デンマークへ福祉政策を中心に視察に行ってきました!
生活クラブ連合会・共済連では「2016年 協同組合の旅」としてデンマークへ視察に行きました。
デンマークでは国民の85%が自分たちは幸せだと感じており、国連による2016年版の世界幸福度報告書では、世界で一番住みやすい国、幸福度ナンバーワンの国と評価されています(日本は53位)。 その理由を現地で探ることと、これからの生活クラブグループが地域共生のしくみ、高齢者支援、子育て支援、子どもの教育を実践していくにあたり、そのヒントや手がかりを得て、日本の協同組合による具体化の可能性を見つけるために、生活クラブ共済連の理事や、ワーカーズ・コレクティブ・生協が生み出した社会福祉法人、生活クラブのシンクタンクである「市民セクター政策機構」のメンバーが視察団を組み、デンマークへ行って来ました(2016年11月24~12月5日)。
組合の国 デンマーク
デンマークは別名「組合の国」とも言われ2人集まれば組合ができます。1人は個人ですが、2人は個人ではありません。産業別組合というものもあり、同じような産業の人々が組合をつくっています。
1880年代の半ばに世界で初めて、農業協同組合ができた国でもあります。人と人の結合を認めあうことが浸透しています。1880年代の中ごろには、デンマークの農業は世界の大国との農業生産物の競争に陥りました。そのときデンマークは麦などの現物を輸出するだけではなく、さらに価値のある農業生産物で対抗しようと考え始め、農民の教育にも力を入れました。つまり、生産物を維持していくのではなく、新しいものに変化させ、デンマークの地位と競争力を高めました。そのために農業協同組合という形式をとりました。
社会福祉国家とは
デンマークは「幸せの国」と呼ばれています。「幸せの国」というのは、国民すべての生活が保障される。つまり「ゆりかごから墓場まで」です。その国に生まれたら、すべての国民が幸せに暮らせること、それが「社会福祉国家」です。
日本は経済大国ですが、デンマークは経済大国ではなく、「生活大国」と言われています。幸せな国は「生活大国」であり「社会福祉国家」ということです。この「社会福祉国家」の国には民が主であるという考え方、主権在民の考えをもった人々が存在します。本当の意味での民主主義が根付いている国です。民主主義とは何か? それは「自由」「平等」「博愛」、そして「共生」と「連帯」です。そのことをデンマークでは子どもの頃から教育されています。
社会福祉国家を形づくるデンマーク式教育
デンマークの子どもは幼いころから「共生」と「連帯」を大切にした教育の充実をはかっています。
貧困者、障がい者、高齢者など社会的弱者の生活をみんなでたすけあっていくということが国民の使命であることを学びます。日本のように学歴という考え方はありません。知的水準をあげるだけの教育ではなく、人間の情緒的な面も大切にする教育です。
デンマークの高齢者福祉
デンマークでは医療費は無料であり、簡単な治療などは家庭医(ホームドクター)が行います。また一人ひとりにケースワーカーもついており、高齢者や障がい者の支援を行ないます。介護も無料です。在宅介護を原則に、高齢者の自立を支援するためにホームヘルパーと訪問看護が24時間体制で対応します。そして、高齢者福祉を行なうための3原則という考え方があります。①自己決定、②継続性、③自己資源の開発です。
- ①自己決定とは、どのような介護を希望するか自分で決定し、自己主張もしていきます。その結果、自分で決め、最終的には自分の言うことに責任をもつという原則です。
- ②継続性とは、それまでの生活をそのまま高齢者になっても続けられるためのサポートです。それの1つが、可能な限り在宅です。継続性の観点からも可能な限り在宅はとても大切なことです。施設に移ったとしても、その施設の中でそれまでの生活を可能な限り続けられるようなサポートというのが継続性です。
- ③自己資源の開発とは、自分でできることは自分でやってもらう。できる能力を介護するものが奪わないということです。
つまり、支援のしくみがあれば在宅で生活ができる人まで施設に集め、受動的な立場に立たせた上で、一斉に過剰かつ画一的なサービスを提供するようなことは、すべきでないという考え方です。
日本では高齢者を「助け支える対象」と見る傾向がありますが、デンマークでは「自立的に生きる主体」と位置付けています。
福祉社会のために生活クラブができること
歴史的社会的背景を含めた日本との違いがあるにせよ、協同組合はこのデンマーク式の取組みを実現できる可能性を持ち得ていると思います。その中でも生活クラブグループは人的・物的資源も豊富で、グループでの福祉事業の規模も大きなものとなっています。しかし、デンマークのような社会福祉国家をめざすには、教育理念や財源の確保など様々な課題はあります。生活クラブグル―プで実現できることを見定め、事例を作り、他の団体とも連携し、示していくということが生活クラブの役割なのだろうと考えました。
【視察先・研修内容】
11月27日(日)
・Nordfyns Hojskole(ノーフェンス・ホイスコーレ)到着
28日(月)
・講義「デンマーク協同組合の歴史」 講師:Mogens Godball(校長)
・Spirevippen Bogense市内 幼稚園╱保育園
・ナチ収容所(ノーマライゼーション発祥の地)
29日(火)
・フリースクール Hojby Friskole,
・廃品リサイクルセンター in Bogense, Susi
30日(水)
・訪問介護、看護ステーション Sundhedshus I Bogense
・高齢者デイセンター in Brenderup
・コレクティブハウス Drejerbanken, Henning
・風力発電の組合訪問 Mogens
12月1日(木)
・高齢者ローカルセンター in Bogense
・バイオガスセンター in Bogense
・講義「社会福祉国家デンマーク」 講師:千葉忠夫氏
2日(金)
・デンマーク生活協同組合連合会
3日(土)
・エコビレッジ視察 Svanholm
【2017年1月10日掲載】