モントリオールで「グローバル社会的経済協議会」開催 市民の連帯による地域社会の課題解決をめざして
9月7日~9日、カナダ・モントリオール市で「グローバル社会的経済協議会(Gsef)」が開催され、生活クラブ連合会とグループ団体から計6名が参加しました。62か国の330都市から約1,500人が集まり、3日間にわたって活発な議論と交流が行われました。
Gsefは、世界的な経済危機を人と人との信頼と協力で解決しようと、韓国・ソウル市長の朴元淳(パク・ウォンスン)さんの呼びかけで始まった国際組織です。世界各地の協同組合や非営利団体、研究機関や地方自治体などで構成されます。2014年にソウルで初めて開催され、今回のモントリオールは2回目の開催です。
*グローバル社会的経済協議会=Global Social Economy Forum (Gsef)
【2016年10月24日掲載】
「社会的経済」とは?
いま、日本では若い世代や子どもの貧困、あるいは高齢化社会にむけた福祉や医療などが大きな問題となっています。グローバルな経済競争の荒波の中、格差の拡大による貧困や雇用・居住・福祉・教育・食料や生活環境の問題など、さまざまな社会的課題への早急な対処が求められているのは、日本だけではなく世界的な傾向です。
こうした社会的課題は、かつては政治家や中央政府(国)の力、あるいは市場経済の調整機能による解決が期待されていましたが、それだけでは解決できないという認識が広く持たれるようになってきました。
そこで、国や市場経済に頼るのではなく、市民がそれぞれの力を寄せ合い、人と人との協力・連帯による解決をめざす「社会的経済(Social Economy)」または「社会的連帯経済(Social and Solidarity Economy)」という考え方に注目が集まっています。これに共感する人びとが世界中から集まり、経験や知識・情報を共有しあうのが「グローバル社会的経済協議会(Gsef)」です。
市民の協力と連帯を 世界各地の事例を共有
9月7日の開会式では、モントリオール市長のドニ・コデールさんが「社会的連帯経済の促進には、大陸や国レベルではなく、地域を中心とした活動が重要です」「モントリオールが抱える社会的課題を解決するためにも、社会と経済を再生するための全世界的な連帯が必要なのです」と語りました。
7日と8日に開催されたワークショップでは、カナダ、フランスやイタリア、アフリカ諸国など、世界各地の活動事例が数多く報告されました。
経済的格差・貧困の問題に対処するために、非営利団体・研究機関・地方自治体などが集まった市民どうしの協力と連帯によって、住宅・雇用・教育文化など、さまざまな分野にわたる事業が世界の各都市で形成されています。
このような市民活動に取り組むグループは、地方自治を担う主体の一つとして自律的に活動していて、州政府などの地方自治体も積極的に関わる様子が報告されました。それぞれの生き生きとした姿が伝えられ、たいへん印象的でした。
参加した生活クラブ山梨の理事長、上野しのぶさんは、感想を次のように語ります。
「初めて国際会議に参加しましたが、日本で起こっている格差や貧困の問題は世界でも同じ状況で、共通した課題だと痛感しました。日本のワーカーズ・コレクティブの取り組みは「社会的連帯経済」そのものだと思います。こうした活動を持続し発展させるための中間支援組織の必要性も世界共通の課題だと分かりました。ワーカーズ・コレクティブやNPOなどの市民活動が互いに連携することで発展し、地方自治体や国の政策に影響を与えるようになれば、今の状況を変えていくことはできるはずです」
「協同組合の村」セントカミーユを訪問
翌日の9月10日には、今大会の視察ツアーとして、モントリオール市から200キロほど離れた人口525人の小さな村、「協同組合の村」として知られるセントカミーユを訪問しました。
村の人口は、およそ4分の1が65歳以上ですが、小学生も80人を占めています(15.2%)。2000年に起きた小学校廃校問題をきっかけに、住民が協力してカフェや住宅、高齢者サービスのための協同組合をつくり、若い世代に村の魅力をアピールすることで定住者を増やしてきました。現在では世界中からおおぜいの人が訪れる村になったということです。
村の課題を解決するため、住民自身が始めた協同組合の事業が継続・発展してきた理由は、「自治と連帯」「オープンな運営」という理念のためだと、村長が自信を持って語ってくれました。
村のあるケベック州の法律では、5人から協同組合が設立できます。人の力を活かした協同組合が地域のコミュニティに根付き、社会的課題の解決に役立つモデルケースといわれる村の実情を知ることができて、これからの私たちの取り組みにもたいへん参考になりました。
それに加えて重大な政治的問題が存在する。例えば、都市の拡大をコントロールして、市民にふさわしい生活の質を保障すること(住宅、上下水、公衆衛生、交通、治安など、必要最低限のサービスを提供すること)。さらに、個人あるいは協同の力で課題を解決可能にする社会環境を提供することである。
人類が直面しているこれらの問題は、もはや一国だけでは解決できない。自治体、町、行政などの貢献が不可欠である。なぜなら地方政府や自治体はその地域の住民に最も近い存在であるがゆえに、民主主義を活性化し、市民としての権利を保障する立場にあるからだ。
【参考】
日本でのGsefの活動を推進する「ソウル宣言の会」
http://www.seoulsengen.jp/
Gsef 2016 (仏・英・西語)
http://www.gsef2016.org/