今夏も飯綱町のトマト畑に組合員が集まりました! 国産加工用トマトの生産を支える組合員の「労働参画」
原材料に国産トマトを使った生活クラブの「信州トマトジュース」。国産加工用トマトの生産が減る中、生活クラブは国産トマトの生産を支えるために組合員がトマトの定植や収穫作業を引き受ける「計画的労働参画」の取り組みを1995年から行なっています。加工用トマトの主産地のひとつ、長野県飯綱町で、春の定植と夏の収穫期に実施します。「援農」とは異なり、参加者はきちんと対価を受け取り、「生産者」としての役割を直接担うことが大きな特徴です。今夏の収穫作業も8月中旬~下旬に、のべ120名近くの組合員が参加しました。
参加者の手で次々とかごが真っ赤なトマトでいっぱいになっていきます
トマト収穫は、いくつかの生産農家の圃場で、数名~十数名ずつのグループに分かれて作業します。参加者を乗せたマイクロバスが宿泊先から出発し、点在する各生産農家の圃場を回って担当するグループを降ろし、作業が始まります。
生食用トマトの栽培とは違い、加工用トマトは支柱を立てず畑に這わせて栽培します。畑の表面はわらで覆われ、トマトを強い直射日光から守っています。参加者は畝を少しずつ移動しながら、そばに置いたかごにトマトを摘んでは入れていきます。陽射しの照りつける中、しゃがんだり座ったりしての作業はかなりの重労働ですが、かごが次々と真っ赤な完熟トマトでいっぱいになっていくさまは壮観でした。作業中は皆黙々と目の前のトマトに集中していますが、一日に何回かのお茶の時間には、参加者と農家のみなさんのにぎやかな談笑の声が畑に響きます。
受け入れ側の生産者にも伺いました
生活クラブ組合員の労働参画を受け入れているトマト生産者の方にお話を伺いました。
池田さん 加工用トマトの生産を始めて4年になります。まだ年数が浅く、品種に合わせた肥料配分や防除の時期の調整など、だんだんと適切なやり方がわかってきたところです。加工用トマトは収穫のときに集中的に人手が必要になるので苦労するんですが、こうして皆さんがまとめて来てくれるのでとても助かっています。皆さん最初だけ説明すれば、戸惑うこともなくすぐに作業に入ってくださいます。こうして収穫されたトマトでできたトマトジュースを、多くの組合員のみなさんに味わってもらえたらいいなと思いますね。
上野さんご夫妻 私たちはこの飯綱で30年近くペンションを経営していますが、5年前から本格的に農業を始めました。加工用トマトの生産は3年目です。現トマト部会長の杉山さんにトマト生産を勧められて、やろうかなと言ったら次の日にはどーんと苗が届いてびっくりしました(笑)。去年から生活クラブのみなさんを受け入れてまして、にぎやかに楽しくやらせてもらってます。参加者の方とはその後もFacebookでつながったり、トマトの収穫に来た人がうちでできたりんごを買ってくれたりなんていう広がりも。労働力としてありがたいのはもちろん、人間関係の広がりの場になっていて嬉しいですね。
杉山部会長 今78歳、うん、まだまだ元気だよ。ずっと米とりんごをやっていて、加工用トマトももう17年ぐらいになるかな。生活クラブのみなさんの受け入れも12、3年にはなるね。今学生の孫も、この時期は忙しいから手伝ってくれてるよ。私としては、農家でもちゃんと稼げるしくみを作れば、孫も喜んで継いでくれるんじゃないかと考えて頑張ってる(笑)。自分の畑のこともだけど、飯綱の地域全体として農業をどう育てていけるかっていうのが大事だね。それぞれの農家がもっと創意工夫していけばいいし、農家自身が農業を消費地と切り離して考えずに、都会の消費者とつながったほうがいいと思う。そういう意味でも、消費者に農業の実際を知ってもらえる機会になるので、大きな意義があるんじゃないかな。
生産者も参加し見知らぬ者同士が交流する懇親会もこの活動のだいご味です
二泊目の夜には、宿泊先であるマウンテン・ヴィラ タキハウスの庭で、生産者を交えた懇親会が行われました。参加者も見知らぬ者同士が多いのですが、乾杯の音頭のあと、たくさんの料理を前にすぐに打ち解けていきます。地元のお酒を互いに酌み交わしたり、生産者と組合員がひざを交えて話したり、にぎやかで楽しい宴が続きました。
参加者の何名かにお話を伺いました。
20代の女性 「生活クラブは親がずっと入っていて、私がトマトの収穫に参加するのはもう4回目です。農作業が好きだしトマトの匂いも好きなので(笑)苦にはならないですね。農業を生業にしたいと思うこともあるけれど、実際にはなかなか難しいですよね。そんな自分に向いていると思うので、継続的に参加したいと思っています」
父娘で参加されたお父さん 「長年教職についていて、退職後は海外へボランティア活動に行くなど新しい刺激を受けるのが好きなほうです。妻と娘が2回ほど参加したこの活動にもずっと興味があり、今回娘と参加しました。体を使う作業は充実感があり楽しかったですね。皆まったく知らない人同士ですが、同じ気持ちをもって集まる仲間なので、すぐに交流が始まるのも楽しいですね。参加してよかったです」
女性の参加者 「組合員になってもう30年以上。参加は2回目です。参加するとやはり、もっと積極的にトマトジュースを飲んでいこう、と意識が変わりますね。消費があることで農家の方の生産が続けられ、国産トマトで作る貴重なトマトジュースができるのだから、この輪を途切らせないようにしないと、と思います」
懇親会の夜が明けて、最終日。午前中にもトマト収穫の作業をし、宿に戻ってから入浴・昼食を済ませ帰途につきます。3日間のあいだに参加者同士もすっかり顔なじみになりました。最後に記念写真をパチリ。皆充実感のあるいい笑顔です。
*次週はトマトジュースを製造する工場の様子をお伝えします。
【2016年9月19日掲載】