました。地域の特性を活かして、厚田市民風力発電所への見学ツアーや地域交流なども実施しました。1986年のチェルノブイリ原発事故後の泊原発稼働反対運動の時に、対案として日本で第1号の市民風車「はまかぜちゃん」を誕生させた経緯があります。その時、将来の夢として語った電気の共同購入が現実になったことに喜びを感じます。ぜひとも、「生活クラブの電気」を大きく育てていきたいです。
長野では、脱原発への対案として電気の共同購入に多くの組合員の賛同を得ています。組合員の6.2%-890名の参加を目標にして、3年後には組合員の15%の参加をめざします。長野は森林面積が75%ですが、林業がすたれ森が荒れています。このため、国産の間伐材を使った「木使い」運動を2年前から展開しています。
―アピールの最後に、「大ぜいの力で山を動かす」という決意を込め、諏訪大社の御柱祭山出し時の号令「木やり」歌を岡澤理事が熱唱し、会場全体で掛け声を合わせました。―
大阪では、火力100%でスタートのところ、岩国バイオマス発電所と契約ができ、自然エネルギー30~60%でスタートできることになりました。説明用のフリップを作成し、地区総会に理事長、常任理事、理事、職員が参加し説明を行っています。3週連続でニュースを発行し、Q&Aやアンケート等を活用し、共同購入への参加呼びかけを行いました。4~6月は64ヶ所の地区や人が集まりやすいところで、ミニ学習会を開催する予定です。「エネルギーを選ぶのは生き方を選ぶこと」の意味を組合員に伝え、脱原発社会をめざしたいです。
最後に、『私たちは社会的な価値をつくり、選ぶための<道具>を手にしました。電気の共同購入に参加する人をみんなで増やしていきましょう』と、司会を担当したエネルギー政策アンケート調査実行チームでグリーンファンド秋田事務局長の鈴木伸予さんが閉会のあいさつをまとめました。
【2016年5月13日掲載】