いまだに残るがれき、高い放射線量―廃炉作業中の福島第一原発を見学してきました
東京電力福島第一原子力発電所の事故から6年が経ちます。生活クラブでは、事故を風化させまいという決意とともに、原発のない社会をめざした息の長い活動を続けています。去る2月16日、日本生協連の主催で現在廃炉作業中の福島第一原発を見学する機会を得ました。その様子を報告します。(報告:槌田博/生活クラブ連合会 品質管理部部長)
人の姿のない「帰還困難区域」を通って福島第一原発へ
今回の廃炉見学には、生活クラブ連合会、生活クラブ埼玉からのメンバーを含めた10名ほどが参加。まず、いわき駅からバスで、視察・見学の受け入れ拠点として使われている東京電力・旧エネルギー館に到着。説明を聞いた後、東京電力のバスに乗り換えて原発構内に向かいました。ここから先は写真撮影禁止。核物質防護の観点から、構内にある監視カメラを写真に写してはいけないなどのルールがあるからだそうです。
バスは、福島県の沿岸部を南北に貫く国道6号線を北上して原発に向かいます。この国道6号線は、放射線量が非常に高いレベルにある「帰還困難区域」も通過する道路。高いところだと放射線量が6μSv(マイクロシーベルト)/hほどある中を通り抜けていきました。フェンスで覆われ人の帰ることのない家々や、廃墟になったショッピングセンターなどを、バスの中から見ながら原発構内に入ります。
▲フェンスで覆われた家々 |
▲廃墟となった店舗 |
困難な核燃料取り出し作業の途上にある1~3号機
構内には放射線量の値が高い場所も
見学は、構内をバスに乗車したまま巡ります。まず、原子炉建屋の山側にある高台から、建屋を見下ろす形で見学。このときの車内の空間線量率は36μSv/hありました。1986年に爆発事故を起こしたチェルノブイリ原発4号炉を2012年に見学したときの空間線量率の最高値は16μSv/hでしたから、それよりも2倍以上の値です。
1号機は、使用済み燃料プールに392体の核燃料があり、格納容器の底には溶け落ちた核燃料(燃料デブリ)があります。現在は、これらを取り出すための調査をしたり、クレーンを作る工事を計画するなど、やっと取り出し作業の端緒についたところ。使用済み燃料プールの上部をまだがれきが覆っているのが見えました。
2号機は、爆発事故は免れたものの、原子炉内部の核燃料は溶け落ち、もっとも多量の放射能を環境に放出した原子炉です。燃料プールには615体の核燃料が取り残されています。建屋内の空間放射線量は、1分足らずで致死量に達するほどの650Sv(シーベルト※)/hという値。あとで高台から降りてこの2号機のすぐ裏までバスで近づいたとき、バスの車内であっても120μSv(マイクロシーベルト)/hという、今回の見学でもっとも高い数値でした。(※ 1シーベルト=百万マイクロシーベルト)
▲がれきが覆った状態の1号機建屋 |
▲ロボット投入作業中の2号機建屋 |
3号機は、建屋5階より上のがれきの片づけは終了していますが、建屋の横には爆発の被害が残る建造物もまだありました。燃料プールには、566体の核燃料が取り残されています。
4号機は、建屋の裏側まで降りて見学。現在、使用済み燃料プールにあった1535体すべての核燃料の搬出を完了しています。
▲原子炉3号機建屋 |
▲建屋上部を覆う燃料取り出しカバー |
爆発や炉心溶融はしなかったものの廃炉となる5、6号機
構内では膨大な放射性のごみが増え続けている
5、6号機は構内の少し離れた場所にあるためさらにバスで移動して見学しました。地震のときに倒れた鉄塔(このために5、6号機の外部電源が喪失)も残っているのが見えました。5号機と6号機も、廃炉にすることが決まりましたが、核燃料が融解した1~3号機の核燃料デブリを取り出す方法の検討の場所として活用することになっています。
原子炉建屋1~6号機の他に、地下水バイパスの揚水井戸や、陸側凍土遮水壁、サブドレイン(建屋近傍の井戸)なども見学し、職員の説明を受けました。
構内には、放射性廃棄物を一時的に保管するための広大な施設もあります。使い捨ての放射線防護服や、汚染水処理に使ったフィルターが、放射性廃棄物のコンクリートブロックとなって積まれていました。また地下水は放射能除去の処理をしても、トリチウムという放射性物質は残ってしまうので、汚染水として毎日300トンずつタンクに保管せざるをえない状況です。とてつもなく大きなタンクが並ぶ様は異様な印象でした。
▲積まれた放射性廃棄物のコンクリートブロック |
▲汚染水保管用のタンク |
莫大な負担と無為な作業を次世代に押し付ける
原発の現状を目の当たりにした見学
これからいつまでかかるともわからない廃炉作業の困難さを、目の当たりにした原発見学でした。作業には莫大な負担が伴い、凍土壁や汚染水浄化のために膨大な電力が費やされ続けます。溶け落ちた核燃料の詳しい状況もまだわからず、構内にはまだまだ放射線量が高い場所があります。今回の事故を人類への警告として受け取らずに、原子力発電を使い続けるなどという選択はあってはならないと、この見学を通じてあらためて感じました。
【2017年3月27日掲載】